仕事探し
2018年5月
意外な落とし穴
長い長い冬を越え、ようやく新芽が顔を出し新緑の綺麗な時期を向かえた。
私は語学学校を卒業し、新たなステージに足を踏み入れた。
よし、仕事探しだ!
・・と勢いよく走り出したいところだが、そうはいかなかった。
新たな住まいはシェアハウス。
ホームステイのようにティナが食事を用意してくれたり、洗濯物を回してくれたりは、もう一切ない・・・。
え、ごはん、自分で作らなきゃ、食べるものがない・・・。
どうしよう・・・。買い物?
・・どこのスーパー?
洗濯はいつする?
自分で食事の買い出しから料理。
自分で今日を選択して、何をするかも自分次第。
当たり前の事だが、それが出来ていなかった事に気がついた。
今日はどうする?
仕事を探す前に、自分がこれからどうしていきたいか、ひたすら考えた。
勇気
タイ料理屋で働きたい!
ノートパソコンを開きトロントのタイ料理屋を片っ端から調べた。
人気上位の数店舗に目星を付け、履歴書を用意した。
履歴書をリュックに潜め、いざ出陣!
そして、お店の前に到着。
中の様子を一瞬ちらり。
一旦お店を通り過ぎてみた。
一気に不安が押し寄せた。
やばい、こわい。。。
またお店の前まで戻り、気丈な振りをして店内に入った。
とりあえずグリーンカレーを注文した。(それしか知らなかった・・。)
すぐに料理が出てきて、私はすぐにたいらげた。
あとは、仕事の募集を尋ねるだけ・・・。
しかし、次の一歩が出ない。
私はリュックに手をかけながら、どうするか悩んだ。
・・・勇気が出ない。
結局私は、何事もなかったかのようにお会計を済ませて、店を出た。
今日はお金を使うだけで終わってしまった。。。
私は落ち込んだ。
勇気の無い自分を攻めた。
その日から部屋を出る事すら恐ろしくなった。
先の見えない恐怖は日に日に増幅した。
行動
このままじゃいかん!
思う存分落ち込んだ私は、自分のお尻を叩き、再び立ち上がった。
よしゃ、今度こそは!
私は再び街に繰り出し、お店に飛び込んだ。
「仕事を探しているのですが、募集していますか?」
と定員さんに声をかけたが、募集はしていないとの事だった。
私は気持ちを伝え、望みをかけて履歴書を渡した。
大丈夫、まだ1件目。そう自分に言い聞かせて、次の店に向かった。
またも募集はしていないとのこと。
可能性にかけてまた履歴書を渡した。
外は雨。。。
私にこのまま帰る選択肢はなかった。
次のお店はまだ閉まっていて入店を断られた。
しかし、私は話がしたいと手を上げてアピールした。
「仕事を探しています。ここで働きたいです!募集していますか?」
私は濡れたカバンから履歴書を取り出し、最後は目で訴えた。
(ここで働かせてください!)
「募集はしていないが、履歴書を拝見して連絡するよ。」
と言ってくれた。
雨脚が強まってきた。
そして私はもう一軒の店まで急ぎ足で向かった。
ピロン、ピロン・・・
携帯が鳴った。
先ほどの店から早速メッセージが届いた。
明日面接に来てくれ、とのこと。
私は瞬時に頰がゆるんだ。
よっしゃ!
私は心でガッツポーズをし、このチャンスを絶対に掴むんだ!
と密かに燃えた。
そこに、あの小心者の春乃は居なかった。
こうしてまた一歩、私は足を前に踏み出した。