【あつ森】World's End Happy Birthday 【原作版 第1章③ 蛇と蛙】
光の家からの帰り道、僕はトーカのことを考えながら、ぼんやりと川沿いの遊歩道を歩いていた。
董子と出会った1年前から、時々思い出すようになった前世のトーカの記憶。
絵を描くことも、トーコのことも、好きだったのは『トーカ』で、僕って一体なんなんだろう…。
川面に映る影のように、これまで灯火として生きてきた自分が揺らいでしまうようで、少しだけ辛くなる。
こんな思いをするなら、董子や雪のように、物心つく頃から前世の記憶があったり、光みたいに全然覚えていない方がよかったのかもしれない…。
「あら?灯火くんじゃない。」
聴き覚えのある上品な声に、はっとした。
声の方向に目を向けると、川沿いのカフェテラスでゆったりとくつろぐ女性がいた。
琥珀色のサングラスに、唾の広い優雅なシルエットの帽子を被り、豊かなロングヘアを風になびかせている。
「氷華さん!お久しぶりです。帰って来られたんですね。」
四季咲 氷華さん。
歳の離れた董子の姉、四季咲家の長女だ。
彼女と董子の間には、次女の青葉さんと三女の楓さんがいる。
父を亡くし、傾きかけた四季咲の家を復興させた凄腕の実業家で、世界中を飛び回っているらしい。
「そうよ。もうすぐかわいい董子の誕生日だもの。盛大に華やかにお祝いしてあげなくちゃ。
灯火くん、貴方は何をプレゼントするのかしら?」
「………。」
そのことも、最近の悩みのひとつだった。
「固まっているけれど、まだ決まっていないの…?」
柔らかだった氷華さんの視線が、氷柱のように鋭くなった気がした。
「はい…。」
大きな白蛇に睨まれた小さな蛙みたいに、僕は弱々しく答える。
「灯火くん、あなた…。
本当に董子のことが好きなの?」
「えっ。」
突然の問いかけに背筋が凍った。
「…いいのよ。それは私に言うべきことじゃないわ。
じゃあ、またね。」
頭から氷水を浴びせられたみたいだ…。
僕はふらふらと家へ帰っていった。
2.
「雪、出てきて大丈夫よ。」
弟のがっくりした背中が見えなくなった頃、双子の兄の僕ー『雪』は物陰から出てきた。
「氷華さん…弟をからかうのはやめてもらえませんか。」
「あら怖い顔。でも本当のことでしょう?」
氷華さんは心底楽しそうに笑いながらそう言った。
本当この人は…前世から変わらないな…。
第1章③ 蛇と蛙 おわり。
第2章 想いをかたちに へ続く。
🌟読んでいただきありがとうございます🥰
つづきもお楽しみいただければ幸いです🌸
🌟 World's End Happy Birthday
〜きみに贈る物語〜 YouTube版
🌟共同制作 ゆりーなちゃん
⭐️撮影協力&島提供 ちゅーぺっ島 fumikaちゃん
カフェテラスのシーンはちゅーぺっ島の風景です🥰
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