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なんでフェミニズムと文学なのか

私は大学で文学とジェンダー・セクシュアリティ研究をしています。文学の中でも英文学、ジェンダー・セクシュアリティの中でも「フェミニズム」が中心です。この2つを合わせて学んでいます。詳しく言うなら文学の中の女性表象。

今回から「フェミニスト練習帳」というマガジンを始めます。なぜこの2つを勉強しているかを、最初のnoteには書きたいと思います。

なぜフェミニズム?

 フェミニズムとはそもそもなんぞや、というところから始めます。とはいえ私が語れるわけでも「正解」を知っているわけでもありません。高校生の時は「フェミニズム」という言葉さえ知りませんでした。ジェンダー・セクシュアリティ研究」というのは何分カタカナ語の多いところです。

フェミニズムは知らなかったけれど、学校や家族と接するうちに小さな「疑問」はホコリみたいに溜まっていました。なぜ、「制服は女子はスカート男子はズボンと決まっているのか」「親戚が集まったとき、女性だけ食事の準備をしなければならないのか」「学校行事で片付けがあるとき男子だけ駆り出されるのか」……。時々はこうしたことを理不尽だと思い、ある時は「女子だから片付けパスできてラッキー」なんて思っていました。怒りを覚えたことも、がっかりしたこともあります。でも深くは追及しませんでした。「なんで」を突き詰めると時に面倒になると諦めて、「こういうものだから」と自分を順応させる方がラクだったのです。それが私のサバイバル方法、というか単なる逃げです。怒りや落胆に蓋をして逃げたのです。

そうして大学に入ってから、「ジェンダー・セクシュアリティ研究」があると聞き、長年降り積もった疑問を学んでみようと思いました。ホコリの上を諦めて歩くのではなく、ちゃんと見てることにしました。

なぜ文学?

文学を専攻することは大学に入る時にもう決めていて、文学の授業ばかり取っていました。フランス、日本、イギリス、アメリカ、ドイツ等々色々。なぜこれほど文学に拘るのか……は、自分の中でまだ言語化できていません。ただ、私の性格が影響しているように思えます。とにかく何をするにもトロくて鈍臭く、多くの人ができることが出来ない。周りの人はそれが理解できないので怒る(私も何で出来ないのか分からない)。幼稚園の先生に「出来損ない」というニュアンスのことを言われた時、もう自分は何をしてもだめなんじゃなかいかと思いました。まだ4歳くらいだったけどね。

で、文学の中に出てくる人は能率が良くも器用でもない。なんでこうなんだろう、というどうにもならないもやもやをひたすら考えて、頭を抱えて、答えが出なかったり出てもまた悩んだり。その「うだうだ」が良かったんです。出来損ないなら出来損ないでいいから、私もずっと考えていたいと思いました。


2つを合わせて

小さい頃は読んでいるだけで楽しかった小説や映画。でも、実は「楽しいもの」や「美しいもの」に固定観念やジェンダー差が隠れていた……という、簡単に言うならそういう「気づき」を文学とジェンダー研究を合わせて学ぶ中でしました。それが面白い!ただ観ていたら気が付かなかったことが沢山散りばめられている!作者が意識的にしているであろう表現もあれば、無意識のうちに現れている価値観もあります。

そしてその価値観は現実と無関係ではないと思います。

現実と表象は常に不可分な関係にあり、現実世界が表象を生み、表象が現実に反映されていく。*

『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』という本で出てきた言葉。性別や人種の描かれ方は現実とリンクしている。それを読み解くことができるのは、「面白い」と同時に武器になることだとも思います。
文学、特に映画や写真はプロパガンダとして使われてきた歴史があります。映像と音楽の組み合わせにはとても心動かされるものがあり、メッセージを強烈に伝えることができる。どんな人種や性別の人が写真や映像に起用されるかは「たまたま女性に(男性に、白人にetc)なっただけ」なんて言われることもありますが、「偶然選ばれた」ということはないと思います。背景にその時代/文化の価値観や伝えたいことやあるいは市場があり、その上で選ばれ作られたもののはずです。「ジェンダー批評」はそれを読み解く一つのカギであるのだと思っています。

そして、観る側が批評することは作品自体にもその後の作品にも大切なのだと思います。

このnoteに何を書くのか

私はこのnoteと、マガジンをある人に向けて書いています。その人は私がジェンダー研究の勉強を始めたこと(とその他諸々)がきっかけとなりジェンダー研究やフェミニズムに興味を持ったのですが、何から始めたらよいのか分からないと言われました。私自身も勉強を始めたばかりだし、自分がいつも正しいなんて思っていませんが、自分が勉強してきたこと/していることや読んだ本について書いて伝えることはできるはず。このnoteを受けてその人と話せたら嬉しいし、考えていきたい。大学を卒業したから(授業がなくなったから)といって考えるのをやめることはないし、むしろこれから色々あるのだろうから。
だからマガジンのタイトルを「フェミニスト練習帳」にしました。

書くこととしては

○ジェンダー研究、フェミニズム関連の本紹介・レビュー

↑こんな感じ。ここで紹介した本はジェンダーに限ってませんが。


○映画・小説をジェンダーの観点から観た感想

こんなのとか。


○大学の授業・イベント・講演などを基に考えたこと
○その他もやもやすること

です。ツイッターなどでぱっと炎上して話題になり、すぐに消えて行ってしまうことを追いかけるのは好きではないので、時間がかかっても考えていることを書きます。あと、「私が答えを知っているから教える!」なんてことも思っていません。そもそも答えが出ないもやもやをずっと追っていく勉強なのだろうと思っています。でももちろん情報は確認してから書きますし、出典も載せます。

1週間に1回は更新予定です。



*山崎明子「妊婦表象は何を語るのか」『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』



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