21世紀後半に向けた仮想現実

1.緒言

1.(1).背景

 2024年現在、"メタバース" という用語が日本社会に認知され始めて久しく、XR(VR/AR/MR等)やメタバースを主題とした学会、展示会もその数を増やしつつある。
 従来、一部の者、軍事や産業、および好事家、いわゆるマニアやオタクと呼ばれてきた一部の者達を中心とした先端技術だった所からの一般化、その黎明期から普及期の過渡にあるといえよう。
 そんな中、2023/12/18、最古のVtuberであるバーチャル美少女ねむ氏(@nemchan_nel)より、note投稿企画「仮想現実での生き方」が提案された。
 ■企画記事
  https://note.com/nemchan_nel/n/n4fc9c864765b
 ■企画の案内
  https://twitter.com/nemchan_nel/status/1736580731701514713

1.(2).課題

 現在普段使いしている層は、未だ多数派ではなく少数派であり、この少数派の現在は、多数派の未来の一つと言えよう。
 だが、多数派が普通に使う時代には、大なり小なり新たな要素も加わってくる。
 将来について書かれた多数の先行記事、動画配信をこれまで見てきた中で、一般傾向として感じて来た事に次のような点が挙げられる。
・課題① 時代変化の探り方
 今ある状態の延長線上に将来が予測されている。
・課題② 局所と全体
 VRChatに代表されるHMDを使ったエンターテイメントとしての側面に重点が置かれている。

1.(3).目的

 既存の進め方が誤りだとは考えない。少なくとも、それが主流ではある。
 ここに、非主流のものを持ち込んでみたいと思った。
 その後の変化が、楽しみである。

1.(4).方針

 なお、本記事では、一部用語については、厳密性よりも日本での一般理解を優先する事がある。
 例としては、"CIS"、"旧ソビエト地域"、"旧ソ地域" を同義で扱っている事。
 厳密には、異なるものであるが、記事の本旨に大きな影響はなかろう。

1.(5).方法

 いわゆるバックキャスト的手法を用いる事とした。
 最初に時間的・地理的・分野的に遠い世界を仮定し、近い変化は中継点を後から検討、段階的詳細化を行っている。 

1.(6).妥当性

 査読に代表される特段の妥当性検証は、行っていない。
 記載された内容で出所の提示があるものに対する出所との厳密な同一性、考察の妥当性は、これを保証しない。
 疑問を感じた方は、各自で確認して欲しい。

2.新時代と仮想現実

2.(1).2080年までに予想される出来事

 予想される大きな出来事を、fig1にまとめた。
 横軸に時間をとり、縦で地域を分けている。
 こちらは、先行する研究等によって既に予期されている大きな出来事を黒字で記載、既知の情報を元に私自身で起きると考えた事を青字で記載した。
 "▲" で書き始めているものは、起きる時期の予想範囲が狭い場合を、楕円で範囲を示しているものは、起きる時期の予想範囲が広い場合を示している。

fig.1

2.(2).分岐点となる出来事

 時代区分が大きく二つあると考える。

 ひとつは、2040年前後。
 ここは、ウクライナ戦争に伴う戦後不況(主に旧ソビエト地域と欧州)に、日本の南海トラフ地震・首都直下型地震(日米)、構造不況と公害・自然災害の複合化(中国)、これらが世界的に重なってしまった時代である。
 戦後不況と震災については、各所で予期されているので詳細は割愛する。
 不動産バブル崩壊に代表される中国の構造不況も既に始まっているので割愛する。
 公害・自然災害増加(中国)は、先日公表された資料(※5)に基づく予測となる。
 資料では、産業振興する一方、防災と建築を抑制する政策が今後5年間の基礎となる事が示されており、過去の大躍進政策などとの類似性から同様の事態が発生すると考えた。
 実際、既にレアメタル鉱山で公害が起きたり、全国的に謎の肺炎が流行しだしている。
 ただし、近年の中国では、同様の傾向が無くなったわけではないものの軌道修正も確認出来る為、大躍進政策ほど大きな悲劇とはなるまい。

 もう一つの時代は、2070年前後である。
 ここは、温暖化に伴う漁場・植生のシフトも落ち着いており、経済も回復を始めた状態である。

2.(3).①2040年前後:移動制限への対抗

 covid-19下と同様に、移動制限がある中である事を想定した。
 戦争の傷跡、自然災害の多発、これらが、世界的に数年の時差を置いて複合的に発生する中で、地理的距離が現在と変わらないにも関わらず現地へ行く事が今以上に難しくなる事を予想する。

 これは、covid-19下と同様にオンライン対応の価値が重要性を増し、VR活用の追い風となる可能性を示唆している。
 災害の予想・対策・訓練を行う手段としての価値上昇も予期される。

 同時に、2010-2020年代に開発されたVR-SNSが、中国、CIS(≒旧ソ連地域)、インド・アフリカでも、普及を始めているのではないだろうか。
 2023年12月現在、Steam利用者の言語比率では、英語36.9%、簡体字中国語25.3%、ロシア語9.4%、日本語2.5%に対し、2023年に発表された、Nem x Milaの研究発表(※7, ※8)においては、日米欧ユーザが中心となっている。
 Steamの言語利用比率から、潜在的ユーザとして中国語話者、ロシア語話者が相当数いても驚くには値しない。
 これらの地域では、A.VR-SNSユーザが調査数字に反映されていいない可能性、B.本当にVR-SNS利用が進んでいない可能性、いずれも予期されるものであるが、いずれにせよ、将来的には、日米欧のコミュニティーと統合されてゆくであろう。

 この統合(ないしは交流の活発化)、及び普及を、fig.1の様に2030年~2040年前後と考えた。
 各地域の時期は、文献5を含む様々な資料を材料に、個人的に予想したものである。
 VR-SNS新興地域での利用形態は、2020年代の日米欧における利用形態から遠く離れないながらも、各地域や時代の流行を一定程度取り入れたものとなるのではないだろうか。
 Nem x Milaの研究発表(※7, ※8)でも、日本と欧州での文化の相違、例えばホームパーティの在り方の違いなどが、VR-SNS上での生活にも相違点としてみてとれた。

2.(4).②2070年前後:地理的・時間的距離の拡大

 軌道上や月など宇宙へ民間人の進出が始まる事、2030年以前とは、自然環境が変わってしまって懐かしむ声がある事を想定した。
 VRを構成する技術としては、普及製品でも脳波制御(BMI)併用のHMDが登場していると考える。
 地上どうしよりも地理的に離れた所に居る相手とのコミュニケーション、過去にしか存在しない自然や都市風景を求める、そういった事が、仮想世界へと大衆を駆る動機として地位を増しているだろう。

3.結言

 VR-SNSというべきか、メタバースというべきか、これを支える技術と生み出される文化は、未だ発展途上にある。
 これは、日米欧においてはもちろん、その他の地域においては、まだこれから普及が始まる事も背景にある。
 当面は、VR-SNS普及で先行している日米欧の模倣から始まるであろうが、2030-2040年頃を転機に局所独自性を帯びつつ、2070年頃には、全体が新たな方向性を持ち始めるのではないかと思われる。

4.参考・引用

 本記事の執筆にあたって参考にしたり引用させていただいた資料を、以下に列挙する。順不同である。

※1 : "緒言って何??何を書けばいいの??背景とか はじめに とか要旨とか概要とは違うの!?", 2019,02,19, データ化学工学研究室, 2024/01/20閲覧
※2 : "防災情報", 2024/01/20, 国土交通省 気象庁, 2024/01/20閲覧
※3 : "2050年 自動車はこうなる", 2017/05/20, 日本自動車技術会
※4 : "アルテミス計画 いま再びの月へ", (公開日不明), JAXA, 2024/01/20閲覧
※5 : "《产业结构调整指导目录(2024年本)》"(2024年版産業構造調整指導目録), 2023/12/27, 中華人民共和国 国家発展改革委員会
※6 : "IPCC第6次評価報告書(AR6)", R3/08/09, 国土交通省 気象庁
※7 : "ソーシャルVRライフスタイル調査2023", 2023/11/06, バーチャル美少女ねむ
※8 : "【LIVE】「ソーシャルVRライフスタイル調査2023」調査報告会【Nem x Mila】", 2023/11/26, Nem x Mila
※9 : 2023年12月のSteam利用者言語比率, (発表日時不明), 米国Valve社, 2024/01/20確認

5.変更履歴

△0 : 2024/01/20 初版公表
△1 : 2024/01/21 誤記修正,ハッシュタグ( #VRライフスタイル調査 ) 追加トライ



サポートって何のことかまだよくわかっていません。 Youtubeで言う所のスパチャの様なものの事でしょうか???(汗)