【あつ森】World's End Happy Birthday【第0章 おわりのはじまりの世界✨】
むかしむかし、世界に魔法が存在した最後の時代が終わる頃ーー
春の精霊は、今年も春を届けに世界を巡っていました。
彼女の楽しみは、世界各地に飾られた沢山の絵を眺めることでした。
それはとある画家が、かつて春の精霊のために描いたものでした。
彼が世界に遺した愛のかたち。
絵を見つめるたびに、彼と一緒に過ごした日々や、彼が一生懸命に描く姿が蘇り、胸の中にあたたかな灯りが燈るようでした。
けれど同時に、この世界にもう彼がいないことが、とても寂しくもあるのでした…。
時が流れ、星がもたらした魔法の力も、春の精霊も、ついに世界から消え去る時がやって来ました。
消え去る瞬間にも、春の精霊が想っていたのは彼のことでした。
春の精霊が次に目を開けると、たくさんの人が行き交う夜の広場の真ん中に立っていました。
いつの間にかその手には、これからの行き先が示された地図を握っていました。
この世界はとても不思議な場所でした。
途中でお茶をしている人や、本を読んでいる人、ベンチで寛いでいる人もいました。
目の前をたくさんの人が歩いていましたが、それぞれ地図をたよりに分かれ道を曲がっていき、春の精霊もやがて一人になりました。
心細さを感じながらも、春の精霊は暗い道を進んで行きました。
やがて暗い道の先に小さな灯りが見えました。
近づいていくと、茶色い髪の男の子が灯りを持って立っていました。
男の子は、春の精霊に気がつくと、優しく微笑んで手を振りました。
春の精霊がずっとずっと会いたかった人でした。
男の子も時間の狭間で、春の精霊をずっとずっと待っていたのでした。
春の精霊はいつの間にか、銀色の三つ編みの女の子の姿に変わっていました。
目には真珠のような涙を浮かべて、男の子の元へと駆け寄りました。
「トーカ!!」
「トーコ!!」
とても懐かしい声で呼び合うと、ぎゅっとお互いを抱きしめました。
暗い世界がぱあっと明るくなったようでした。
それから2人は手を繋いで、暗い道を一緒に歩いていきました。
繋いだ手はあたたかく、もう寂しくはありません。
やがて道の先に一面の銀色の草原が広がりました。
その真ん中には錆びた古い扉がありました。
トーカは扉の前で、
「ここで少しだけまっていてね。」
とトーコに言いました。
トーカが扉を開けると、長く暗い階段が暗い地の底へと伸びていました。
トーカは一段一段ゆっくりと降りて行きました。
地の底に辿り着くと、大きな割れた鏡があり、尖った鏡の破片が散らばっていました。
鏡の向こうには、男の子がうずくまっていました。
男の子は信じられないものを見るかのように、長く伸びた銀色の髪の向こうで氷色の瞳を見開いていました。
「どうして…。」
銀色の髪の男の子は震える声で言いました。
「長い間待たせてごめんね。スノウを迎えに来たんだ。」
「私なんて、君にはもう必要ないよ…。」
「ううん。スノウがそのままで幸せになれる世界だったらよかったなって思ったんだ。」
トーカはスノウに手を差し伸べました。
「怖がらないで、僕もきみも、ここからまたはじめるんだよ。
一緒に行こう。」
スノウの瞳からは涙が溢れて、散らばる鏡の破片をきらきらと輝かせました。
トーカはスノウの手を引いて、開け放たれた扉へ向かってゆっくりと階段を登っていきました。
「おかえりなさい。」
扉の前で待っていたトーコが笑顔で迎えました。
「ただいま。」
そうして3人は、一緒に夜の銀色の草原を駆けて行きました。
身体は羽根のように軽く、どこまでもどこまでも走っていけそうでした。
やがて空が白んでいき、
世界に朝が訪れました。
銀色の草原の向こう、
この世界の果てには海がありました。
透明な波が足下をさらうと、
3人は鳥の姿になって、海の向こうへと飛び立っていきました。
おしまい
本編第4章はこちらです✨
🌟読んでいただきありがとうございました🥰
第4章ワールズエンド、雪くん前世の回想シーンにあたるお話でした❄️
原作版プロローグも、前世回想シーンに関わるおはなしです✨
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🌟制作パートナー ゆりーなちゃん
🌟撮影&島提供 fumikaちゃん ちゅーぺっ島
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