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殴ってはいけないおじさんを殴った夢

マクドナルドに入ったら店の中心に岩の台座のようなものがあり、そこに中東系のおじさんが座っていた。中東系のおじさんは陰茎を露出させ、さらに自分の尿をスプリンクラーのように周りに噴射し続けていた。尿は恐ろしいほどよく飛び、射程距離は推定10メートルはあった。

「いや流石にマナーが悪すぎるでしょ…」俺はマックの店員さんに言った。店員さんは困り顔だった。やばいとわかってはいるが注意できない様子だ。

するとスタッフ専用ドアがガチャリと開いた。中からマックの偉い人が出てくるかと思いきやローマ教皇みたいなのが出てきた。側近も三人ほど引き連れている。どうやら彼らが中東系のおじさんを注意するつもりのようだ。いいぞ、行け! 俺は教皇を応援した。だが教皇たちは動きがのろかった。煌びやかな法衣を床に擦り、錫杖をつき、シャランシャラン、スススと歩く。その動きがあまりにのろすぎて余計にイライラした。俺はついに我慢の限界に達した。立ち上がり拳を握り走った。近づいてくる殺気におじさんが気づき尿を連射。しかし俺はそれを俊敏な動きで躱し、顔に拳を一発入れた。

そのとき気づいた。おじさんの顔はもう痣だらけだった。

このおじさんは俺がここに来るより遥か前から座っていた… おそらくマクドナルドの建物すらできる前から… そして尿を飛ばし続けていた… 俺たちはみんな後から来た人たちで、後から来た人たちの価値観でおじさんは怒られ、殴られ続け、それでもなお座り続けているのだ…

だとしたら、このおじさんは俺より遥かに“格上”…

拳打を受けたおじさんは微動だにせず岩の台座に座ったままこちらを見てきた。おじさんと目が合った。おじさんの瞳の色はこの世のすべての無常を見つめるかのような深い深い青色だった。俺はすさまじい恐怖を覚えた。根源的恐怖だ。俺は逃げ出した。走る背中をふたたび尿で狙われたが尿の軌道を読むのに関しては慣れだ。ノールックで躱しながら射程距離外まで逃げた。

すると突然ぼろ布をまとった物乞いらしき少年に腕を掴まれた。少年は俺を見上げていた。その瞳はおじさんの瞳とまったく同じ深い青だった。この子もおじさんだ! 理屈で考えればわけがわからないがそう悟った。どうにか手を振り払おうとしたがいくら振り払ってもしがみついてくる。たまらず俺は少年をブンと投げ飛ばした。投げ飛ばした瞬間どこからともなく同じような子供が大勢出てきた。その全員が全員同じ目をしていた。深い青、深い青、すべての無常を見つめる深い深い青。もしかして俺は死ぬのか。いやだ! 走って逃げた。だが子供たちはどこまでも追いかけてくる。ああ! あのおじさんを殴ってはいけなかったのだ! 息が切れ力尽きた俺は子供たちに捕まった。そして石や木の棒で滅多打ちにされ案の定死んだ。しばらくするとローマ教皇たちがシャランシャラン、スススとやってきて、俺の死体を囲みながら讃美歌を歌っていった。

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