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「具体⇄抽象」トレーニング(1/100)

将来を見据え、ビジネス書を中心に先輩方の知恵を漁ろうと思い、始めに前から気になっていたこの本を手に取った。

仕事において、問題の本質を見抜いたり、メモの魔力の著者である前田さんのように新しいアイデアを生んだりするのに、抽象化力は重要なスキルだと思っていた。また、先輩で巧妙な喩え話をする人がいて、その人に比べて物事の共通点を見つけたり、そこから新しい具体例を想起したりするのが苦手だなと思っていたので、こうした考え方の一端でも知れればと思う。

本書の構成は以下の目次にあるように大きく3つに分かれる。
読んで気づいたのは、自分は抽象化だけでなく、具体化も苦手なのだということ…つまりどっちもできていなかった(悲しいぜ…設計のコンセプトづくりに欠かせない抽象力が必要な建築学科にいたのにな(一応))。

では、本書の中身を簡単に説明したいと思う。

①なぜ具体と抽象が重要か

筆者は、これまでも具体と抽象のスキルは重要だったがこれからより一層重要になると綴っている。それはなぜか…そう、あの「AI」である。(ここでもAIかよ)

工業社会の終焉後、長らく人の環境は知識社会であったが、AIによってそれが終了したと述べており、今後知識が必要な仕事は基本的にAIに置き換わる。
そのため、知識から関係性や構造を見つける抽象化のスキル、そこから新しい具体的な発想を作る具体化のスキルが人には重要になるとのこと。

また、日本人は特に学校のテストを中心に暗記力が求められる知識重視社会で育ったため、多くの人がこの能力を備えていない。だから仕事でもこういった考え方ができず、コミュニケーションが噛み合わなかったり、不満や疲弊ばかりのべてアクションをとらなかったりする人が多い。

かなり悲観的に述べるなぁと思ったが、著者曰く「具体・抽象のスキルは大人になってからでも具体抽象の階層が理解できる人であれば身につけることができる」らしい。
じゅあ、頑張っちゃうぞ!!!ってことで次からは具体、抽象って何なのかを説明したい。

②抽象化とは?具体化とは?

本書の構成上、抽象化の方が先に来ていたため、抽象化についてまとめたい。

抽象化とは?

本書では抽象化の説明を様々な視点で行っていたが、私が一番共感したのは、「抽象化とは全体、つまり事象の関係性を見ること」であった。確かに、二つの事象から共通点を見つけたり、因果関係を見つけたりする時に抽象化するって使っている気がした。「抽象化とはWhyを問うこと」や「抽象化とは捨てること」という側面も面白いと感じた。

具体化とは?

本書で一番心が動いた章である。「具体化とは数字と固有名詞にすること」これに尽きる。シンプルすぎるが、妙に納得した。あまり具体化ってどういうことかこれまで考えたことなかったけど、確かに数字と固有名詞だと思った。それと同時に「具体化とは逃げ道をなくすこと」という意味でもある。本書の事例として、実行計画を策定するときに、抽象的な表現で作ってしまうと評価や反省ができないことを挙げていて、あるあるだなぁと思ってしまった。自分も計画に数字がないことが多いので、計画を立てるときは特に具体化に気をつけたい。

具体と抽象との関係について

個別と全体など、具体と抽象の違いは多くあるが、「五感で感じられる実態」か「五感で感じられない概念」かという線引きに新鮮さがあった。サピエンス全史にもあるように人間の世界は概念でできている一方で、概念は高次元すぎると理解されづらい。だから抽象化のスキルを上げていけば、より面白い世界観を作れるのではと期待した。

また、問題発見の抽象と問題解決の具体の図は爽快だった。問題発見と解決は全く逆の発想で行わなければならない。発見はWhyの連続で、解決はHowの連続。図式化は非常にシンプルだが、明快でいいなと思った。


③具体・抽象の実践

最後は、理論的な話ではなく、実用的な話をしている。具体と抽象の行き来ができるとどんな世界観を持つことができるのか。

大部分は川上と川下、本社と現場などの視点の違いによるコミュニケションギャップや本質の捉え方が人によって異なる理由などを述べているが、自分が特に面白かったのは、「言葉とアナロジーへの応用」の章である。ここは本当に読み応えがあったし、読む前の目的である抽象化スキルの向上は、この部分だったなと思い出した。

言葉の定義では、対立軸を用いる方法を紹介している。本書では「行動」を例に上げ、具体的な事例を考え、「〇〇は行動だが、●●は行動でない」という文をいくつか作り、それらから共通点を次元を上げて捉えている。また、理系と文系の違いも対立構造をいくつか文章化し、抽象化する例を記載していた。抽象化が苦手な自分にとって、これは目から鱗だった!こんな簡単な方法があったのかと感動。これは今後多様していきたい。

また、アナロジーの応用では、目に見えない類似点を抽出する方法を紹介している。具体例として、年末に配られるカレンダーと自動車の座席の共通点を挙げており、これらは「実際にあまり使われていない」という特徴へ抽象化している。コツとしては、特殊性のある事例の特徴を考えると他の事例との類似点を見つけやすい。日常生活でも面白い事例を具体化し、他との類似点を見つけアナロジー思考を鍛えることを勧めており、自分も実践したいと思った。


以上、「具体⇄抽象トレーニング」についてまとめたが、概念説明と具体事例の両方が綴られていてわかりやすく、読みやすい本だった。抽象・具体の特徴を押さえた上で、今の状況は川上か川下か、実行計画を作るときは数字と固有名詞で、日常生活でアナロジー思考を鍛えることを意識していきたいと思う!

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