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布施琳太郎くんについて

「一枚の絵の力」みえないものを可視化することはできるのか?その方法としても、絵という技法は機能してきたと思う。
布施くんの作品は、会ったことがない人のセルフィーを描いたもの。ただし、自分の予測や想定できない化学反応によりその輪郭は崩れている。twitterでも、先日、#見ないで描く タグが流れていたが、現在私たちは会ったこともない人の存在をSNSを通じて勝手に知ったつもりでいるがその輪郭を思い出そうとしても朧げなものしか捕まえきれない。
そもそも新型コロナという存在についても、あるであろうそれをみることもできないしその存在を捕まえることはできない。
奇しくも、布施くんの描いた無名な誰かのポートレートは、いっそコロナの形(であろうもの)を彷彿とさせる。(描いたのは1年前であるが)
今、布施くんは、ウェブページを会場とした展覧会『隔離式濃厚接触室』を開催中だ。「1人ずつしかアクセスできないウェブページ」なので、自分がアクセスしたタイミングで誰かが入っていたら、アクセスすることができない。つまり、みえない誰かの存在を感じることになる。
https://rintarofuse.com/covid19.html
入った時の、自分しかみられていない風景を体験するというのは、絵画体験にも近いものを感じ、布施くんの絵をみるという体験と、このウェブページ自体を感じる体験を、あわせて感じていただけたら話をしてみたいです。

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Name:布施琳太郎 Rintaro Fuse
Title:Retina Painting
Size:53×45.5cm
Material:木製パネルにスプレーペイント
Date:2019

これは会ったことのない人のInstagramのアカウントに投稿されていたセルフィーを描いた絵画です。様々な化学的な特性を持つスプレーを同時に用いて描くことで、顔のイメージは溶けて崩れてしまっています。しかし今日の社会において人と人が出会うことのリアリティを、こうして崩れながらも、確かに描かれた顔を通して結晶化すること意図して制作を行いました。

布施琳太郎 Rintaro Fuse
アーティスト。東京藝術大学美術学部絵画科(油画)を卒業後、同大学大学院映像研究科後期博士課程(映像メディア学)に在籍。スプレーを用いた絵画やインスタレーションの制作と並行して、展覧会の企画やキュレーション、そしてテキストの執筆など多様な活動を展開。主な展覧会企画、キュレーションに『iphone mural(iPhoneの洞窟壁画)』(BLOCK HOUSE, 2016)、『The Walking Eye』(横浜赤レンガ倉庫一号館, 2019)、『余白/Marginalia』(SNOW Contemporary, 2020)など。
https://oil.bijutsutecho.com/works/751/1100002657

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