剣客商売第13巻 第1話 消えた女
秋山小兵衛が、千駄ヶ谷の松崎助右衛門宅を出たのは、午前10時・・・十二権現さまへ詣でようと思いついて、淀橋<ヨドバシ>へ足を向けた。
十二社権現の茶屋で酒菓を楽しみ、内藤新宿経由で帰ろうと、畑の道へ入ったところで、思いがけなく徳次郎が声をかけて来た(見張り中)。
見張られていた若いむすめは、小兵衛の記憶の中の女にそっくりだった。
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切絵図はお借りしています。出典:国会図書館デジタルコレクション
ではでは。机上ツアーにお付き合いいただけますよう。
地図(画像)
地図1 十二社権現
小兵衛は、➀松崎助右衛門宅の家を辞し、②十二社権現を参詣、内藤新宿(傘徳宅がある方向)へ向けて歩き出した③(現・新宿西口との示唆アリ)。
③傘屋の徳次郎が声をかけて来た(見張り中)。
地図2 永山同心・殺害さる
永山同心は、舅によばれ、深川で馳走になり、八丁堀へ帰宅。
途中、永代橋を渡り(当時の位置は⑦)、⑧湊橋を渡り、霊岸島へ入ったところで、出会い頭、怪しい浪人を誰何したところ、斬り殺された。
地図3 十二社権現前の茶屋
②淀橋の南、角筈村にある十二社権現社(祭神は紀州・熊野権現)。境内には大池があり、周りに茶店がある。
小兵衛は、十二社権現社を出て、内藤新宿の方向(東)へ畑の道を歩みはじめた(③現代の新宿西口)。
小兵衛は、新宿西口の地蔵堂(地図では不動尊、と思わる)から、嘉平を尾けて行く。おばあさんがやっている茶店は、境内ではなく<周辺>にあるようだ。本文中は・・
『右側は竹藪と木立、畑道。左側は武家屋敷の土塀がつづき、人通りもある。土塀が切れると、両側は雑木林で、権現社の杜がみえる。老婆の茶店は道の右側にある。茶店の裏手へまわるには、雑木林の小道を右へ入る。そこは畑道になっていて、つづいている』とのこと。
さて、こちらの地図とは整合性があるが、突き合わせてみると、京極飛騨上下屋敷から、十二社権現までは距離がある。ト・・堂々巡り。
嘉平は、十二社道をおばあさんがやっている茶屋へ向っている。寅松は、十二社権現近くの道を帰って行ったのだろう。・・・という風に詳細に動きが記載され、小兵衛は嘉平について行き、茶屋の裏手で嘉平を襲った浪人を捕らえようとするが、浪人は通りがかりの暴れ馬に蹴り殺されてしまう。
囮の娘は、駕籠を使った4人の暴漢に襲われるも、捕り方たちが守った。
参考…青山絵図の十二社権現(熊野権現)。
地図データ
地図のもとにした情報です、剣客商売(文庫)
参照した本文の抜書で、『51)』等は、文庫本のページ数です。
十二社権現
7)秋山小兵衛が➀千駄ヶ谷の松崎助右衛門宅(下の地図の左下)を出たのは四ツをまわっていた。
8)外へ出た途端、②十二社の権現さまへ詣ろう、と思いついて、淀橋へ足を向けた。
②淀橋の南、角筈村にある十二社権現社の祭神は紀州・熊野権現と同じ。境内には大池があり、池畔の茶店へ入り、酒を飲み・蕨餅を食べた。
9)内藤新宿の方向(東)へ畑の道を歩みはじめた(③現代の新宿西口)。
※十二社権現には、大きな池が書き込まれている。
囮の女
畑道が大きな竹藪の西側をまわっている。声をかけられた。
「や、徳次郎か」
10)「へえ、囮を仕掛けておりますんで・・・」
四谷の弥七は、竹藪の中にいた。
11)「囮はどこなのじゃ?」
弥七が指し示したのは、竹藪の向う側の小さな家であった。
木端葺の、まるで物置小屋のような、その家の裏手がよく見えた。
その家の向うに、もう一つ、これは瓦屋根の、御堂のようなものが見えた。
「地蔵堂でございますよ」
12)裏の戸が開き、娘がでてきた。 <小兵衛は驚く>
13)「あの娘が、囮なのか」・・・(似ている、そっくりだ)
14)井戸端に出て来た小娘は、約二十年前に、小兵衛の家ではたらいていた下女のおたみに生き写しであった。<小兵衛は竹藪にとどまる>
22)「その浪人とは、いったい何者なのじゃ?」
「あの娘の父親なんでございます」
「永山の旦那を殺めたので・・・」
5日前(永山同心殺害)
23)五日前のこと。永山精之助は、⑤深川・佐賀町の〔味噌問屋・越後屋万吉〕に呼ばれ、⑥富岡八幡宮門前の料理屋〔九竹〕で馳走になった。
<越後屋万吉は、永山の妻の父=舅>
⑦永代橋を西へわたりきった永山同心は、しばらく行って、⑧湊橋(みなとばし)を左へわたった。
この辺りは埋立地で⑨「霊岸島」とよばれている。塩や酒、乾物の問屋が軒を連ねている。
24)闇の中から黒い影が二つ。永山同心は役目柄捨ててはおけぬ。
二人のうちの一人の腕を掴むと、別の男が振り向いて斬りつけた。
密告
26)岩戸の繁蔵からの密告「殺した野郎は、山口為五郎ですぜ」
別の男から頼まれたのだという。
29)「いま、山口為五郎は自分の娘のおみつの行方を探している。おれは、おみつの居所を山口に知らせるから、そこをはりこんでいれば必ず、山口は姿を見せる」
31)「あの家には、嘉平という老爺がおります。向う③地蔵堂の堂守をしております」
32)徳「いま、婆さんがひとり、③地蔵堂のほうから、家の中へ入って行きました」
「婆さんが出たぜ」
「安が尾けて行った」
徳次郎は表口を見張りに出て行った。
34)裏口から老爺があらわれた。小兵衛は弥七をとどめ、
「よし、わしにまかせておけ」
35)小兵衛と入れ違いに、寅松があらわれ
④「②十二社権現の近くの茶店の婆さんでござんした」
36)その④老婆の茶店の前を、先刻、②十二社権現を出た秋山小兵衛も通りすぎている。
そこは⑩柏木の成子町からの②十二社権現へ通じている道。
寅松は別の小道を入って来たので、嘉平と小兵衛の姿を見かけなかった。
堂守の嘉平は、②十二社の道を権現社へ向っている。
右側は竹藪と木立、畑道。左側は武家屋敷の土塀がつづき、人通りもある。土塀が切れると、両側は雑木林で、権現社の杜がみえる。老婆の茶店は道の右側にある。
堂守の嘉平は、雑木林の小道を右へ入った。茶店の裏手へまわるつもり。畑道へ出た嘉平に声をかけたのは、浪人であった。嘉平は斬られながらも、身をひるがえして逃げた。
そのころ、堂守の家へ一挺の駕籠が着いた。駕籠舁きもあわせて四人が家の戸を蹴破って、おみつを引き摺り出した。
捕方たちが一斉に飛びかかった。・・・
後日談 略
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