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【あつ森】World's End Happy Birthday【最終章 きみが好き エピローグ 君と創る世界】

あつ森ファンタジームービー『春はどこへ行った?』の続編『World's End Happy Birthday〜君に贈る物語〜』の原作版です。

最終章 きみが好き
〜君と行きたい、生きたい風景〜

封印したはずの亡霊が
董子を襲う瞬間、
指輪が輝きを放ちー!
僕だけの君への想い、
今度こそ伝えるんだ!


※動画版とは一部展開、時系列が異なります。

🌟スペシャルエピローグ 君と創る世界は後半へ

最終章 きみが好き🌸

1.君と指輪


「灯火…!」

声の方向に視線を向けると、亡霊の斬撃が切り裂いたのだろうか、いつの間にか雪の作った結界に裂け目ができていた。

そこから董子が心配そうに覗きこんでいた。

「ずっと心配で…探してたの…。みんな傷だらけで痛そうだよ…。」


涙目になって声を震わせていた。董子がもっと早く来ていたら危なかったかも…。

全てが終わった後で本当によかった…。

終わった…?

あ、、、れ?なんだ…?嫌な冷気を感じて急に背中がぞわっとした。

「楔が…抜けてる…」
僕の後ろでうずくまる光の声が震えていた。

えっ…。

小さくなった亡霊に突き刺さる楔の数は…4本。

5本刺したはずなのに…!
身体中から一気に血の気が引いた。

僕が最初に刺した楔が、情けなく抜けて地面に転がっていた。
そうだ…あの楔だけ小さかったんだった…。



そこから黒い影がずるずると董子の方に伸びていく。

嘘だろ……やめてくれ…。

だめだ……体が動かない…。

黒い影が董子の目の前で湧き上がり、禍々しい闇の手が董子に襲いかかろうとしていた。

「逃げて!!!」
僕は必死に叫んだ。

その瞬間、董子の胸元で何かが強く輝いた。


あれは…!

僕の指輪のネックレス…?!

まさか…つねきちさんのところで買った桜色の石って…!

指輪から溢れる光が、闇の手を吹き飛ばす。

「灯火を、みんなを傷つけて、ぜったい許さないんだから!!」

必死に威嚇する子猫みたい。こんなに怒っている董子を見るのは初めてだ…。

董子の右手にはいつのまにか桜の杖が握られていた。

「桜の杖よ!目覚めて!!」

董子が頭上高く振り上げた杖から、星のように煌めく光が溢れ出し、董子を包み込んだ。

光の中で、白い三つ編みは解けて波打ち、春の朝に花が開くようにふんわりとした桜色のドレスをまとっていた。

前世の春の精霊の姿だった。
そうだった…。

この中で1番魔力が強かったのはトーコだった。

「スピカの星の花よ!深き闇を包み込め!」


董子が杖を振ると、世界が鮮やかな桜色の炎で燃え上がり、星空から光の花が降り注いだ。

「蘇りし者よ!遥か時の彼方へと還れ!!」

「ガアアアアアア……。」


亡霊に向かって激しい花吹雪が吹き荒れると、次の瞬間、亡霊の姿は消えていた。

董子が無事で本当によかった…。指輪の石…守ってくれ…た…んだ…。

ほっとしたら痛みで意識が遠のいていった。

最後に見えたのは、振り返って僕を見つめる董子の悲しそうな表情だった。

2. きみが好き


ぼんやりする意識の中で、僕は考えていた。

董子を想って、一から指輪を作って分かった。

董子への想いは、トーカのものじゃない。僕だけのものだ。


僕はトーカみたいに風景を描くことも好きだけれど、
誰かのために作る幸せにも気づいたんだ。

だから…これからやりたいことを見つけたんだ。


頬に温かいものが触れた気がした。

目を開けると、地面に横たわる僕の顔の上で董子がぽろぽろと泣いていた。


「灯火…!よかった…!」

雪と光も心配そうに後ろから覗き込んでいる。

泣かせちゃってごめん…。

ずっと言いたくて、言えなかったこと、董子に言わなくちゃ。

僕はよろよろと立ち上がる。


「灯火、起き上がって大丈夫?」
董子が心配そうに言う。

「大丈夫…。」

擦り傷だらけで顔には絆創膏。
ぼろぼろでぼさぼさでかっこわるいけど、僕は覚悟を決めた。

董子を真っ直ぐに見つめて言う。


「董子、ずっとずっと好きでした!!
大人になって、僕が夢を叶えたら、
僕と結婚してください!!」

「…………!!」
董子のまんまるな目が見開かれる。

その後ろでは雪と光がぽかんとして見ていた。

「はい!」

董子は春の花のようにほころぶ笑顔でそう言った。
瞳から溢れる涙が、花にきらめく朝露みたいに光っている。


ああ…やっと言えた…。
僕の目からも涙が溢れて、世界が水彩画みたいに滲んでいく。

「灯火!やるじゃん!」

「おめでとう!!」


ぼろぼろな雪も光も、嬉しそうに笑っていた。

空からは次々と流星群が降り注ぎ、数百年に一度のロマンティックな夜だった。

エピローグ 君と創る世界✨

1.僕たちの夢

ー8年後ー

僕は大学院を修了し、建築士になっていた。
僕が携わるのは『意匠設計』。

施主の希望に応じた、実用的で美しい建築や住空間をデザインする仕事だ。

元々風景画が得意で、絵でイメージを形にする力があったことが、とても仕事の役に立っていた。

そして8年前、小さな指輪を一からデザイン•設計し、作り上げたこと。

そこから感じた、誰かのために作る幸せが、今の僕に繋がっている。

これから僕が作る建物や住空間が、誰かにとって思い出の場所になったり、日々を楽しく快適に過ごせる場所になったらいいな。


雪は昔から目指していた弁護士になっていた。


1人で自由にやりたいそうで、さっさと独立開業していた。

今は刑事事件の依頼が多くて、しょっちゅう接見に行っているようで忙しそうだ。

基本ドライだけど、困っている人を見捨てられない、本当は優しい雪に向いている仕事だよね。

主張•立証に建築の専門知識が必要な、建築紛争の分野にも興味があるらしく、いつか僕も一緒に事件解決のお手伝いができたらいいな。


光も、ずっとなりたかった魔法史の若手研究者になっていた。


元々得意だった客観的な資料収集、分析能力に加え、前世の記憶が蘇ったことで、研究が凄まじく進んでいるらしい。

前世の光は、消えたスノウの代わりに、冬の世界で国家機能を維持するため奮闘し、その後の復興を支えた重要人物だった。

大混乱で比較的資料が少ない魔法時代末期を、まるでその目で見てきたかのような論文に、学会で激震が走ったそうだ。

それぞれに夢を叶えて、忙しい日々を送る僕たちだったけれど、高校時代から3人の得意分野を活かしてやってみたいプロジェクトがあった。

何年もかけて、ついにそれが完成したのだった。

2.君と創る世界で

今日は董子の誕生日。董子と婚約したあの魔法の夜から8年。

董子は新人の児童文学作家になっていた。

遥か昔の世界を舞台にした、春の精霊が語るおとぎ話は、不思議でやわらかな世界観で人気だ。

『おわりのはじまりのせかい』、僕もとても好きなお話。

青空に桜が舞う春の陽射しの中、僕は董子を特別な場所へと連れてきた。

僕の一歩後ろを歩く董子の、ふんわり白いバラのワンピースの胸元に、ネックレスの指輪がきらりと光って揺れている。


あの日贈った指輪を、董子は今もずっと大切に身につけてくれていた。

煉瓦造りの門をくぐった先の風景にびっくりしたのか、董子は目を丸くして立ち止まった。


「ここって…前世でトーカと一緒に来た…。トーカの絵の場所!」

桜色の魔法のオーナメントガーデンが、僕たちの目の前に広がっていた。

長い長い時が流れて、今はもう世界から無くなってしまった風景。

前世のトーカが、冬の世界でトーコと訪れ、いつかまたふたりで行きたいと願って風景画に描いた場所。

「本物より小さいスケールだけど、前世の記憶をたよりに、雪と光と一緒に復元したんだ。」


前世のトーカは風景画を描くために、大昔の世界を精緻に観察し、しっかりと記憶していた。

前世の僕の記憶と、雪•光の記憶、客観的な歴史的資料を合わせて、当時使われていた素材の材質や工法を推測し、現代で手に入るものを使って再現したのだった。

雪は土地の取得や必要な機材、資材の調達など、各種交渉•契約締結•申請担当。

光は資料収集と考証•分析担当。

僕が設計•デザイン•工事指揮担当だった。

この成果は学術的にも有益で、光が論文として発表するそうだ。

これからも、僕たちの思い出の風景を、たくさん復元していくんだ。


白銀の森の泉も、天空の階段も、青色の神秘の祭壇も、また一緒に行けるように。

僕は董子の手を引いて、オーナメントガーデンを見渡す中央の階段を登っていった。


階段の上には、元々のオーナメントガーデンにはなかった白いアーチのベル。

その前で董子と向き合う。

「これから董子と生きたい風景も、自分の手で、一緒に創っていきたいんだ。

今年も誕生日おめでとう、董子。

あの時の言葉、もう一度言うね。

僕と…結婚してください!」

「はい!」

涙を浮かべながら微笑んで、董子は頷いた。

ベルの前のテーブルには、リングピローに飾られた二つの結婚指輪。

そっと董子の手を取って、左手の薬指にはめた。


よかった…。今度こそぴったりだ。

嬉しくて僕まで泣きそうだ。

僕もお揃いの指輪を同じ指にはめる。

そうして僕たちは、手を繋いで、祝福するように桜が舞い散る道をゆっくり並んで歩いていった。


前世のトーカが描いてきた風景は、いつかトーコと一緒に行きたい、願いの形だった。

僕はトーカの描いた風景も、僕がこれから董子と生きたい風景も、自分の手で創っていきたい。

董子と一緒なら、きっと…。

君と創る世界で、今日も生きていく。

ワールズエンド•ハッピーバースデー

〜HAPPY  END〜

🌟読んでいただきありがとうございます🥰
『春はどこへ行った?』から『World's End Happy Birthday〜きみに贈る物語〜』へ続く、トーカとトーコの物語、応援のおかげで無事に完結することができました😭✨

❄️最終章の後日譚、雪くんのエピローグを投稿しました✨

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🌟制作パートナー🦋ゆりーなちゃん

🌟撮影&島提供協力 fumikaちゃん ちゅーぺっ島

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