【あつ森】World's End Happy Birthday【原作版 第2章②想いをかたちに】
第2章① 料理と音色(雪視点の2章)はこちらから。
第2章② 想いをかたちに
夕ご飯作りも失敗してしまって、散々だ…。
僕は自分の部屋のクッションに座って、溜息をついていた。
「灯火くん、あなた…。
本当に董子のことが好きなの?」
氷華さんの問いかけが頭の中でこだまする。
目を閉じると、この1年見つめてきた董子の姿が浮かんできた。
子猫みたいに無邪気で、かわいくて、側にいるとあたたかくて、僕の…大切な人。
…「トーカ」だったら絵を描いてプレゼントしていたのかな…。
でも僕は…「灯火」の僕は…違うものにしたい。
董子が好きそうなもの、誕生日にプレゼントするなら特別なもの…。
あっ!
以前董子と映画を観に行った百貨店の、ショーケース前での出来事を思い出す。
ガラスのショーケースに飾られた指輪を、董子がきらきらした瞳で見つめていたのだった。
指輪…これって…作れるのかな?
僕はDIYに興味があって、自分でもレシピをもとに色々と作ることがある。
部屋の作業台も、以前頑張って自分で作ったものだった。
あの店のご夫婦に相談してみよう。
翌日、僕は人気のDIYショップを訪れた。
「あっ、あの…。大切な人の誕生日に、指輪をプレゼントしたくて…。
カイゾーさん、リサさん、そ、相談に乗ってもらえないでしょうか…。」
しどろもどろになりながらも最後まで言えた。緊張して体温が上がっている気がする…。
「誕生日プレゼントに指輪!!そりゃすごいな!」
「ふふふ。想いのこもったプレゼントなんて素敵ね。」
「いいじゃねえか灯火!作り方指導してやるよ。」
「ありがとうございます…!」
「ところで、その子の指のサイズはわかるの?」
「えっ…。」
指のサイズ……考えていなかった…。
董子より15センチは背の高い僕の手を基準にしたら、きっと大きすぎるだろう。
実は手を繋いだことはあるんだけど…小さくてかわいい手だったと思…う…。
思い出すとまた体温が上がってきた気がする…。
「わ、わ、わからないです…。」
「あらら…。平均的なサイズから推定することはできるけれど、合わなかった時が悲しいわよね。
だったら、最初から指輪のネックレスにするのはどうかしら。
学生さんで、ずっと指につけているのは難しいかもしれないし、その方が身につけやすいかも。」
目から鱗だった。大失敗する前に相談してよかった…!
そうして僕とカイゾーさんの指輪ネックレスDIYが始まった。
トーコをイメージしてデザイン画を描き、お花の彫刻と小さな石を入れることにした。
「うーん、指輪用の石か…うちにもちょうどいいのがないんだよなあ。
あっ、そうだ!灯火ちょっとついて来て。」
そう言うとカイゾーさんは、絵画や彫刻がたくさん並べられたアンティークショップに僕を連れて行った。
「いらっしゃ〜い!今日もお安くしまっせ。」
青緑色の法被を着た狐目の店主が愛想良く出迎える。
「つねきちさん!今、指輪用の石を探してるんだ。丁度いいのあるかい?」
カイゾーさんが威勢よく尋ねた。
つねきち?光が杖を買ったっていう怪しい商人じゃ…?大丈夫かな…。
「石…でしたら先日色々仕入れたばかりですよぉ。こちらにどうぞ〜。」
「おや?あなたは…雪さん…??」
「えっ…。いえ、雪は僕の双子の兄で…僕は弟です。」
髪も瞳の色も違う雪と間違われるなんて、けっこう珍しい…。
「あっ!?大変失礼致しました。てっきりイメチェンされたのかと〜。
雪さんには色々とお世話になっているんですよ〜。」
何をやっているんだ雪は…ただでさえミステリアスな兄が、ますますわからない。
つねきちさんが店の奥から出して並べてくれた箱の中には、色とりどりの小さな石が並んでいた。
どれも綺麗で悩んでしまう…。
しばらく手に取りつつ考えていると、箱の真ん中の桜色の石がきらりと光った気がした。
ふと、この前の董子の桜色のくちびるを思い浮かべてどきっとしてしまった…。
淡くて優しい春の色、董子に似合いそうだ。
「…つねきちさん。この石にします。」
「あっ、それは……!ま、まあいいでしょう。
まいどぉ〜!
お兄さんによろしくお伝えくださいね〜。」
…うん?何か意味深だったけど…店主がいいって言うならいいか。
僕はカイゾーさんが作ってくれた指輪をお手本に、鉄鉱石を加工して指輪を作り上げていった。
カイゾーさんは僕に、贈り物作りの秘訣を教えてくれた。
「愛を込めるんだ。
相手のことを想いながら作ると、自然と造りも丁寧になる。」
董子のことを想いながら、喜んでくれたらいいなと思いながら、細やかに彫刻し、指輪を仕上げていった。
ずっともやもやしていた気持ちも、作りながら透き通って整理されていくようだった。
数日かかって、ついに指輪のネックレスが完成した。
銀色のちいさなドーナツみたいな丸い指輪に、お花模様が彫刻され、桜色の石がほんのりと光っていた。
たくさん失敗もしたけれど…自分の想いを、ちゃんと形にすることができてよかった…。
桜色の包装紙でラッピングして、リボンを結んで準備完了。
カイゾーさんとリサさんにも、電話で指輪が完成したことを報告した。
「よくやったな!灯火!」
「素敵なプレゼントができたわね。渡すの頑張ってね。」
部屋のテレビのニュースが、明日の天気予報を伝えていた。
「明日の夜は、数百年に一度の特別な流星群、次々と星が降り注ぎロマンティックな夜になるでしょう。」
明日は董子の誕生日。
指輪を渡して…僕の想いを伝えるんだ。
スマホのチャットアプリで、0時に董子へお誕生日おめでとう。と送信する。
すぐにありがとう!の言葉と一緒にかわいい猫のスタンプが返ってきた。
董子とは、いつもの博物館前広場で待ち合わせることにした。
待ち合わせの時間はいつもより遅い、夕方17時。
氷華さんがランチで董子をお祝いした後、夕方にまた海外へ行かなければならないから、らしい。
絶対に遅れないようにしなくちゃ。
緊張してなかなか眠れそうになかった。
第2章② 想いをかたちに おわり。
第3章 影と鳥籠 につづく。
🌟読んでくださり、ありがとうございます🥰
次章は、董子の誕生日当日。灯火は無事に指輪を渡して想いを伝えられるのでしょうか…!
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🌟共同制作 ゆりーなちゃん
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