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夢中という名の処方箋

普段何気なく日常を過ごしていると、
ふっと虚しい気持ちに苛まれる時がある。

なぜ自分は生きているのだろうか。
私は一体誰の役に立っているのだろうか。
私なんかいない方がいいのではないだろうか。
あと何十年と生きていかなきゃならないのか。

この思考は仕事で行き詰まってる時や思うように物事が進まない時だけではなく、幸せを感じている瞬間でさえ訪れる。

病むと言うよりは素朴な疑問に近い。
実際今死んだらどうなるのだろうかと思うけど、きっとどうにもならず日常は動いていく。

だから考えるだけ無駄なのだ。
でも思考はいつまでも付きまとってなかなか離れない。

そんな時に私が自発的にやることがある。

それが、夢中になることをすることだ。

音楽を聴いて自分の世界に入り込む。
映画や小説を見てそのシーンの中に入り込む。
料理をして作業の過程に入り込む。
可愛いものや綺麗なものを見て視界をそれでいっぱいにする。

入り込むと、自分が自分でいる感覚が鈍くなる。
自分がどこにいて、何をしていて、どんなことを思っているのかなんて、遠く遠く離れていってしまう。

自分の心と身体を意図的に引き剥がす感覚。

夢中になるということは、ある意味、理性や現実ばかりで生きていかないための処方箋なのではないかと思う。

理性を保って現実を真面目に生きることは、
想像以上に大変で苦しくて難しいことなのではないかと思う。

だからこそ人それぞれ夢中になれるものがたくさん転がっていて、その娯楽たちが生きることを和らげてくれる薬になっている。

夢中の中から帰ってくるタイミングは、現実を見すぎて凝り固まった理性や思考が柔らかくなり楽観的に考えられるようになった時。

それまでは時間をかけて手間をかけて、夢中の中に潜って自分を心から休ませてあげる。

そうやってこれからあと何十年とある人生を絶やさず繋げていけるんだろう。


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