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ポテチと腹筋

花野
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ケノヒさんが書いた小話(頭おかしい)を演じてみました。


(リビングに妻と夫。テレビを見ている。妻はポテトチップスを食っている。一方夫は、テーブルの上で腹筋している)

妻:ねえ、あなた。カエルとってきてよ、カ・エ・ル。私のこと、愛してるんでしょ、ならとれるわよね?
夫:ふん、ふん、ふん、ふん。
妻:ねえ、聞いてる? ボリリィ、聞いてる?
夫:ふん、ふん、ふん、ふん。なんだ奥の様よ。私は今、フン――ふ、きんで忙しいんだ。
妻:カエル。
夫:ふん、ふん、カエル、ふん?
妻:ああ、もう、バリリィ、バリリィ! アア、見て。ねえ、小学生がカエルを――塩が、おいしい!
夫:(腹筋を辞めて、自分のおなかをみながら)どうにかしてここの肉をそぎ落としたいんだが……。
妻:それで、ねえ、聞いてるの? あなた、さっきからどこで腹筋しているのよ。テーブルが壊れるからやめてくれない? あ、ほら、汗。汗がテーブルの上にべったりだわ。
夫:なんだって? 一度に多くの質問をするな。
妻:だーかーらー、腹筋! いや、カエルも――テーブル? あれ……
夫:なんだ、自分でも分かってないんじゃないか。これだから最近の若者は……ふん、ふん、ふん、ふん(腹筋を始める)
妻:はあ、私の最愛の夫は、いつまでたっても腹筋を辞めてくれないわ。これだけ私が嘆願しているというのに、夫は、いつになったらお聞きくださるのかしら。昔はよかったわ。私が「暑い」と言えば、自分のTシャツを脱いで、私の顔の上で絞って水分をとらせてくれた。私が「寒い」と言えば、すぐさまシャベルを持ってきて、土をかけてくれた。――ああ、こんなにできた男はいないと昔は思っていたのに。どうしてなのかしら。
夫:ふん、ふん、ふん、ふん。
妻:……ねえ、離婚しましょ。
夫:ふんと。(沈黙。2秒後、腹筋を辞めて飛び起きる)え!? どうしてだい?
妻:そういう気分なんですもの。
夫:わ、わたしの何がいけなかったと言うんだ。
妻:そういうわけじゃないの。あなたが、私のお願いごとをきいてくれないことなんて、全然問題じゃないわ。
夫:じゃあ何が――
妻:全然問題じゃないわ。
夫:え? じゃあ何が問題――
妻:全然問題じゃないわ!
夫:え?
妻:あなたが、私のお願いごとを聞いてくださらないことなんて、些細な問題だわ。取るに足らない小事。私はね、そんなくだらないことで離婚を使用だなんて、決して思わないんだから!
夫:は? じゃあ、離婚しなくたっていいじゃないか!
妻:そうよ! その通りだわ!
夫:じゃあ、夫婦円満だ!
妻:その通り!
夫:お前を愛してる!
妻:愛してる!
夫:死ぬまでともに!
妻:一緒にいよう!
夫:ふん、ふん、ふん、ふん。
妻:ボリリィ、ボリリィ、ボリリィ、ボリリィ……(フェードアウト)

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