SNS/少女たちの10日間

 

ドキュメンタリー映画『SNS 少女たちの10日間』を観に行った。2人の監督が「10代に見える大人の女性」を3人集め、10日間「少女のふり」をしながらSNSを運用してもらうという実験を行う。部屋のセットを作り、10代に見えるメイクを施すという徹底ぶりだ。写真入りプロフィールを公開するや、相次ぐ成人男性からのメッセージ。


これは、「SNS上の児童虐待」をテーマにしたドキュメンタリー映画。男性から届くほとんどのメッセージは性的なものだ。ビデオ通話をすれば「服を脱げ」「歳の差なんて関係ないよ」等々のことばが降ってくる。

最初は、男性たちに対し「恋愛したいなら同世代の人としろよ!」と怒りを覚えていた。だけど、観ているうちに段々と「これは単に恋愛をしたいのではないのかも」と思い始めた。映画の撮影にはちゃんとカウンセラーや性科学者も同席しており、適切なアドバイスをしている。科学者は「ペドフェリアとは言えない」という判断をしていた。恋愛感情というよりは、力のなさそうに見える相手を狙った暴力のように思えた。

よく、「被害者にだって落ち度はある」と言われる。私もさんざん、インターネットは危険です!気をつけて利用しよう!という授業を受け、「会ったり写真送ったりするわけないじゃん」と思っていた。なんで写真を送ったりするんだろうとも。そうした「被害者も悪い」ということばに一矢報いる映画だった。暴力はもっと巧妙で、逃げたり正常な判断を下したりするのは難しい。出演者たちが実際に男性たちとやり取りをするのを見る中で、どうして相手の要求に答えてしまう子がいるのか、少し想像できるようになった。

特に印象的だった場面がある。映画の最後に、出演者の3人が何人かの男性とカフェで会うところだ。さすがに人目を気にする男性もおり、なかには「見つかるとヤバいから今まで送ったメッセージ消して」という人までいた。ここには書けないような酷いメッセージを散々送っていたのに。そうした態度に、出演者の1人がついにキレた。10代の子にポルノを送って、許されると思ってるの?
彼女の怒りがダイレクトに伝わってきたけれど、でも、警備や監督のバックアップがあり、且つ彼女が本当は大人だったからできたことだろうなと思った。10代の子だったら怖くてあんな風に怒れないだろう。

映画のメッセージは「子どものネット利用に大人はもっと気を付けて」というものだった。確かにその通りだけれど......なんで「普通に」インターネットを使うだけで暴力の対象にされないといけないのだろう。なんで10代の子が注意しなければいけないのだろう。

映画を観た数日後、ワーキングチームでの例の議員の発言について知った。力の差に自覚がないってこういうことなんだ、とチェコと日本の現実が繋がった。


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