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お父さん一緒にカレー屋さんやろ!


父の行く末


2014年正月
年が明け、久しぶりに兄弟3人が実家に揃い家族5人のたわいもない話しをした。

そんな中で一番の話題は父の行く末である。

父はちょうど60歳を迎える年になり、父がリタイアをした後の行く末を家族で気にかけていた。

「お父さん、カレー屋やらない・・?」
兄からの急な問いかけである。

兄は余りにも軽く、唐突にこの言葉を発した。

そして兄はカレー屋の夢を楽しそうに話し続けた。
「お父さんのカレーおいしいし、お店をしたら喜んでくれるお客さんもいると思うよ。」

私は、「そうだよね、うん、それいいかも!」
と手をあげた。

父の反応が気になり、父の顔を覗いた。

「いや、僕はいいよ。」

「なんで?」

「人様からお金をもらうほどでもないから・・・」

父は乗り気ではなかった。。。

寂しそうな背中


2013年暮れ
私が福ベーグルでアルバイトをしていた頃の話である。

師走の忙しい時期を向かえ、私はバイト先の大掃除に出かけた。

一年分のこびりついた汚れをはがしていく作業は最高に気持ちが良く、私は夢中で汚れと格闘した。

大掃除はみんなの力で手際よく進み、予定より早めに仕事を終える事が出来た。

私はバイト仲間と「また来年もよろしくね」
と挨拶を交わし、自宅に向かってチャリンコを走らせた。
(外気は冷たいが気分はいい)

私は玄関に足を踏み入れた瞬間、いつものように家中に聞こえる声で叫んだ。
「ただいま〜〜〜!」

・・・。
(しーーーーーん)

「・・、そうか、まだ昼間だもんな。誰もいないか・・・。」
私はそう、心の中でつぶやいた。

誰からも返事がない事に、ちょっとがっかりしたが、そんな事はよるある事である。

ふと横に目をやると、父の書斎の戸が少し開いている。
(ちらっ。)

父がいる!
(なんだ、いたんか。)

しかし、声をかけられるような雰囲気ではない。

父は背中を丸め、何ともないテーブルの木の木目をぼーっと見つめていた。
(何を考えているんだろう・・・)

私は気になったが、声をかけるのを止めた。

私には背を丸くした父の姿が何だか寂しそうに見えたのである。



私の想い


そして年が明け、兄の一言でコトが急展開を迎えたのである。

「はるのがお父さんとカレー屋やればいいんじゃない・・?」

特にやりたいことも定まっていなかった私は、流れで返事した。

「お父さん、やろう!」
そしてその返事には、私の勝手な望みも含まれていた。

お父さんの喜んでいる姿が見たい!

「好きなカレー作りを活かして、お客さんに喜んでもらえれば、きっと父も嬉しいはず」

お父さん、一緒にカレー屋さんやろ!

そう、兄がくれたキッカケに私の父に対する思いが乗っかって「はるカレー」が誕生したのである。


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