見出し画像

#ワーク・エンゲイジメント 健康経営と生産性向上の合言葉

 こんにちは、保健師のたむらです。

 皆さんは「ワーク・エンゲイジメント」という概念をご存じですか? 
簡単に言うと”健康で、いきいきと働く”という考え方です。

 近年は労働力人口の減少から良質な人的資源を確保することが多くの企業で課題となっています。 そこで注目を集めているのが、この「ワーク・エンゲイジメント」です。 従業員のワーク・エンゲイジメントを高めることで、生産性が高まり、離職率が減少し、健康増進に寄与し、well-beingにつながります。 
 私自身、産業保健師に転身するにあたり興味深い概念だと感じているので、今回はワーク・エンゲイジメントについて記事にしたいと思います。

ワーク・エンゲイジメントとは?

 ワーク・エンゲージメントとは、主に社員のやりがいや仕事に対する誇りといったポジティブな感情や、仕事に主体的に取り組むなど充実した心理状態を示すもの。 「社員にとって働きやすい環境づくり」を考えるうえでも重要な要素です。 
(JTB「ワーク・エンゲイジメントとは?定義・高める方法・組織づくりのヒントと解説」)

 最近では各企業がHP上で取り組むべき課題と明記している場合もあり、JTBでは上記のように記載がありました。

 ワーク・エンゲイジメントは1990年頃から、経営・人事・コンサルタント領域で使われるようになりました。 この考え方を学術用語として定義したのは、ユトレヒト大学のシャウフェリ教授で、「バーンアウト」の対義語として位置付けています。

 仕事に熱中していれば、それで良い?

 バーンアウトに並んで、ワーク・エンゲイジメントと関連する概念として「ワーカホリズム」と「職務満足感」があります。 それらの相関を図示すると以下のようになります。

画像1

 バーンアウトは「燃え尽き症候群」とも言われ、仕事に疲れ切っている状態であるため、ワーク・エンゲイジメントと対極に位置することは納得できますね。 

 「職務満足感(Employee Satisfaction:ES)」はワーク・エンゲイジメントと同義的に使用されることもありますが、少しニュアンスが異なります。 富士通のHPでは以下のように整理されていました。 

ESの場合は、従業員の満足度を上げるためのアンケート調査に主眼が置かれ、高めた組織の力を企業の業績向上に結び付けようとする試みは積極的におこなわれませんでした。 実際に、従業員満足と企業の業績には明確な相関性は少ないという調査結果もあります。 これに対し、ワークエンゲージメントでは、その目的を企業の業績向上というように、明確に定めている点で異なります。 
(富士通「ワークエンゲージメントとは? 「尺度、意味、定義や経営に与える影響」)

 「ワーカホリズム」は活動水準が高く、仕事に多くのエネルギーを注いでいる点でワーク・エンゲイジメントと共通していますが、ワーカホリックの人は「脅迫的に」、エンゲイジメントの高い人は「楽しんで」働く傾向を持っている点で異なります。 また、エンゲイジメントの高い人は内発的動機付けによって仕事をしているのに対し、ワーカホリックでは罪悪感や不安を避けるために「仕事をせざるをえない」状態でもあります。 
  この両者について、生産性の観点から比較した研究では興味深い結果が得られました。 それは「ワーク・エンゲイジメントは、心理的・身体的ストレス反応とは負の関連を、生活満足感および仕事のパフォーマンスとは正の相関を持ち、ワーカホリズムはまったく逆の相関を持った」というものです。 つまり、一見仕事に熱中して取り組んでいるように見えたとしても、いきいきと仕事をしているのか、それとも仕事に追われ、苦痛に思いながら仕事をしているのかを見極め、後者の場合は適切な介入をしなければいけません。

産業保健師目線で見るワーク・エンゲイジメント

 産業保健分野ではメンタルヘルス対策としてワーク・エンゲイジメントの概念を活用していく必要があります。 従来のメンタルヘルスというと、うつをはじめとする心の「不調」に主眼が置かれ、マイナスのイメージを抱くことが多い印象でした。 一方でワーク・エンゲイジメントの概念には「いきいきと健康に働く」というプラスの要素が入っているため、より視野を広げたメンタルヘルス対策を行っていく必要があります。 
 また、産業保健部門だけでなく、人事・経営部門との協調が必要不可欠となってきます。 

終わりに

いかがでしたか?

今回参考にしたのは、以下の書籍です。 
より詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。

https://www.chosakai.co.jp/publications/27132/




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?