『本屋さんのダイアナ』読了メモ
『本屋さんのダイアナ』 柚木 麻子
〇作品の大まかな特徴
ダイアナと彩子の三人称主観視点を交互に繰り返し物語が進む。
入れ子構造のダブルプロット。作品内に登場する小説『秘密の森のダイアナ』の登場人物の行動が現実のダイアナと彩子の行動に影響していく。(話中話に現実が呼応していく形)
メインストーリーはダイアナと彩子の友情と成長物語。サブストーリーはダイアナの父親探しとダイアナと彩子それぞれの恋愛と家族との喧嘩と仲直り。
主人公のダイアナと彩子が文学少女という設定から実際の作家と作品が随所に出てくるメタフィクション。以下例。
・モンゴメリ『赤毛のアン』
二人が仲良くなったきっかけの本でもあり、疎遠になった二人が再び友情を取り戻すきっかけになる本でもある。作品の始まりと終わりという重要な役割を担っている。父親がダイアナに読ませた以下の翻訳者村岡花子の解説がこの作品の主軸になっている。
〈この本の中では、アンにも親友のダイアナにも、いろいろな変化がおこります。 アンが大学へ入学するのに対して、ダイアナは静かに家庭にいて、娘としての教養 を身につけます。親しい友が村をはなれて、新しい大学生活にはいっていっても、 ダイアナは、それをさけられない現実として受けいれ、彼女は自分自身の道を進ん でいきます。 それでいながら、アンとの友情は、けっして変わることがありません。これが、ほんとうの友情というものではないでしょうか。女の人のあいだでは、相手が自分と同じ境遇にいるときは仲よくできても、相手が自分より高く飛躍を すると、友情がこわれるというばあいがないではありません。わたしにはアンの 中にも、ダイアナの中にも、学ぶべき点がたくさんあるように思えます〉
〈人生には、待つということがよくあるものです。 自分の希望どおりにまっしぐらに進める人はもちろんしあわせだと思いますが、たとえ希望どおりに進めなく ても、自分に与えられた環境の中でせいいっぱい努力すれば、道はおのずから 開かれるものです。こういう人たちは、順調なコースにのった人たちよりも、人間としての厚みも幅も増すように、わたしには思えるのです〉
第一作『赤毛のアン』他、シリーズ全作にウィリアム・シェイクスピアやイギリス、アメリカの詩、『聖書』の句が多数引用されていることを考えると、『本屋さんのダイアナ』は『赤毛のアン』の語り直しになっている。アンが彩子でダイアナがダイアナ。現代日本版『赤毛のアン』が作者の狙いだろう。ただし、この本の主人公は恵まれたアンではなく、不遇なダイアナである。
・森茉莉『私の美の世界』
森茉莉は森鴎外に溺愛された愛娘。「父親の森鴎外を「パッパ」と呼んで、生涯の恋人と慕い」
・向田邦子『夜中の薔薇』
ダイアナが憧れる作者はいずれも父親と深い愛で結ばれている。わざわざご丁寧にダイアナ自身がそのことを指摘している。
・『風と共に去りぬ』、『嵐が丘』、『ジェーン・エア』、『風と共に去りぬ』、『ボヴァリー夫人』
いずれも「外国の、劇的な人生を送る女性の話」。彩子が山の上女学院での穏やかで平坦な生活にうんざりし、刺激を求めているが分かる。
・サガン『悲しみよ こんにちは』、ラクロ『危険な関係』
どちらも主人公の名前が「セシル」で修道院上がりの無垢なお嬢様が蠱惑的なバッドガールへ変貌する。彩子が修道院上がりのお嬢様のセシルに自分を重ねて不良少女に憧れを抱いていることを思わせると同時に今後の彩子の転落(「夜遊びやお酒、恋愛」に憧れて「いい子」から脱しようとした結果レイプで処女喪失し、さらにそれを認めたくないがために大学四年間を棒に振る)を暗示している。
など。他にも沢山あるけどきりがないので割愛。
第一章 〝ほんもの〟の友達(起)
ダイアナ視点①
新学年1日目の教室の後ろの席に座るダイアナの視点から物語が始まる。冒頭の一文「新しい教室の窓際の席からは、空のプールがよく見える。」ダイアナの視線(カメラ)は外(プールと空)から教室の中(新しい机、後ろから見えるクラスメイトの黒い頭)へ移動する。
ダイアナが自分の名前を嫌っていること、普通ではない母親を恥ずかしく思っている様子、父親の不在と名前の関係、ダイアナの家庭環境が良くないこと、ダイアナが文学少女であり特に少女小説に入れ込んでいることが描かれている。
彩子との運命的な出会い。「教室の喧騒が一瞬遠のき、世界はダイアナと彩子だけのものになった。」
彩子視点①
彩子の上流な家庭環境とそれに退屈し、ジャンクフードやラメの文具など子供らしい安っぽさに憧れる彩子の様子が描かれる。シングルマザー(水商売)と二人暮らしのダイアナとの対比と彩子がダイアナに強く惹かれている様子の描写。『秘密の森のダイアナ』と「はっとり けいいち」が登場。
ダイアナ視点②
彩子の家に遊びに行き、『秘密の森のダイアナ』を読み「まるで自分のためにあるような言葉だ」と共感するダイアナ。作者の「はっとり けいいち」に対して「ダイアナの気持ちを分かってくれるはず」と思う。彩子の穏やかで知的な父に会い、父親に対する憧れが増し、父を探し出す決意を固くする。
彩子視点②
ダイアナの家に遊びに来ている。彩子はダイアナの家や暮らしが刺激的で自由で羨ましい。二人のお気に入りの遊びは『秘密の森のダイアナ』に出てくる「呪いを解く儀式ごっこ」。ダイアナがシングルマザーで寂しい思いをしているのを知り、ダイアナの自由な暮らしを羨ましがっていただけの自分を恥じて、父親探しの協力を約束する。美人で見た目も中身も若いダイアナの母ティアラに会い、ますますダイアナに惹かれる。
ダイアナ視点③
教室で彩子の作文の発表を聞いて親友を誇らしく思う。作文の内容はティアラとダイアナが彩子の家に遊びに行った際のことで、ダイアナは聞きながらその時のことを回想している。ダイアナは落ち着いた彩子の両親に比べ落ち着きがなく調子のいいティアラを恥ずかしく思っている。
武田君登場。武田君が作文の読み上げで「競馬」と言ったことをきっかけにダイアナは父への手がかりを求めて武田君に話しかける。父親を捜していることを打ち明けて武田君親子の競馬に連れて行ってもらうことに。
彩子視点③
「コースの濃い緑が目にしみるようだ。」ダイアナの父親探しに付き合って武田君親子とダイアナと競馬場に来ていた。人が多すぎて父親らしき人も見つけられずに落ち込むダイアナを慰める。ダイアナが自分の父に理想の父親像を見ていたことを知り、ダイアナの前でむやみに父に甘えていたことを反省する。武田君のダイアナへの好意を察する。
第一章 〝ほんもの〟の友達 まとめ(起)
・『赤毛のアン』が好きという共通点しかない家庭環境も嗜好も対照的なダイアナと彩子の運命的な出会い。それぞれの家を行き来し、お互いの家族や生活の様子を知る中で芽生える友情と憧れ。ダイアナ視点と彩子視点で対照的な二人の生活を描くことで二人の経済的格差が顕著になっている。全体的に第一章はダイアナ視点が主で物語を引っ張り、彩子視点はそれに対応し逆を描きながらエピソードを補足していっている印象。
・『秘密の森のダイアナ』の編集者が彩子の父で、作者「はっとり けいいち」はそれ以降作家をやめていることが明かされる。
・ダイアナ視点のティアラは終始教養のない軽薄そうな印象で語られている。
第二章 別世界の人
彩子視点①
六年生の二学期、受験前。彩子は山の上女学院を中学受験するために受験勉強に追われている。ダイアナは山の上女学院に憧れているが、お嬢様学校であるため経済的に無理だと諦め風紀の乱れたナンチュウに行くことを承諾している。生理でスカートを汚してしまった彩子をダイアナが手際よく助ける。彩子はクラスの男子に生理をからかわれて何も言えないがダイアナは男子の足を踏みつけた。(三年生では意地悪な女子から引っ込み思案なダイアナを彩子が守っていたが、六年生になり彩子が女性に近づくと、内気な彩子をダイアナが守るように立場が逆転している。「男子の視線の前では手足が動かなくなってしまうのだ」)
ダイアナ視点①
場面はダイアナの家で、ダイアナは彩子とその両親からプレゼントされた『秘密の森のダイアナ』の二巻をめくっている。まだ生理を迎えていないダイアナはどんどん女性らしく美しくなる彩子のそばでその成長を見たいと考えていた。ティアラに山の上女学院の受験を打診するも、苦労知らずのお嬢様ばっかりの中でのびのびやれるとは思えないと反対される。その際、ティアラは『秘密の森のダイアナ』の引用を口にするがダイアナはこの時はそれに気づかない。(「何言ってるんだ、この人―」)
彩子視点②
クラスの男子に「巨乳じゃん」とからかわれて恥をかいた彩子が安堵を求めてダイアナを探していると、武田君と話しているところを見つける。武田君がずっとダイアナに一途でいることを知り、周囲の心を自然につかむダイアナを羨ましく思う。ダイアナが山の上女学院に行きたがっているのを知り、文化祭に誘う。
ダイアナも文化祭に連れて行ってもいいかと母親に尋ねる場面では自分のことを「彩子ちゃん」と呼ぶなど、彩子が甘えている様子がうかがえる。
ダイアナ視点②
彩子親子と山の上女学院の文化祭に来たダイアナはその素晴らしい校舎に感動する。生まれ持った素質の差から、自分には合格できないと悟り、出生を恨めしく思う。さらに当然のように母親に甘える彩子の姿を見て初めて彩子を疎ましいと感じる。
司書教諭に母親と勘違いされたことからティアラが山の上女学院に通っていたこと、「穏やかで大人しくて賢い子」だったことを知る。図書館で見た卒業アルバムの巻末のティアラの実家の住所を手のひらに控える。
帰宅しティアラを見て動揺したダイアナは心を落ち着かせるために『秘密の森のダイアナ』五巻を開くとそこには以前ティアラが口にしたセリフが書かれていた。(ダイアナ視点①参照)ティアラに本を読んだのかと聞くと否定されるが、嘘に気づいたダイアナはティアラの秘密を探るためにティアラの実家に行くことを決める。
彩子視点③
受験勉強と生理で苛々していた彩子はダイアナに会いに家に行くが、そこにはティアラしかいなかった。ティアラがダイアナを守るためにあえてダイアナの髪を金髪にしていることを知る。ティアラに悩みを聞いてもらい、励まされて前向きになったところにダイアナと武田君と遭遇し、武田君には話すのに自分には話さないダイアナに対して怒りを覚える。ダイアナは自分よりも男を選んだのだと怒った彩子はダイアナに絶交を言い渡し走り去る。
ダイアナ視点③
彩子の誤解を解こうとプレゼントを携えて彩子の合格祝いのパーティーに行くも、彩子に会う前にみかげに「山の上女学院に通うような子とあんたとじゃ、そもそも初めから全部違う」から今後も仲良くしていけるわけがないと言われ泣いて帰る。それ以来ダイアナは彩子と言葉を交わすことなく卒業を迎えた。
彩子の家に向かう道中でのダイアナの回想で、武田君とともに訪れたティアラの実家が学習塾であったことが明らかになる。
第二章 別世界の人 まとめ(承)
・ダイアナと彩子の対照的な家庭環境と経済的格差を描いている。違う道を進んでいくことが決定的になり、最終的に決別してしまう。
・ティアラの素性と過去が垣間見える。
・武田君が一途で硬派で格好いい。
第三章 月光石のペンダント
ダイアナ視点①
ダイアナがナンチュウに進学し十五歳になって「名の変更許可申立書」をマックで書いている場面で始まる。ここでもダイアナが自分の名前に劣等感を抱え、名前のせいで生き辛い人生を送っていると感じている様子が描かれている。ダイアナが新しい自分の名前として考えたのは「文子」だった。(幸田文にちなんでいるとダイアナは言うが彩子への憧れもうかがえる。ちなみに幸田文は露伴の次女で父露伴にまつわる作品を発表するなど父から受けた影響が多大な人生を送った女性。)←ダイアナ=AYAの伏線①
偶然マックにいた不良グループの中の武田君に申立書を見られそうになり咄嗟に覆い隠そうとした拍子に飲み物をこぼして駄目にしてしまう。ダイアナは汚れた申立書を捨てる。この時武田君はそれを拾っていた。
マックから出て本屋に入ると『秘密の森のダイアナ』のムックが発売されていた。(「ネットで噂になっているのは知っていたが」←ダイアナ=AYAの伏線②)さらに書下ろしの短編(母親になったダイアナと娘リリーの物語)を読む。贅沢な環境を与えられているにも関わらずそこから抜け出したいと考えているリリーをティアラに重ねる。この段階ではダイアナはティアラのことを馬鹿にしている。
武田君に親に何も言わずに名前を変更することについて薄情だと言われ、先ほど読んだリリーに自分が重なる。「母親の愛に気づかず、反抗してばかりのわがままな娘」そこにさらに美しくなった彩子が通りかかり思わず見とれる。彩子との世界の差を改めて思い知り、一刻も早く名前を変えたいと思う。
彩子視点①
山の上女学院で文芸部に所属し部長をこなし、優等生をしている彩子の様子が描かれている。男性教諭にときめいている様子を描き、彩子が異性との刺激的な恋に憧れていることが分かる。彩子は『秘密の森のダイアナ』ムックの短編のリリーに共感し好きになっている。同級生と帰宅途中、すっかりやさぐれたみかげを見かけるが友人の手前、他人のふりをしてしまう。さらに武田君とダイアナを見て、「男の子がいる生活」をしているダイアナを「住んでいる世界が違う」と感じる。
ダイアナ視点②
名前を変更するための証明書を書いてもらうためにダイアナは彩子の不在時を見計らって彩子の母親を尋ねる。彩子の家でムックを見つけて厚意に甘えてそれをもらう。彩子が相変わらず読書好きで文芸部の部長をしていることを知る。彩子の母親に好きな作家の共通点を指摘されて父親と娘の濃密な関係に憧れていることに気づく。
彩子の母親にティアラはきっと真剣に考えてダイアナと名付けたはずだから、名前の変更には協力できないと断られる。
彩子視点②
職員室で教師に暴言を吐いて飛び出したみかげを追いかけ、やさぐれたみかげを改心させようと試みるが、逆に狭い世界にいると気づかされる。生まれて初めて目にする友人のキスに動揺し、「一人の力でお城を出るために」ヨークシャーへの短期留学を決める。
ダイアナ視点③
ティアラの忘れ物を届けるために歌舞伎町にあるティアラの働くキャバクラに来ていた。ティアラの仕事が終わるまで彩子の母親からもらった『秘密の森のダイアナ』のムックを読む。母親からもらったペンダントをずさんに扱うリリーが自分に重なる。ティアラのロッカーから父親からティアラに宛てた手紙(僕らの娘の名前は「ダイアナ」にしよう)と父親の写真を見つけ、ダイアナは「文章だけで彼が好きに」なる。狸寝入りを開いていた時にティアラの仕事仲間がティアラに言った言葉で今まで知らなかったティアラの一面を知る。さらにうどん屋での会話でティアラが彩子と同じように山の上女学院で交換留学生に選ばれヨークシャーを訪れていたこと悟り、ティアラにもまだ自分が知らない顔があると考え、名前の変更を延期する。
彩子視点③
ヨークシャーに来ても瓶の中の船のような環境は変わらずで、山の上女学院を抜け出せた気がしない。高柳先生の話と歴代の交換留学生たちの写真からティアラが元山の上女学院の生徒で、自分のように狭い世界にうんざりして学校を中退したことを知る。
第三章 月光石のペンダント まとめ(承)
『秘密の森のダイアナ』ムックに母になったダイアナと娘のリリーを描いた短編が収録され、母親から与えられた何不自由ない生活と由緒正しい「月光石のペンダント」をないがしろにして城を出て行くリリーが引用されながら彩子とダイアナそれぞれに重ねられる。彩子は「瓶の中の船」のような大人たちに守られた狭い世界から刺激的な広大な世界へ出たいと思い、ダイアナは母から与えられた名前の本当の価値に気づかず捨てようとしていた。「月光石のペンダント」は彩子にとってはお嬢様学校に通える経済的に恵まれた家庭環境であり、ダイアナにとっては母(と父)からもらったダイアナという名前である。
・ティアラが山の上女学院の卒業生だと発覚する。さらに、父親が「蛍」という名前だと知る。
第四章 森を出る(転)
彩子視点①
高校三年生の九月、彩子は指定校推薦で女ばかりの砂川女学院大学に進学するか、共学の大学を受験するか迷っていた。『悲しみよ こんにちは』や『危険な関係』の主人公セシルに自分を重ね合わせる彩子は人生で一度でいいからセシルのように「バットガール」になってみたいと思い、「お嬢様女子大生」のイメージから逃れるために共学の私大を受験することを考える。
帰り道商店街で店番をしている武田君と目が合い、会釈する。数少ない異性の友達である武田君との繋がりは彩子を勇気づけていた。異性は苦手だがエネルギッシュでさっぱりとした武田君には好感を持っている。
喫茶店で父親とティアラが二人でいるところを目撃し、動揺して真意を確かめられない自分を子供だなと思う。
気持ちを落ち着かせるために『秘密の森のダイアナ』を語るスレを開く。アンチ意見に反論を書き込んだことをきっかけに掲示板の古株(カリスマ)であるAYAと親しくなり舞い上がる。(「これと同じ快感をかつてどこかで経験している。そう、小学校低学年の頃、よくダイアナと一緒になって、乱暴な男子をやっつけた」←ダイアナ=AYAの伏線③)
ダイアナ視点①
高校最後の娘の進路相談に「コンサバお姉スタイル」を決めているティアラを見てため息をつく。ティアラの「その場しのぎの生き方」を見て対極にある大好きな作家向田邦子さんについて思いめぐらせる。ダイアナは彼女の「自分の意志やセンスを貫く生き方に憧れ」ている。学校に行くまでの道中、店番をしている武田君に話しかけられるが、同じ金髪だからとティアラと武田君に仲間意識を持たれているのを鬱陶しく感じる。
ダイアナはティアラのことを「まっとうな道を外れた人生の落伍者」だと馬鹿にしている。三者面談で、担任からダイアナが三年になってから不登校になっていたことがティアラに告げられる。
入学当初彩子を真似て周囲に溶け込むよう努力したが、男がらみで女子から恨みを買って以来無視や悪い噂を流されるようになり、一番お気に入りの本屋で万引きの濡れ衣を着せられ、ついに堪忍袋の緒が切れたダイアナは髪を金髪に染め、翌日首謀者たちを隣々堂に引きずっていき謝らせた。それ以降二年生の一年間は孤独に過ごし、三年になると地元の図書館で過ごすようになったのだった。
不登校を「逃げ」だとティアラに言われてかっとしたダイアナは汚い言葉をティアラに投げつけ、これでは軽蔑していた母親のような人生を送ることになると絶望するが、暴言は止まらずついに名前についての恨みをぶつけてしまう。ティアラにぶたれて床に倒れ、彩子と過ごした小学校時代を思い返しながらこれは自分ではないと感じていた。人生に失敗した自分と向田邦子との違いは深い絆で結ばれた父親がいたことだと気づく。
彩子視点②
受験を考えている壮生大学の授業に紛れ込んでいると男子学生に学生ではないとばれて声をかけられる。チャラい男子学生に「可愛い」と言われ、さらにフランス文学についての話も出来て浮かれる。(『危険な関係』、『女の一生』、『ボヴァリー夫人』について「修道院育ちの世間知らずゆえに、痛い目にあっている」という亮太の発言は今後の彩子を表すメタ発言)今まで抑圧されていた異性への興味を自覚し、壮生大学への受験を決める。
帰宅した彩子は父親にティアラといるところを見たことを打ち明け、ティアラが元文壇バーのホステスで、父親と昔仕事で付き合いがあったことを知る。ティアラが聡明で文学についての造詣が深かったことが明かされる。ティアラを知るにつれて彩子はもう一度ダイアナと交流を持ち、ダイアナの父親を捜すという小学校時代にかわした約束を守ることで自分は大人になれる(「森の外に出られる」)と考える。
ダイアナ視点②
かつて一二歳の時に武田君と訪れたティアラの実家「矢島学習塾」に来ていた。そこで初めて祖母と話す。父のことを知らないかと尋ねるが何も手がかりは得られない。落ち着いた実家の様子を見て祖母に好感を抱いたダイアナはティアラと進路のことで喧嘩して家を飛び出したことを話し、かなり心が軽くなる。ティアラが子供時代を過ごした部屋にはダイアナが好きな作家の本が揃っていた。さらに向田邦子の『父の詫び状』を見つけ、自分と同じ年頃のティアラに思いはせる。「恵まれた家に生まれたからといって、自分に与えられた環境に満足できるわけではないのかもしれない」と考え、彩子のことを考える。
彩子視点③
壮生大学の赤本に取り組んでいると家でしたダイアナを探してティアラと武田君が訪れる。ダイアナの行方に考えを巡らせるが、生きずりの男に身を任せているのではなどと考えてしまう自分を恥じる。壮生大学で亮太と話してからいやらしいことばかり考えてしまい、集中力が続かない。また『秘密の森のダイアナ』のスレを開き、昨夜のAYAの書き込みを読み返すうちに、AYAがダイアナではないかと思い至る。
ティアラと武田君にスレを見せ、AYAはダイアナでこの掲示板だけを心のよりどころにしているのではないかと告げる。書き込みの内容と武田君の話からダイアナがティアラの実家に言っていること、ダイアナと仲たがいした日、ダイアナは武田君と実家に言っていたことなどが判明し、彩子は過去の自分の振る舞いを反省する。
また、ティアラが山の上女学院のOGだったこと、文壇バーで働いていたことを知っていたことも打ち明け、実は読書家なんじゃないのかと聞くと、ティアラは「(あんたたちくらいの歳に)もう本を読まないと決めた」と言う。
AYAというハンドルネームの由来について武田君から中学の頃ダイアナが彩子に憧れて文子という名前にしようとしていたことを聞く。
ティアラは彩子の目の前でダイアナに電話し、謝った。
ダイアナ視点③
卒業式の日の夜に武田君とティアラの店に来ていた。AYAとして掲示板にいる時にだけ本当の自分でいられるような気がしていたダイアナだが、卒業を機に「ダイアナが居心地のいい森から出たように、自分もまた外の世界に出る」ことを決意する。黒髪にし、本屋で働くことをティアラに告げ、父親について聞くと、ティアラは本屋の面接に受かって自活の道が見えたら本当のことを教えると約束する。
自活という言葉を聞き、今までティアラに守られながらティアラの生き方をなじって自分が高尚なつもりになって楽をしていたと気づく。その時ティアラの「『森』を出るんだろ?」という励ましの言葉でティアラも『秘密の森のダイアナ』を読んでいると確信する。
いつか父に会ったら自分のために本を選んでと甘えよう、と考える。
ステージで踊るティアラのダンスが幼い頃よくつき合わされたゲームのダンスであることに気づくとダイアナは噴き出すと同時に少しだけ涙ぐんだ。
第四章 森を出る(転) まとめ
・「森を出る」ということは、「自分の力で道を切り開いて」いくこと、「はしっこい目と頭と頑丈な足で、自分を信じて生きて」いくこと、 「誰かに何かを与えてもらうのを待つんじゃなく、欲しいものは自分で掴んで」いくことである。
この章では彩子は女ばかりでお嬢様のように育った世界から刺激を求めて抜け出す決意をする。一方ダイアナは居心地の良かったネット世界から卒業するとともに母ティアラの保護から離れることを決める。
・軽薄そうに語られていたティアラが実は読書家であり文壇バーで働いていたこと、『秘密の森のダイアナ』を読んでいたこと、ある時を境に本を読まなくなったことが分かる。
・ダイアナとティアラの喧嘩と仲直り。ふたりきりの親子の絆。祖母との繋がりも出来る。
第五章 分断された私(転)
ダイアナ視点①
本屋のバイトの面接を受け続けるも名前と見た目の印象と感情表現が下手なせいでことごとく落とされてしまい、社会の厳しさを痛感するダイアナは優雅な大学生活を送っているのであろう彩子を想像し、彩子に自分の理想を重ねていることに気づく。高校時代に万引きの濡れ衣を着せられた現場になったお気に入りの本屋「隣々堂」に採用される。
約束通りティアラに父親について聞くとティアラは『秘密のも森のダイアナ』を差し出し、作者の「はっとり けいいち」が父親だと告げる。本名は服部蛍一で、蛍と呼んでいて、文壇バーで働いていた時に出会い、デビューしたばかりでダイアナが生まれてプレッシャーでスランプになったけいいちを見ていられなくて妊娠を勘違いということにして身を引いたのだと説明されるもダイアナは信じられない。ティアラにでまかせを言われているのだと激昂し、家を出て一人暮らしを決意をする。
彩子視点①
壮生大学に入学し一か月が過ぎたがまだ慣れない彩子はクラスメイトに連れられて『シュガー』の飲み会に参加し亮太に再会する。亮太との再会をロマンチックなどと思っていると酔っぱらったところをレイプされてしまう。服を脱がされる瞬間ダイアナがいつでも助けに来てくれたことを思い出す。そしてティアラに言われた「男になめられるスキをあたえちゃだめ」という言葉も。「あっという間に彩子は二つにされた。右と左に分断された自分がいる」
呆然と帰宅すると両親に遅い帰宅を咎められ、「弱弱しく年老いた男女」に守ってもらえるわけがなかったのだの悟り、これまで心の底から安心しきって生活してきた昨日までの自分には永久に戻れないことを思い知る。
ダイアナ視点②
本屋で働き始めたダイアナだが失敗続きで自分の無能さに落ち込む。優しくて穏やかで文学の知識と愛情に溢れている社員の田所さんとランチの際に、彩子のことと『秘密の森のダイアナ』への思い入れを語り、「はっとり けいいち」について聞くと、田所さんは依然サイン会で会ったことがあると言う。写真を見せてもらうことを約束する。田所さんも恥ずかしい名前のせいで苦労してきたことを知り、ますます田所さんに惹かれる。
彩子視点②
自分を被害者だと認めたくない彩子は和姦だったと自分を納得させるために亮太の好みの女性になりきり、五度目のデートで江ノ島に来た際に亮太に告白させることに成功するが、心は依然として二つに割れたままだった。過保護な両親に守られ続けていたせいで人を疑う術を身につけられなかったと両親を恨むことでどうにか亮太の好みの女を演じる屈辱に堪えていた。
ダイアナ視点③
田所さんから任せてもらったPOPにティアラが勝手に加工を加えて怒ったが思いの外評判が良く、雑誌に取り上げられることになる。田所さんにはっとり けいいちの写真を見せてもらうと以前ティアラの店で見た男と同一人物で、思わず田所さんの前で泣いてしまう。田所さんはダイアナを「僕は君のパパみたいなもんです」と言って抱きしめた。その時ダイアナは「旅が終わった」と感じる。
彩子視点③
購買で手に取った雑誌に「自分の力ひとつで正しい道を一歩一歩進んでいる」ダイアナの」姿を見つけ、恵まれた環境にいたはずの自分が「親に心配をかけ、金を使わせ、心を殺してまで」大学にいることを情けなく感じ、自分もみかげと変わらない軽薄な女だったのだと思う。彩子を『シュガー』に連れて行ったクラスメイトから『シュガー』がヤリサーだと噂になっており、業務課が調査に乗り出していることを聞くが、意地になっている彩子は「自己責任」だと切り返し、亮太と撮った写真が幸せそうなカップルに見えることを確認したり予定を遊びで埋めたりと問題から目を逸らし続ける。
入ってくる新入生が自分の二の舞にならないように亮太を自分にひき留め、真人間に作り替えて「あの夜」を無かったことにすることが今の彩子の全てだった。亮太との関係は彩子にとって呪いだったが、「勇気を振り絞って、かえって傷口を広げるくらいなら、このまま呪いと一体化して、たゆたっていたかった。」
第五章 分断された私(転) まとめ
ダイアナは本屋で働き出し、社員の田所さんに恋をする。そしてはっとり けいいちが父親で、ティアラの語った話(父親の中で自分の存在はいないものになっている)が真実だったと知って泣く。
彩子は憧れの大学生活に挫折する。レイプされ処女を喪失したショックに向き合えず自分をごまかし続けている。
第六章 呪いを解く方法(結)
彩子視点①
卒業間近、大学生活のほとんどを『シュガー』絡みで遊びつくした彩子は大学生活で得たものは亮太だけだったと振り返る。編集者になりたいという夢も諦め、『シュガー』のリーダーである武田さんのコネで内定を得たカード会社を学務課に報告する際に、武田君が生活相談のブースで怒鳴っているのを見つける。『シュガー』の常習的なレイプを訴えに来たという武田君の話を聞いてレイプされた記憶が蘇るが、「新入生の洗礼」、「日常茶飯事」だと深く考えないようにして、武田君に「女の子のほうにも問題あるんじゃないの」と冷たく返す。武田君の失望しきった瞳とダイアナの名前に深い敗北感を味わう。武田君に自分のことを言い当てられ、(学生の悪ノリに見せかけて加害者と被害者の関係を曖昧にし、自分を被害者だと思いたくないあまり楽しそうにしてサークルに居続ける)武田君を馬鹿にする言葉を吐いて逃げる。
ダイアナ視点①
書店で働き始めて三年、バイトから契約社員に昇格したダイアナは店のブログとツイッターを任されるようになり、文芸誌や女性誌で「ほんのむし」という名で新刊を紹介することもある。向田邦子や森茉莉、安井かずみなどのエッセイに書かれていたような憧れの一人暮らしにはほど遠いが一人暮らしを始め、ティアラのたくましさと聡明さに気づかされる。ティアラとははっとり けいいちのことで引っ越しの日に喧嘩をしてからあまり会えていない。
田所さんにずっと片想いしていたが、同僚の山本さんと結婚することが告げられ何も言えずに失恋する。防犯カメラに映った万引き犯を印刷し、退勤するとティアラに連絡した。
ティアラは歌舞伎町から五反田に店を移っていた。ティアラに失恋の愚痴を聞いてもらい、「自分で自分に呪いをかける生き方はしんどい」と励まされる。『秘密の森のダイアナ』の重要なキーワードを口にしたティアラに読書家だったのにどうして本を読まなくなったのか聞くと、『秘密の森のダイアナ』以上の本に出合いたくないからと答えた。
ダイアナはティアラの真実を知って初めてティアラを理解する。
ティアラから彩子の母が大学に入って変わってしまった娘を心配していると聞き、彩子の鬱屈とした感情について想像する。
彩子視点②
庭で働く母の姿を惨めに感じながらシュガーの後輩から誘われた新歓コンパに亮介を見張るために行くべきか考えていると父親に呼ばれ、書店のホームページに載るダイアナの書評を見せられる。表現力に長けた書評を読み、ダイアナと自分の差に打ちのめされ、父親に当たってしまう。その際はっとりけいいちがダイアナの父であり、ティアラの過去を聞く。ハンデをものともせず自ら道を切り開いたダイアナを褒める父親に自分の惨めさを感じて家を飛び出しシュガーの新歓コンパ会場のカラオケ店に行くと、新入生が今にもレイプされようとしていた。その光景が三年前の自分に重なり、「これはれっきとした犯罪」だと糾弾し、新入生を助け出す。(呪いを果敢に破ったダイアナと、「繰り返し読んだ物語」が彩子を動かした。)『秘密の森のダイアナ』の中でダイアナが呪いを解く場面が思い出され、(話中話)今まで目を逸らしてきた現実に向き合う。三年前自分はレイプされたのだと認め、シュガーの実態を客観的に見れるようになって、やらなければいけないことが数えきれないほどあることに気づく。そして、ヒロインにはなれなくても、ヒロインを支える誰かになろうと決意する。(この物語の彩子の役割そのもの)
ダイアナ視点②
隣々堂の取り組みをある読者から教えてもらってぜひ「ほんのむし」に会いたいとメールしてきたはっとりけいいちと対面するが、あまりに幼く落ち着きがない様子に失望する。さらに近々デキ婚することを知り、ティアラが身を引いたのはこの男が子供を一緒に育てるには心心許なかったからではないかと察する。『秘密の森のダイアナ』を好きな理由を尋ねられ、彩子との思い出を話すと「君たちにぴったりな本」だと『赤毛のアン』を薦められ、ありきたりな選択にはっきりと失望するが、「読んでほしいのは花岡花子さんの解説だ」と言われる。本屋で本を手に取るはっとりけいいちの姿が監視カメラに映っていた万引き犯に重なり、万引きしたことを指摘するとはっとりけいいちは言い訳をし、作家に期待しすぎる傲慢さを指摘した。大人の男、それも肉親のあまりの弱さを直視できず、サイン会をすることを約束するとそのまま売り場を離れてティアラの店に行き、ティアラにあったことの全てを打ち明ける。はっとりけいいちに言われた言葉を思い出し、「自分の人生がすぐに息詰まるのは、理想ばかり追求し、今目の前にある現実を愛さないせいではないか」と振り返る。
彩子視点③
シュガーで強制的なセックスが行われていたことを大学に申し立てし、セクハラ防止委員会が動いたことを武田君に報告する。亮太と別れた彩子は今でも一途にダイアナを想い続けている武田君の話を聞いてダイアナが羨ましいと思う。
帰宅し、庭仕事でぐったりしている母親のために小学校時代母に教わり、ダイアナと繰り返し作った『赤毛のアン』に出てくるビスケットを作る。作りながらいつも自分のために料理を作り続けてくれた母の気持ちを想像し、シュガーをやめてブラスバンド部に入った助けた新入生のことを思い、胸があたたかくなる。ビスケットを見て母は彩子が変わっていなかったことに安心し涙ぐみ、それを見て彩子も心配をかけたことを謝り、親子のわだかまりが解ける。父親とは、はっとりけいいちとダイアナを会わせるきっかけを作るためにはっとりけいいちにファンレターを届けることを頼んだ際に、きちんと話した。
ダイアナ視点③
一人で進行したサイン会が終わり、打ち上げのためにはっとりけいいちを呼びに行くと姿を消していた。バイトの大学生にはっとりけいいちから預かったという『アンの愛情』の付箋個所を開くと、境遇が異なる中での女の友情について書かれた花岡花子の解説があり、ダイアナの心の深くに沁みた。それはダイアナがずっと求めていた言葉だった。
彩子がダイアナの背中を押し、ダイアナははっとりけいいちを追いかけて走り出す。遠くからサイン会の様子を見ていたティアラに行き会い、今度ティアラのために本を選ぶことを約束し、ティアラにも背中を押されて駅のホームで今にも電車に乗ろうとしているはっとりけいいちを呼び止める。「ほんのむしです」と叫んでも雑音に紛れて届かないが、「ダイアナです」と叫んだ瞬間「二人の間に「ダイアナ」という名前が横たわっているのが目に見えるよう」に振り向いた。ダイアナみたいな存在の本になればいいと思ってアンのためではなくダイアナのために『秘密の森のダイアナ』を書いた、という話を聞いて、初めて自分の名前が好きになる。それを伝えるとはっとりけいいちはもの言いたげに涙ぐんでいた。
戻ったダイアナに彩子が「本を選んでほしい」と言い、ダイアナは『アンの愛情』を差し出す。本の話から、二人は再び友情を取り戻す。
第六章 呪いを解く方法(結) まとめ
ダイアナも彩子も自らがかけた「呪い」を自分の力で解く。ダイアナは「理想の父親」への執着から(同時に理想ばかりを追い求めて現実を受け入れようとしない狭さから)、ダイアナという名前であることの劣等感と羞恥から己を解放する。そして彩子は見ないようにしていた「ちっぽけで平凡な自分」を受け入れ、自分は主人公になれなくても支えることは出来ると気づくことで物語のヒロインへの執着から自分を解放し、本来の自分を取り戻す。
・ダイアナは実の父に会って「現実は小説みたいに上手くいかない」ことを知る。
・憧れて理想を重ねていた彩子に「誰にでも胸を張れる完璧な人間なんて居るわけない」と言われて現実の父親を受け入れる。
・花岡花子の解説が引用され、ダイアナは救われる。
まとめてみた感想
・彩子視点で武田君に会ったらダイアナ視点でも武田君に会うなど、二人の視点が交互に繰り返されるのが内容的にも対になっていて、細部まできっちりしている。構造意識するだけでどんどん書き進められそう。
・とにかく話の組み立てが緻密。書きたいことや入れたい内容が決まっていて、最初から終わりまで見通せているような全体を俯瞰できる状態にならないと語り始められないだろうな、というかんじ。プロットの段階でだいぶ作りこんでいると思う。骨組みがしっかりしている。
・伏線と回収の数が半端ない。意味のない文章なんてない。(当然かもしれないけど)
・「自分に打ち勝つ」っていうテーマは感動するし共感するよね。彩子が現実の自分に向き合って弱きを助け悪を正す場面読んでる時、待機列に並んでいたんだけど普通に泣いてしまった。最後まで読み切った時は職場の昼休みだったから必死に涙をこらえていた。
・ダイアナと彩子の友情が運命的でまさに「最強のガールミーツガール」小説。
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