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ムイビエンは負けて勝つ

2022年1月22日エディオンアリーナ大阪第2競技場にてGHCジュニアヘビー級タッグ王座決定戦が行われました。
結果は残念ながらムイビエンは戴冠できませんでした。
でも、本当に残念な結果だったのでしょうか?
私はもとからこの試合は負けても良いと思っていました。
負けてほっとしたと言い替えてもいいです。

ポイントはシチュエーションです。

今回の大会はコロナの影響で10名もの選手が欠場となりました。
欠場選手の中にはタッグ選手権の選手権者も含まれていました。
選手権者の欠場に対して団体は「剥奪」という配慮ある措置を取りました。
剥奪は一見とても厳しい措置に見えますが、選手権者的には①「自ら望んで手放したのではない」というイメージをファンに与えれる②それを逆手に次の展開に持ち込みやすい、というとてもありがたく温情ある対応です。

そこで割を食ったのが挑戦者チームの小峠篤司選手・ムイビエン組です。
上記の団体の選手権者に対する温情措置のため、とても複雑な立場に追い込まれました。
団体内のポジションは正規軍(本隊)でいわゆるベビーフェイス(善玉)であるにもかかわらず、①によりファンのシンパシーを選手権者が獲得してしまったため、この試合に限ってはヒール(悪玉)のポジションになってしまいました。
ただ、表面的なポジションはベビーフェイスのままなので、ヒール的なアクションやコメントは出せないというがんじからめの状況に落ち入りました。
対する挑戦者決定戦の対戦チームは、選手権者チームと同じユニットに所属しているため、意味不明で不甲斐ない結果を残しているヒールなのに、ベビーフェイスのポジションになってしまいました。ヒールでベビーな無双状態です。どんなに悪いことをしても、つまらないコメントをしても、単に弱くても許される状況になったのです。
こんな中途半端な状況でムイビエンが熱狂を作り出すのは困難です。

ここで、小峠・ムイビエン組が勝って選手権を獲得したと仮定します。
すると状況的には、ファンの後押しが少ない状況で、しかも格下の相手に順当勝ちした注目度の低い戴冠になってしまいます。
さらにこの大会のメインでは、ビッグサプライズが起こったため、ジュニアタッグの王座決定戦なんて誰も覚えてない状態になりました。
こんな日に戴冠しないで本当に良かったです。

当然ムイビエンはわざと負けたわけではありません。
ただ負けたことによって、ムイビエンの前に無数のストーリーが開けました。

まず、ムイビエンがギブアップ負けしたことが大きいです。
一週間後、一か月後のファンの記憶はどうなってるでしょう。
対戦相手が勝ったことより、ムイビエンが負けた方が記憶に残ってるはずです。
それには理由があります。
勝った選手は負けた選手について時間が経つとコメントを出しません。しかし、負けた選手は勝った選手に対してコメントを出し続けることができます。
特にムイビエンはSNSを上手く活用するので、勝った選手に対してのアプローチを継続するでしょう。
勝った選手は負けた瞬間から、負けた選手に次のストーリーの主導権を握られているのです。
どれだけ勝者が勝ち誇って、ムイビエンを貶めてもムイビエンから主導権は動きません。
上記にも書きましたが、特に今回はムイビエンがギブアップ負けしたのが最高です。これからはムイビエンのターンです。
ムイビエンが負けたことによって、物語は小峠選手でなくムイビエンが動かす権利を持ったのです。

次の負けた方が良かった理由は、会場の大きさです。
今回は大阪の中規模会場で、世間的な注目度も低い大会でした。
どうせ戴冠するなら首都圏の大会場で、世間の注目度の高い大会で獲った方がいいに決まってます。
今回の決定戦の勝者は春夏のビッグマッチまでの中継ぎ感があります。
たとえばビッグマッチで、若手の宮脇選手をパートナーに戴冠するなんて、想像しただけで震えます。

最後の戴冠しない方が良かった理由は決定戦開催の経緯です。
上記の通り、団体の温情配慮による選手権剥奪のため、ファン心理としては「本当の王者は別にいる」みたいな感覚があり、暫定王者感が拭い切れません。
皆が素直に喜べない状況での戴冠は遠慮したいものです。

次に挑戦する時のパートナーは誰だかわかりませんが、その時はスッキリとムイビエンな形の戴冠となるでしょう。

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