OCIC 〜 Malmö Regionals まで海外環境振り返り
こんにちは、はる( https://twitter.com/haruN_poke )です。
OCICに参加したことや、4月に行われる予定だったEUICにも行く予定だったことでここ数ヶ月は海外環境を追っていました。世界的に大会は中止になってしまいましたが良い機会なのでそのまとめ的な記事を書きたいと思います(全文無料で読めます)。
たくさん海外プレイヤーの名前が出てきたりするのである程度経験者向けの記事になります。海外情報の集め方等も書いているので海外大会に参加の際は参考にしていただければと思います。また、海外は日本とレギュレーションは異なるものの、日本で応用できる新しい発見もたくさんあります(スティンガーGXはivanoffがNAICで使って以降国内でも流行しました)。従って日本の大会でも役に立つ内容になっていると思います。
今回そこまで驚くようなアイデアデッキは見当たりませんでしたが、同じデッキでも構築の部分で大きな差が見受けられました。日本で主流だったタイプと比較しながら考察していこうと思います。
(ついでに自分のデッキ選択の経緯等にも触れていきます)
・はじめに
本格的な考察の前に海外の大会とカードプールの説明をします。日本のJCSにあたるものがIC、日本のCLにあたるものがRegionalと考えて貰えれば良いです。日本と異なるポイントシステムが理由で、これらの大会に世界中からプレイヤーが集まります。それゆえ大会の上位者の表を見ると、現地の人は少数で基本的にはいつものメンバーが揃っています(笑)。一つ覚えておくべきことは、海外の大会ではbo3形式であることです。しかもその時間は50分です。1試合が25分の日本プレイヤーなら分かる通り、1勝1敗で3戦目に突入するとかなりの確率で引き分けてしまいます。bo1である日本の大型大会では予選突破のボーダーが10戦で1敗なので安定感の非常に高いデッキを握らなければなりません。一方、海外の大型大会ではbo3形式で、予選突破も9戦して19p程度(6勝2敗1分、5勝4分)でいいので少しデッキパワーを高めたデッキも握りやすいです。次にカードプールの説明です。海外ではパックの発売周期がゆっくりで、現在だと2月発売のパック(〜剣盾)で5月まで大会が行われます。ほぼそのままCL愛知の環境ですね。
・OCICまでの事前情報
OCIC前の日本ではCL愛知以降パックの発売がお休みだったことに加えて、2月発売のVMAXライジングでは影響力のあるカードがほとんど出なかったことで、実質CL愛知の延長のような環境がかなり長い間続いていてプレイヤーの環境理解度も上がっていました。
一方これとは対照的なことが海外では起こっていました。2月上旬に新弾が発売されたことで初めて彼らは新ルールになったのです(先行サポ禁止)。一部の上位の海外プレイヤーはしっかりと日本の環境をチェックしているためCL愛知で猛威をふるった超mmや、シティリーグ等で話題になったチラチーノloは知っているものの、先手を取るのか後手を取るのか、日本でも初めの頃に起こった議論をするレベルから始まっているプレイヤーが多くを占めていました。
このようにOCIC前には対照的だった環境理解が日本勢の躍進の原因の一つだと考えられます。
さて、パックが出てからOCICまでの間殆ど大会の情報がない中での研究が繰り広げられました。
当時の情報源のいくつかを引用して大会前の情報戦を振り返ります。
最もわかりやすく影響力があったのはtordのtier表でしょうか
tier1が3ザ、ピカゼク、超mmなのは大体日本と同じで、その下に小ズガなどが並ぶ形ですね。
注目すべき点はいくつがあります。1つはやはりチラチーノloが環境初期からtier1に書かれていることです。他の中小規模の海外youtuberのtier表を見てもチラチーノloは常にtier1評価を受けていました。
loを取り巻く環境に関しては長くなるので自分のデッキ選択のところで詳しく書きたいと思います。ここではloは初週から既にトップメタの一つだった、くらいの認識で十分です。
他に注目すべき点はレッパの評価がとても高い事です。日本でもCL愛知後極端に数を減らしたように、海外環境ではレッパは超mmの影響で数を減らしていました。
順序が逆ですが、tordのレッパ評価に違和感を持つ原因となった動画が下の動画です。
ivanoffやhenry、hunterら強豪プレイヤーが海外環境について述べています。
長いので動画の内容を纏めると、
①3神ザシアンや超mmが一番多そう
②ピカゼクはloに弱いのが致命的で数を減らすかも
③レッパは少し古いデッキ、超mmに勝てない
④loは多いけど対策されるから勝ちきれない(スティンガーなど)
(ivanoffはシティリーグやコケコドールの人の話までしていてよく日本を研究しているのがわかります(笑))
ヨーロッパ勢を二つに分けると今回は、
tord &limitless 対 ivanoff、bert、henryチームとなっていました。この二つのチームのデッキの区別は以下でも何回か出てきます。
ここまでで分かる通り、両者のレッパに対する評価は割れていました。自分もあまりカードに時間が取れなかったので、レッパの研究をしていませんでした。唯一日本で結果をだしていたレッパは
メモ杯のきゃろくんのリストだと思います。シニアの渓斗のシティ向けに数回回しましたが、デデンネで6枚引いた中に溶接工が無いと止まってしまうのでかなり厳しいように思えました。
北米のazulはよくtwitchで配信しています。
https://www.twitch.tv/azulgg/videos
配信では3神と超mmがtier1でピカゼクはloがきついねと言っていました。
以上をまとめると自分の中でのtier表は
tier1 3ザ 超mm
tier2 lo ピカゼク
tier3 小ズガ レッパ、ftb(炎バレット)
tiep4 ルカメタ、タチフサグマなど
くらいに予想していました。
答え合わせの前に海外の配信などを見て気づいたデッキ構築の違いとして
事前に気づいた事
3ザ →ニャースがいない影響で祠やジグザグマの採用が非常に多い
→水エネは基本的に特殊エネ
→フライパンが入っていない
が挙げられました。ポイント3に注目できたのが出国前日で、連中時間が取れなかった事もあって炎を研究する時間がありませんでした(飛行機の段階から後悔が増していきます(笑))。
超mm →オーロラ型より超型が主流
→lo対策にスティンガーGXとメタモンを投入
→先手後手どちらを取るかが割れている
ピカゼク、小ズガ→loに致命的に弱い事もあり、ほぼ使われる気配がない
lo →チラチーノが主流で、クラッシュハンマー型
→メタモンが入っていてもペルシアンなど他はない事が多い
見て分かる通り、loへの意識が非常に高く、そこからデッキ選択がスタートしているのがわかります。このような雰囲気だったので事前予想では大半のプレイヤーが3神ザシアンを握って、一部のプレイヤーがスティンガーGX入りの超mmを使うと予想していました。また、飛行機に乗った段階で火が強いかもと気づいたので、limitlessあたりがまた火を使うのではないかとヒヤヒヤしていました(笑)。
さて長々と書いた大会前予想振り返りはここまでとして、実際のOCICの上位デッキ、注目デッキを見ていきたいと思います。
・OCIC考察
まずは3神ザシアンから見ていきたいと思います。
day1 1位抜け最終top8 bert の3神ザシアンです(ivanoffもほぼ同じ)。
一方でrobinがday1抜け、pedroがtop64のlimitlessのリスト
ポケモンやエネルギーに両者大差はなく、日本でも親しみのあるリストだと思います。共通した注目ポイントは、やはりマリィが1枚、リセットスタンプが2枚である事だと思います。海外ではジラーチを置くデッキが多く、マリイがあまり刺さりづらかったことが原因と考えられます。また、溶接工4枚のみのftbでもあったように、基本的に一番強いサポート(=研究)を打つことを前提としたデッキ構築になっているのがわかります。フライパンが入っていない点は予想通りで、実際にも炎の数はかなり少なめでした。limitlessのリストで目立つのはやはりキャッチャー8投入だと思います。テックカードを入れるよりも純粋にキャッチャーを増やした方がlo含めた全てのデッキに強く出られるので、非常にいい構築に思いました。
プレイの面では、予選1位抜けのbert選手のプレイが頭一つ抜けて上手に感じました。基本的には後手を取ったら1エネオルタージェネシスを使ってその後後ろのザシアンを倒していました。彼のプレイを見ているとミラーは運ではなくかなり実力が出るものだと痛感させられます。配信のアーカイブはMalmöのもの含め最後に貼っておきます。
次はレッパです
nicoが優勝、tordがベスト8(反則負け)
上であげたレッパの問題点の解決策として、ジラーチが4枚投入されています。ジラーチを2枚並べて願い星を繰り返すことで溶接工を安定して引くことを実現させています(海外では祠がメインでうねりが少なく、かまどが使いやすいことも追い風になりました)。
さらにlo対策としてスティンガーとデプスボムのコンボが入っています。ここでもリセットスタンプが2枚採用されていて、リセットスタンプの評価の高さが見て取れます。このように上位構築の共通点とその意図を探しておくと、デッキを作る際の引き出しが増えます。
いざ回してみると超mmとレッパはレッパが有利に感じてくる面白い現象が起きました。その理由として、
・レッパはウィークガードエネルギーさえ貼ることができれば、一方的に弱点をつけてオロヨノもGX技で倒せる。
・ジラーチ4とボール8でハンデス復帰力がかなり高い
・超mmはweakエネを貼られると1撃で相手を倒せないから負ける
という事で、『超mmがいるから』、或いは『溶接工は不安定だから』、とレッパを早々に考察対象から外してしまったのは失敗でした。唯一使った2人がどちらも上位入賞しているのでデッキの完成度は非常に高いです。
長い間この環境をプレイしてきて強いレッパにたどり着けなかったことはかなり反省するべきことでした。海外プレイヤーとの差を感じた瞬間でもあります。
一方で、日本ではフライパンが主流であり、ビクティニvでザシアンを飛ばせないのでレッパは活躍できなかったのでは、という意見も正しいと思います。レッパが活躍できたのは、ニャースが無いことでm3が死なないこと、フライパンが少ない事、bo3で日本より溶接工が引けなくてもいい事、等の条件が組み合わさった結果と考察できます。
OCICのtop16を見ると
3神ザシアン 7人
レッパ 2人
lo 2人
ftb、ピカゼク、タチフサグマ、小ズガ、ギラマネロ各1人
となり、CL愛知と対照的な結果です。
超mmが活躍できなかった理由は、海外はジラーチ環境でハンデスが刺さりにくい点、祠や鉢巻でm3が簡単にやられてしまうからだと思います。ピカゼクや小ズガに勢いが無いのはloの影響力が大きい事が分かりますね。
次は同じレギュで数週間後に行われたMalmöの考察になります。日本では環境が進むにつれマリィの枚数が増え、ピカゼクが3神対策として増え、最終的に小ズガが大量発生するようなメタ回りとなりましたが海外ではどうでしょうか。
・自身のデッキ選択について
とその前に、軽くOCICの自分のデッキ選択の理由について触れておきます。(旅の記録的側面が強いです(笑))
OCIC前にカルゴloがシティリーグで結果を残していた事もあり、周りの人もまあカルゴloでいいでしょ、のような空気が流れていました(笑)。しかし海外の情報を集めていると明らかに向い風の情報ばかりでした。何よりチラチーノloがtier1に置かれていた事でピカゼクや小ズガなど有利マッチが引けないことはかなり痛い点です。そして3神ザシアンはポケモンキャッチャー型が一般層では主流な事もかなり向かい風でした(楽観的な颯真のように、余裕だよとデッキを信じれば良かったかもしれません…笑)。そして出国前最後の週末にスティンガーGXが海外で超mmに入り始めた事が分かりました。試しに数回やってみるとボロボロで、このままではカルゴloは没でした。
スティンガーGXとデプスボムを防ぐ方法として初めに思いついたのは、ズガドーンGXのGX技でサイドを1枚取る事でしたが、前のGXが死んで相手のサイドを1にしてしまうので流石に没に。次はラティオスGXを試しました。これは3神にも使えていいのではと思ったのですが、先2スティンガーGX、先2オルタージェネシスに間に合わないことの方が多く断念しました。このあとプテラGXを思いつくわけですが、そのきっかけはカルゴloを回していくうちに他のサイドを取るデッキと同じだな、と感じ始めた事だと思います。サイドプランを考えたり、次のターンに何がしたいか、などポケカの基本的な動きが詰まったデッキに感じ始めました。loは山札を削るデッキ、という硬い考え方から離れられた事で倒す方法に辿り着けました。
倒す方法ですが、m3を倒すにはm3で倒すのが一番楽であることは明白でした。カード検索をすると炎エネで良いGXカードはありませんでした。一方闘エネでプテラGXがいいGX技を持っていたので採用しました。一応溶接工マグカルゴGXのプランもあったのですが、マリィ+スティンガーされた後に溶接工、炎エネ2、m3、トラッシュにマグカルゴGXは実現不可能な難易度なのでやめました。
先2or3マリィ+スティンガーに対して7割くらいの確率で返せる動きは出来たのでスティンガー問題は解決しました(2戦目以降にメタモンから進化されそうな場合はソーナンスを置くことで対処します)。プテラGXは副産物として6エネピカゼクを倒してサイドを回収できたり、ビクティニ♢が倒せたりと良いことばかりでした。
と、ここまでではカルゴloの選択は順風満帆に見えるのですが、僕は当日まで疑いを取り除くことができませんでした。最も大きな要素はbo3であることです。フラージェスやピジョンloなど、時間を使うデッキは50分で1本取って勝ち、負け試合はすぐに投げて引き分けに持ち込めます。一方カルゴloは日本の25分形式でも終わる早いデッキです。bo3になると勝ち試合では必ず2本取る必要があるので、日本でやるより倍の勝率が求められてしまいます。tordがlimitlessの記事の中で、bo3形式でコントロール系のデッキは極力握らないと言っていた理由が理解できたように思えました。そして、loへの対策が進んでいることも不安要素でした。プテラGXに関して、個人的にはプテラGXまで入れるのなら他のデッキで出た方がいいと感じていました。デッキを歪ませていることは明らかだったからです。練習時間がほとんど取れなかった事もあり使い納めとして半端な気持ちで持っていったので、当日はかなり運にも見放されました。サイコロの魔術師に当たったり、マオスイレン4投3神ザシアンに当たったり…他にも沢山あるので機会があれば話そうと思います(笑)。
颯真が10位になったのは素晴らしい結果で良かったと思います。上位卓ではカスタム型のデッキが多かったようで、もう少し環境が煮詰まればより戦いやすい環境だったかもしれません。
・Malmö Regionals 考察
さて気を取り直して、Malmöを見ていきます。日本の時と同様に数週間でデッキの構築が大きく変わっていきました。
・3神ザシアンの変化
1位のtord
17位のpedro(limitless)
今回はデッキを共有してないと思われる二人ですが、同じ方向にデッキを改善しました。タッグコール&グズマハラという動きがゆっくりなカードを抜いて、エネルギースピナーやダート自転車、ポケモン回収を採用する事でより積極的に動くデッキになりました(海外ではポケモン回収が使用可能です)。これらによってデッキの回転率が上がってザシアンの起動が楽になるなどGX後の動きが強まります。先2オルターを最重要視する日本とは真逆の方向に進んでいますね。一方で炎の流行に合わせて道具がフライパンになったのは日本と同じです。リセットスタンプが抜けたのはデッキ速度が上がった事で攻め寄りのデッキになったからだと思います。海外の3神ザシアンは相手のハードルを上げるより、グッズで回して自分が押し切ろうとする意思が感じられる構築に思えます。実はこの二つのデッキから多くのアイデアを得て日本で反逆クラッシュの新デッキを作るんですが、その話は次回に取っておこうと思います。
・小ズガの復活
4位 ivanoff
小ズガ好きのivanoffはやはり小ズガでした(笑)。彼の記事も掲載しておきます。
https://www.pokebeach.com/2020/03/blacephalons-new-friends
3神ザシアンに相性の良いデッキとして小ズガを選んだと言っています。日本では安定感に関してかなり物議を醸していますが、bo3だとカバーできそうです(配信でもぽろっと負けて2本取ったりしています)。
top16では
3神ザシアン 6
ピカゼク 4
小ズガ 2
ftb2
lo、超mm 各1 でした。
小ズガやピカゼクの復権が見て取れます。
スティンガーコンボや、キャッチャー8投入ザシアンの流行でloが数を減らした事もあり、小ズガやピカゼクが復権しました。loがひと段落した後の日本と少し似た流れですね。また、OCICでftbが2位だった事もありftbも再び流行、それに合わせて道具もフライパンになったようです。
・終わりに
3神ザシアンにタッグコールが抜けてクチートが入ったりと日本とはかなり異なる進化を遂げていきそうな海外環境ですが、残念ながら新弾発売まで大会は中止なのでここで一旦おしまいです。個人的にはさらに新デッキや新しい形が生まれそうな予感がしていたのでとても残念です。
海外のデッキを追うと新構築の発想が浮かんできたり、思考の甘さを痛感できたりとたくさん良いことがあるので是非注目してみてください。
・参照したサイトと配信
OCIC結果 → https://limitlesstcg.com/tournaments/?id=211
Malmö結果 → https://limitlesstcg.com/tournaments/?id=207
Tordの記事 → https://limitlesstcg.com/my-pokemon-journey/
OCIC配信 → https://www.twitch.tv/videos/555188874
Malmö配信 → https://www.twitch.tv/videos/565398183
有料部分には特に何もありません。ご支援いただければ今後も世界大会前等に記事を出すモチベーションになります。