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「死国」を読んで

はじめまして、ハルカです。

前回の投稿からかなり時間が空いてしまいましたが、今回は板東眞砂子さんの作品、「死国」を読みました。

私はホラーがとても好きなので、この記事を読まれた方にもこの小説やホラーに興味を持って頂けるように書きたいと思います。

~あらすじ~

20年ぶりに、故郷である高知の矢狗村を訪れた明神比奈子は、幼馴染みの莎代里が18年前に事故死していたことを知った。莎代里を黄泉の国から呼び戻すために母親の照子は「逆打ち(さかうち)」を行っていた。その後、比奈子は矢狗村で次々と起こる不可解な出来事に遭遇するという話。

この本の3つの魅力

①四国の民間信仰の一部に触れる

この本は、四国に昔から伝わる「逆打ち」という禁忌を元にストーリーが展開されています。

「逆打ち」とは、空海にゆかりのある四国の寺88ヶ所を巡礼するお遍路において、反時計回りに巡ることです(コトバンクから引用)。

日本は各地に様々な伝承や古くから伝わる儀式が存在するため、そういった民俗学的な分野に興味がある方はより面白いと感じるのではないかと思います。

②終始つきまとう不気味さ

この話は何人もの人に視点が移り変わりながら進んでいきます。

それは、ある男性の逆打ちやある老婆の日常にふと感じる気配や過去の出来事など様々ですが、ここからどう繋がっていくのかが読者をより物語に引きつける要因の1つだと感じます。


③自分の甲羅から一歩を踏み出す

小学生の頃の比奈子は、自分の感情をどう表現したらいいかが分からず、友人の莎代里に付いてばかりで積極的に行動したり発言をすることはありませんでした。

そのまま大人になった比奈子は、そんな今までの自分を変えようと昔から気になっていた文也に告白をします。

自分の身を守る甲羅から踏み出すことを決めた比奈子が後に遭遇する様々な出来事にどう立ち向かい、自分の道を切り開いていくのかも見どころだと思います。

~感想~

私は、今回のような日本の古くから伝わる伝統や儀式などに興味があったので、そういったものが作り出す不気味さや理不尽な恐怖は日本のホラーらしくて面白いと思いました。

また、この作品は何人かの視点から書かれているため意外と登場人物が多く、私は長い時間をかけて読んだので、途中から再び読み始める際に誰か分からなくなってしまったことがありました。

なので、これから読まれる方には、なるべく一気に読む事をおすすめします。

冒頭でも書いた様に、私はホラーが大好きなのでこの作品を読んだのですが、私が期待していたよりは恐怖感は無く終始不気味さがあるといった感じです。

話のラストは、予想していたものとは違い矢狗村から生まれた元凶やその恐怖がこのまま続くような形の最後だったので、それには絶望を感じました。

そして、人によって解釈は異なると思いますが私は、ほとんどの人、いや全員といって良いほど幸せな終わり方をした登場人物はいないのではないかと思います。

ここからはネタバレになってしまいますが、莎代里の父が死国から現れた莎代里を必死の思いで連れ戻したにも関わらず、最終的に文也は莎代里に連れていかれます。

私には、まずそこが??だったのですが、連れていかれた文也は穏やかな顔をしていた、と本文には書かれていました。

文也は今後莎代里からの視線を感じながら生きていかなければならないと覚悟を決め、比奈子と人生を歩もうとしますが、身体か心かを支配され連れていかれました。

文也を連れていった莎代里は幸せになれたのかもしれませんが、文也にとっても、比奈子にとっても、莎代里が死国に戻されたことにより、彼女を生き返えらせることが出来なかった彼女の母親、照子にとっても、誰も幸せになれない最後であったため、煮え切らないような気持ちになりました。


話の序盤に、私が引き込まれる様な表現があったのですが、何度読み直しても思い出せず付箋を付けかったことを非常に後悔しております。笑

余談ですが、ただいま福永武彦さんの、「草の花」を読んでおります。読み終わり次第、また記事を書こうと思います。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。





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