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永田康祐くんについて

「一枚の絵の力」かつて絵には、字と図の関係があった。かつて写真には、鏡なのか窓なのかという議論があった。はしょるけども、セザンヌ、ピカソ、ポロック、ステラときて、今、永田くんの絵をみて、iphone時代の絵とは何か?何がありうるか?と思う
彼らは生まれたときからデジタルネイティブなので、画面の粒子や光がなじんだ絵の構成要素だ。今回の永田くんの絵はiPhoneのバグを筆致のように使い、字も図も溶けだし一枚の絵にまさになった。すでにiPhoneをもつ手もiPhoneと一体化している。
左手の親指は二本になっているし、右手にいたっては画面の向こう側に入りこんでいる。
いまや向こうもこちらも字も図もなく、すべてが表面的artificialでありiPhoneの画面のようにツルッとして、しかしそこには底なし沼のような世界があり、どっぷりハマった。(さらには、カメラのこちら側もあちら側も、編集作業さえない)今のコロナ時代の絵だと思った。

永田康祐


Name:永田康祐 Kosuke Nagata
Title: Postproduction
Size:60x60cm
Material: Inkjet print
Date: 2018
courtesy of ANOMALY


写真作品《ポストプロダクション》は、写真編集ソフト内のデジタルカメラを遠隔操作する機能を用いて撮影されています。写真の中には、作家が自身の背後にあるデジタルカメラのシャッターをトラックパッドをクリックすることによって切る瞬間が写っています。また作品には、写真内のゴミなどを自動的に取り除く写真編集ソフトの「スポット修復ブラシツール」が過剰に用いられていますが、そのアルゴリズムは実際の被写体とモニター内の写真を区別できないため、被写体の枠が溶け出し、全てが渾然一体となっています。前景と後景が複雑に入り組み、自動化した編集ツールの処理自体を鑑賞者に考えるよう仕向けています。「ポストプロダクション」とは映像写真作品の撮影後の作業全般を指しますが、本作では撮影と編集が同一のソフトウェアで行なわれ、両者の境界はほとんどありません。(NTT InterCommunication Center 作品キャプションより抜粋)


永田康祐 Kosuke Nagata
1990年愛知県生まれ。社会制度やメディア技術、知覚システムといった人間が物事を認識する基礎となっている要素に着目し、あるものを他のものから区別するプロセスに伴う曖昧さについてあつかった作品を制作している。主な展覧会に『あいちトリエンナーレ2019:情の時代』(愛知県美術館、2019)、『オープンスペース2018:イン・トランジション』(NTTインターコミュニケーションセンター、2018)、『第10回恵比寿映像祭:インヴィジブル』(東京都写真美術館、2018)などがある。また、主なテキストとして「Photoshop以降の写真作品:「写真装置」のソフトウェアについて」(『インスタグラムと現代視覚文化論』所収、2018)など。
https://oil.bijutsutecho.com/works/751/1100002616

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