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私の会社の産業医

私の会社には常勤の産業医の先生が1人います。
彼は若くて、今まで出会った医師の中で最も気さくに話せる素晴らしい先生です。
私にとっては初めての産業保健分野でありましたが、一緒に働く保健師はおらず先生をロールモデルにすることが多くありました。

医師と保健師では職種の違いがあるので、すべてを先生になぞらえて行うことはできませんが、面談の行い方については先生からインスピレーションを受けました。

私自身、保健指導にしろ健康相談にしろ、面談が大の苦手でした。
その理由は腹落ちのポイントがよく分からないから。産業看護職の領分で、どこまで話して、話しを聞いて、気の利いたアドバイスをするということが、考えれば考えるほど難しく思ってしまい、面談に苦手意識を持っていました。

そこで私は先生の面談を一語一句逃さずに、相槌も含めてメモに書き起こしていました。
私の職場では産業医面談を保健室で行うので、先生の面談を聴くことができるという非常に恵まれた環境にあるのです。
そこでわかってきたことがいくつかありました。

まず1つ目が、先生は絶対に目的を明確化してぶらさないことがわかりました。最初に必ず面談の目的を対象者に確認します。私が面談を依頼するときも必ず目的の明確化をしています。
また、健診の事後措置で面談に来た方から、メンタル不調を匂わせた(明確には口にしない)としてもその面談では事後措置に焦点を当て、その方がメンタルの相談も希望するのであれば日を改めていました。
私としては「あれもこれも答えなきゃ」という気持ちで面談に臨みますが、1回1回の目的を達成しつつ、面談の回数を重ねていくことで「よく分からない面談」にはならないことに気づきました。

2つ目が、対象者の背景を丁寧に聞き取っていくこと。
先生は細かいところまで聞き取るのと、曖昧な表現に対しては「もう少し詳しく教えてください」、「つまりこういうことですか?」など明確な言葉に置き換えていきます。先生の面談を聞きながら、自分でもどう答えるかシミュレーションをしているのですが、私だったらここは聞き流しちゃうかなということも先生は掘り下げています。
先生はよく「その人の生活が具体的にイメージできるように聞き取りをしている」と話しています。面談での質問を振り返ると、これはどんな意図をもって聴いているのだろうかという背景まで探ることができます。

3つ目は、気の利いたアドバイスができるのは先生の才能ということ。
先生は面談の締めくくりが上手です。先生の面談に立ち会うたびに自分じゃこうはできないなと痛感します。それは医療や健康の幅を超えたアドバイスができるから。医療の枠を超えて、仕事の仕方や価値観の置き方など幅広いアドバイスをされています。
私も最初はこれを目指して、どんなアドバイスができるかと考えるものの、面談相手は年上であったり、自分よりもはるかに会社のことをよく知っている人ばかりで自分ができるアドバイスはあまりありません。むしろ「そんなこと言われなくてもわかってます」と思われるのが怖くてできません。ということで、気の利いたアドバイスは先生の人間性であったり、経験であったり、立場からできるものであるので、こればかりは完コピは難しいということに気づきました。気づけただけでも進歩ととらえて、ゆっくり伸ばしていきたいと思います。

以上が、面談の書きおこしをやってみて気づいたポイントです。そして、もう1つ気づいたことは、一見、先生の面談はすごい、まねできないと思ってしまいますが、アセスメントの方向性は合っていたり、導いた解決策は一致していたりと私の面談も間違いではなかったんだということです。面談をテキストにすることで、先生は言葉が流暢だったり、ノンバーバルなコミュニケーションが上手だったりするので上手に見えるということも発見しました。

先生から盗めることはすべて盗もうと思う一方で、保健師機能だからこそできる面談にも今後目を向けていきたいと思います。保健師だからこそ対象者に寄り添ったり、チームとしての保健師の役割も考えて支援を行っていきたいと思いました。

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