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エヴァンゲリオンとわたしの歩み

※シンエヴァのネタバレを含みます。

エヴァとの出会いは1996年だったと思われる。当時6歳のわたしは友達の家に遊びに来ていてた。夕方、友達のお姉ちゃんと一緒にテレビアニメを観た。それが新世紀エヴァンゲリオンだったと知るのは中学生になってからなのだけど。テレビに映っていたのは、よりによって第弍拾参話 涙だった。水槽に同じ顔の女の子がたくさんいて、その女の子たちの体がボロボロに崩れる。スイッチを押した女の人が、私は馬鹿だと自分を罵り、泣く。そのシーンが脳に焼き付いてずっと忘れられなかった。

中学入学のタイミングで父の転勤があり、引っ越しをした。まだ同小の知り合い同士で集まっているしばらくの間、わたしは教室でぽつんと独りだった。けれど入学式から数日後、わたしに声をかけてくれた女の子がいた。ONE PIECEの話で盛り上がり、友達になった。その子はアニメ・漫画をこよなく愛し、自分でも漫画を描いていた。布教にも熱心で、RAVE、幽☆遊☆白書、封神演義、烈火の炎等々のコミックを1日2冊ずつ借り、帰り道では知らないアニメの解説や考察を延々と聞かされる日々が続く。そのアニメのひとつが新世紀エヴァンゲリオンだった。ある日の帰り道、ふと、幼い頃トラウマになったあのアニメはもしや……と思うに至る。その後友達は、貞本エヴァのコミックをわたしに授けた。

高校に入学して軽音部に入った。当時BUMP OF CHICKENのコピバンがいくつかあり、アルエ(藤原基央が綾波レイをテーマに作曲したとされる)は盛んにコピーされていた。受験生の秋にヱヴァンゲリヲン新劇場版:序が公開されたものの映画館に足を運ぶことはなく、:破の公開前にDVDで観た。観ときゃよかった。

大学に入学し一人暮らしを始めてすぐ、以前から兆しがあった鬱やパニック障害が炸裂。希死念慮に取り憑かれた状態で観た新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にはひとつの救いだった。サードインパクト発動後に個体が液体化してすべての生命がLCLに還る。その映像が軽快な伴奏に暗い歌詞がのったKomm, süsser Tod〜甘き死よ、来たれ〜とともに流れるのを観ていると、わたしはホッとした。登場人物の彼ら彼女らのことを思うと胸が引き裂かれそうだったけれど、そう感じる心とは別の部分で安心感を得ていた。でもシンジくんは結局、その安心を選ばない。

:破:Qは劇場で観ることができた。新しいエヴァをリアルタイムで追えることが嬉しかった。考察に勤しむのが楽しかった。次作を待つ苦しみを味わった。

そして2021年3月8日、月曜日。9年前に:Qを観た映画館と同じ映画館へ、シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇を観に行った。観終えたときに自分がどうなっちゃってるのか全く予想がつかない、一度きりの初見。

結論から言うと、わたしはエンドロールが流れる中、小さく肩を揺らして少しだけ踊った。

たくさんの情報に殴られた。シンジくんはやはり自己と他者の存在する世界を選んだ。晴れやかなエンディングに心が追いつかない。素晴らしかった。でも、エヴァが無い世界に放り投げ出されてしまった。感情が極限まで高まった状態で、主題歌のOne Last Kissが終わる。すると、Beautiful Worldのリミックスが流れ始めた。驚く。エンドロールには「Beautiful World(Da Capo Version)」宇多田ヒカル、と映し出されている。このDa Capo Versionがとにかくカッコ良くて、膨れ上がった感情を一度手放して今この瞬間の音楽に体をあずけることができた。そして音楽が鳴り止みエンドロールが終わると、白地に黒字で終劇の二文字。こんな風にエヴァンゲリオンの終わりを見届けるとは思ってもみなかった。

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