【映画感想】言の葉の庭

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入野自由は年上女子を好きになる男の子を演じるのがうまいなぁ。

”文学少女”シリーズの印象もあってか、入野自由の演ずる男子はどうも年上女子に弱いイメージがする。どこかセンシティブな部分を声のトーンににじませた男子が、年上女子にとってはそれがどうにも弱いんじゃないかと思わせてしまう。

女は隙のある男に弱いんである。

10代ぐらいだと、異性にめちゃめちゃ完璧さを求める割合が多いんですよね。(私調べ)

年齢を重ねた、ないしは経験を重ねたある瞬間に、弱さを見せる男にぐっとくるようになるんじゃないかと思うわけです。年上女子から見たら、15歳で危うい少年が、なんだかよくわからないけど、夢を叶えるためにバイトやら、試行錯誤しながら何かを作り上げようとする。

ただそこには情熱だけが燃えさかっているわけでもなくて、うまくやれない、大人じゃないからままならないという部分も見え隠れして、全体的に少し弱ってる印象がつきまとう訳なんです。

本作ではそれが「隙」となって全編見え隠れするんですよね。その隙が、じつは女性の心をぐっと掴んじゃう。何もかも兼ね備えた男の余裕もいいんですが、危うさというのも心惹かれる重要な要因になります。

序盤の雨の日の突然の出会い(新宿御苑の東屋でなぜか同じ時間を過ごすって普通はいたたまれない気がします!)でも、すっと彼女のテリトリーに入り込んでしまうところが、なんだか不思議ですね。

無駄な間のない新海監督の代表作の一つ

物語において「間」ってすごい重要な要素なんですよね。

ただついついだらだら空けてしまう間っていうのもあるのは事実。この作品は本当に無駄な間がない。台詞も少ないし、設定も見え隠れする程度でちゃんと語られない。たとえば、ヒロインのファウンデーションをおとして粉々になったモノを見て泣き出すシーンや、主人公の保護者らしい保護者がいない(機能不全を起こしている)ことなど、エピソードが最低限で積み上がってラストに決壊していく様は本当に素敵としか言いようがないです。

語られないからこそ、見終わったあとどこかで考えてしまう。

それぞれの背景をあまり語っていないということが、この物語を際立たせている要素じゃないかと思うんです。

たとえばどちらともちゃんと相手の名前を知らないこと。

なぜ靴職人になりたいとおもったのか。

ヒロインの前の恋は一体どういうものだったの?

などなど、この短い映像作品のなかでは匂わしてちゃんと語られていない箇所がエンディング含めて多多あります。それがこの二人のその後の物語や背景について考え続けてしまうところじゃないかな。

余韻のある素敵な物語でした。

言の葉の庭 (2013)
2013年5月31日公開 45分 

監督・原作・脚本
新海誠
作画監督・キャラクターデザイン
土屋堅一

(声の出演)
入野自由
花澤香菜

1/300本 

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