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よりみち通信11 ブックカウンセリング「東京」―都知事選に想いをよせて―

普段、自腹で新刊を買うことがめったにない私が、「こ、これは!」と思って、つい書店に走って買ってしまったのが、石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋)

タイトルと表紙がよくある芸能人の暴露本っぽくて、「どうなのよ?」と思っていたのですが、ページを開けたが最後、ほぼノンストップで一気に読み切ってしまいました。

ノンフィクションとはいえ、何が「真実」なのかは誰にも(多分、本人でさえも)わからないわけですが、彼女の周りにいた人々からの証言が「嘘つき!」の一言に集約されてしまうところがなんとも。

政治家たるもの、その手腕さえしっかりしていれば、人柄、人格といった部分はどうでもよい、という意見もありましょう。しかし、彼女の場合、どうもその肝心の政治家としての能力もあやしい感じなのです。

東京都知事に就任した時の「7つのゼロ」の公約のうち、達成できたのは一つだけ。そして、私もこの本を読むまですっかり忘れていたのですが、「築地市場移転の問題」「東京オリンピック競技会場見直し問題」も彼女のもとで紆余曲折したのち、いろんなことが破綻したまま幕引きされていたのです。

問題が起きた瞬間は、メディアも大きく報道するので世間の注目度も高く、その解決方法に注目が集まります。

しかし。

時がたつにつれ、私たちは多くのことを「忘れ」るのです。そして、忘れたが最後、その問題が解決したのか否かの検証すらされず、次なる「問題」にとびついてしまう…

そんな我々の愚かな習性を、小池百合子はよーく知っている。そして巧みなパフォーマンスで、自分が「やってる」感をうまく演出するのです。

さて、ここで問題なのは、小池の「狡賢さ」なのか、我々の「愚かさ」なのか。

コロナ禍で、毎日のように彼女の言葉を聞き、パフォーマンスを拝見しました。正直、『女帝』を読む前までは、「安部総理よりはマシかも」とちょっと思っていましたが、読んだ後はかつての彼女の「クールビズ」や「風呂敷パフォーマンス」を思い出し、思わず失笑です(東京アラートって、何だったんでしょうね)。

来年、もし現都知事の下で東京オリンピックが開催されるとしたら、一体どんな有様になるのか。不謹慎ながらちょっと楽しみな東北人なのでした。

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