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「草の花」を読んで

はじめまして、ハルカです。

今回は福永武彦さんの作品、「草の花」を読みました。

この本を読もうと思ったきっかけが、私が受験生の頃に使っていたテキストにこの話の一部が載っており、続きが気になったからです。

文章中に何度か難しい表現があり、理解するのに苦労することもありましたが、面白くてすぐに読み終えてしまいました。

この作品の魅力や感じたことを書きました。読んで頂けると幸いです。

~あらすじ~

私がサナトリウムで出会った汐見茂思(しげみしげし)は、どんな時も、症状の診断結果が悪くてもまるで人ごとのような落ち着きだった。そんな彼が、自殺行為とも言える手術を自ら受け、帰らぬ人となる。彼から渡された二冊のノートから彼の孤独さの原因や、私と出会うまでの人生を知ることになる。

この本の3つの魅力

①汐見のもつ強靱さ

汐見は孤独でしたが、神を信じることで孤独さから逃れようとはせず、自分の生きたいように、後悔のないように自分の人生を選択していました。

彼は、孤独は弱さでは無く、自身を支える強さと捉えていました。なぜそう考えるに至ったのか、孤独がどう汐見を強靱にさせてきたのか、そういった所に注目して頂きたいです。

②青春

汐見は、人生で二人の人間を愛しました。

一人は、学生時代の同級生の藤木忍という男性に友情としての愛を注ぎ、二人目は藤木の妹である千枝子に恋愛感情としての愛を注ぎました。

子供の頃に母親を亡くし、父親を空襲で亡くしたため、愛情をほとんど受けずに育った汐見は、愛というものを自分の中で模索しながら必死に自分の想いを伝えます。

③汐見の最期

文章の序盤で汐見は手術中に亡くなってしまいます。「私」は自殺だったのではないかと不安になっており、私自身も文中にあったように、本当に将来の医療に役立てたいがための手術の申し出なのか疑問に思っていました。

しかし、文章を最後まで読むと、汐見は本当は自殺するために無謀な手術に挑んだのか、それとも別の思いがあったのかなど様々な要因を考えてしまいます。

読者よって捉え方は異なると思いますが、これから読まれる方には注目して頂きたい部分です。

~感想~

この本を読んでいて印象的だった所は、汐見の先輩である春日の「靱(つよ)く人を愛することは自分の孤独を賭けることだ。」です。

たとえその人を愛したとしても、その人は自分を愛してはくれないかもしれません。そこで傷つくかもしれませんが、そうやって孤独は鍛えられ成長する、と春日は汐見に伝えており、汐見は納得しています。

恐らく、汐見は人を愛することで孤独さを紛らわすのでは無く、孤独をアイデンティティの1つとして取り入れたのではないかと思います。

また、汐見は生きるということは、「理性も感情も知識も情熱も全てが燃えたぎって満ちあふれている状態」と述べており、戦争を反対もせず受け入れた日本人キリスト教徒や、本心を偽って出征を喜ぶ人々を馬鹿げていると言っています。

だから、彼は人を愛することを恐れず、仲間や愛する人に対してしっかりと自分の考えを伝え、少しでも後悔の無いように生きている所が真っ直ぐで、でも不器用で、この物語の登場人物の中では1番輝いていたと思います。

汐見の同級生、藤木の妹である千枝子は、汐見の死の知らせの手紙の返事に、「汐見さんは不幸なかたでした。」とありましたが、私はそう思いません。

愛した人とは一緒にはなれませんでしたが、彼は自分の生きたいように生きました。

そして、愛されたことがほとんどと言って良いほど無いにも関わらず、愛を知ろうと努力し、いつでも全力で想いを伝えていた所や、病気で将来が見えない中、どうやって今を生きていくか必死に考えている所に、少し悲しくなります。

この作品を読んで、孤独は悪いことばかりではなく、自分を強くするチャンスだとも考えられると学びました。

そして、孤独を強くするのは人を愛することだけでなく、自分の中で喜びが溢れたり、夢中になるような物事でも可能だと考えます。

私も友人は少なく、人との関わりがほとんど無いような生活をしており、時折孤独を感じることもありますが、汐見のように自分の想いはきちんと相手に伝えることや、本心を偽り考える事を放棄せず自分の意思を持つこと、夢中になれるものを持っておくことなどが大切なように思います。

そして、私は今生きていて、自分の道を自分で選択しなければならないことを自覚し、後悔の無いように生きていこうと思います。

余談ですが、私がテキストで見たのは280頁の後半から284頁の真ん中辺りです。私は280頁の最後の一節に惹かれて読む事を決めました。読むまでに何度もストーリーを予想しましたが、かすりもせず。笑

難しい表現が何度か出てきたので、読み返すことも多々ありましたが、非常に読み甲斐のある興味深い内容でした。

ストーリ展開は、夏目漱石さんの「こころ」と似ていると感じました。

今回、福永武彦さんの作品を読むのは初めてでしたが、面白かったので他の作品も読んでみようと思います。

感想がとても長くなってしまい申し訳ありません。皆さんが少しでも興味を持って頂けたら幸いです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。



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