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大小島 真木ちゃんについて

大小島 真木ちゃんの個展が始まった。「骨、身体の中の固形の海。ー植物が石化する。」という言葉が今回の個展のタイトルであるが、骨が一つのモチーフとなっている。骨が植物に、骨が化石燃料に、骨が珊瑚に、骨がマグマに、そして骨が鯨になっているものもある。

大小島は近年、タラ号というアニエス・ベーが所有する海洋探索船に乗り、研究者やアーティスト、中には料理人も共に、何ヶ月か海上生活を共にした。その時に、なくなった鯨の体が溶けて、骨が見えている状態で横たわっているのを見て、また骨が海に帰り、新たな生物の素になっているというのを感じたそうだ。

その後、鯨のモチーフは、粟島での制作でも展開し、さらには、パリの水族館でも展示され、アニエス・ベーさんにも喜んで見ていただけたようだ。映像作品は、VOLVO AOYAMA STUDIOでも展示された。

また、この2年、青森県立美術館で、アグロス・プロジェクトという、稲を植えるところからスタートし、刈り取るまで市民と一緒に活動し、一つの絵におこすまでをじっくり取り組んで、土から海まで、考える機会を得た。

そうした全ての経験や叡知が、今回生まれた大作「遺伝⼦の⾳楽:植物界と有機物は常に無形の状態と繋がっている。同時に有形が繰り返し作られている。」では、凝縮されている。マグマのような血のような、海のような土のような、そんな、言葉の上では一緒にならない現状や出来事、ものが、渾然一体となって絵の上では可能となっている。

今回、大小島は、自分の体(手や頭)だけではなく、偶然性を取り入れるために、ドリッピングを行うところから絵をスタートしていて、それによって、絵に出てくるモチーフも変化があったそうだ。アンモナイトから動物、植物、自由自在に飛び出し浮遊している。

偶然は必然でもあり、骨のシリーズの小品が描かれている木片は、イコン画が描かれるための支持体を、友人からいただいたことがきっかけになったそうだ。イコン画家を父に持つセルジュさんからその遺品を分けていただいたそうで、その支持体である木片を抱いた時に、子供のような大きさで、これだと感じたそうだ。

骨のシリーズは、腕の骨が描かれていて、画家である大小島の腕、その腕から生み出される骨、海、植物、珊瑚、マグマ、ここでは大いなる円環、循環が起こっている。その円環、循環の中にまた私たちもいるということを思い出させてくれる。

常々私が思うのは、西洋と東洋で自然観が違うということ。大きくいうと、対するのが西洋、中にいるのが東洋だと思う。それは、言葉にすると簡単でまたつまらなくもあるのだが、絵や表現を通じて伝えるのが、伝わるか伝わらないかは個人の感受性次第だと思うが、豊かだなと思っている。

真木ちゃんは言葉もうまく使うことができるので、出てきた言葉は、柱を見ていただけたら。どこかの作品とリンクするものが出てくると思う。(建物の躯体、骨だと思ったそうで柱に展示することにしたそう)

一つ面白かったのは、今回の展示の二日目に、鈴木ヒラクさんが来てくださり、おっしゃっていたのが、キャンバスは織物で、織られているがゆえに、物語性を持つということ(正確ではないかもしれないけど私の理解)。今回の展示では、先ほどのイコンを描かれるための木片、キャンバス、陶器と、3種の支持体が使われているので、その違いもぜひ楽しんでいただけたらと思う。

陶器に描かれた作品も、また二つと違うので面白いと思う。いわば、タイルのような感じ(陶版)なのだが、色のついたタイルが組み合わされていて、そこに骨の絵が描かれている。土からまたそのタイルも生まれていて、骨が根っこに、細胞になっています。(だんだん意味が伝えづらくなってきました)

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私自身は、表現から受けることを理解する方が直接的で、わかりやすくて、言葉にするのがうまくないのですが、noteというのを使ってみようと林アキオ君が言ってくださり、流れていってしまう時間を、何か思ったことを、折々に書き留めていくのに使えたらいいかなと思いました。

この展示は、HARUKAITO by islandというスペースができての1回目の展示です。islandは9年目となり、だいぶキュレーションやコーディネートや、いろんな仕事をすることが増えてきたので、ここでは、本当にマイペースに、人間同士の関係の中で生まれてくることを大事にできたらいいなと思っています。

実のところ今は、戸籍上小野寺悠なので、HARUKAITOというのは別人でもあって、なので気も楽なような感じです。また、ゼミの篠原資明先生が、超絶短詩をやっていらっしゃって、前に「春 解凍」といってくださったので、繋げてみることにしました。ロゴは、Noriko Nakazatoちゃんがikki kobayashiさんを紹介してくださり形になりました。

DM等デザイン関係は、もう9年も毎度お願いしているYUTA NAKAJIMAさん。写真は花坊ちゃん、PELTSIGNの二人に看板は作っていただきました。本当に素敵な植物はVISCUM FLOWER STUDIO。倉庫は大道具宮本さん、設営はTRNK山口さんがきてくださりました。そして何より、夫の小野寺ひーくんの支えやサポートなくしてはできてません。みんなに感謝。

そして、大小島真木ちゃん、一緒に東北を手伝いに回った時からインド行ったり、いろんな出来事を共にしてきたけど、真木ちゃんは肝が座っていて、かっこいいです。みんなのおかげでできていることに感謝して。展示は4/21までやっています(木〜日の13:00〜19:00)たまにいけない日があるのですが、なるべくいたいと思っていますのでぜひ遊びにきてください。伊藤悠

p.s. noteを書くことになったこの時間、祖母がなくなって今新幹線で向かってます。おばあちゃんは、いつも応援してくれた人で感受性の塊のような人だった。おばあちゃんに伝えるつもりで書いてみようと思った。巡り合わせに感謝です

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