【国語読解の新定義】

目次
(1)本文の『読み』の新定義
(2)本文「読み」の新定義を「解き」につなげる


(1)本文の『読み』の新定義
 国語読解においてとかく「読み」の過程で多くの受験生は、「文字追い」をしがちです。それは、ただ次から次へと連なる語群の流れてくるままに目で文字を追い、自分の勝手なイメージや解釈をあてはめ続ける行為のことです。この悪習にはまっている場合は、全文読み終わったときに、『何が書いてあったのかわからない。特に前半の内容を覚えていない。』という感想をもつ時です。皆さんも身に覚えがありませんか。この「文字追い」をしていると、いくら多数の文章や問題を読解していても、何も身に付きません。ただ量が増えるだけで、質は上がらないですね。
 そこで大切なのが【スキャン作業】です。つまり、【何が述べられているのか】あらかじめ【類推】し、その【確認】として本文を読解していくことです。
決して自分勝手に想像すること、解釈することではなく、【決められたルール】と【アイテム】に従って【類推】し、それに従って【読み】と【解き】の作業を繰り返していくことです。これが私の例年指導する受験対策の基本理念です。
 
では実際の【スキャン作業】を説明します。すべて本文を読む前にすべきことです。

① 出典や著者名がわかる場合は確認する。
Ⅰ 題名が「言語とは何か」など、「○○とは」だとそのテーマに沿ってその「特徴や性質、利点欠点」が論じられている。また、冒頭①段落でそのテーマを簡単に定義していたり、問題提起している場合が多いので、本文内容を【類推】しやすくなる。
さらに最終段落でそのテーマについての結論が述べられている場合が多い〈特に①段落に設問がある場合は可能性が高い〉ので、確認する。

② 小説などでの前書き・リード文を確認する。いわゆる5W1H「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」したのかを把握する。
また、戦時下や離婚調停中などマイナス要素の多い状況なのか、逆にプラス要素の多い状況なのかをつかむ。登場人物の心情行動はほぼこの状況に「合わせるか反発するか」である。


③ 設問文だけを読み、【いいかえ・対比・理由】のいずれを問われているのかを確認する。
Ⅰ 言い換え→「どういうことか」選べ。or抜き出せ。
「指示内容」を選べ。or抜き出せ。
「具体的な説明」選べ。Or抜き出せ。
        
Ⅱ 対比 → 「反対の意味のものは何か」選べ。or抜き出せ。
 「と異なるもの/適切でないもの」選べ。Or抜き出せ。
「適切ではないもの」選べ。

Ⅲ理由  → 「どうしてか/どういう理由か」選べor抜き出せ。     
 これらの出題を確認すると、本文の論理展開がある程度【類推】できてくる。

実例①

 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
○○○○○A----------------------------------。つまりそれは、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
また、B---------------------------------------------------------。○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○このように○○○○○○○○○○○○○○○○○○
しかし、C------------------------------------------------------。
したがって、D----------------------------------------------------。

上のような本文の設問箇所になっているなら、設問文は
傍線部Aー「言い換え」を問うタイプ
→直後の「つまり」以降に答えのヒントがあるパターン
傍線部Bー「言い換え」を問うタイプ
→2行後の「このように」以降に答えのヒントがあるパターン。
ただしAの答えも関連させている選択肢の場合もある
ー「対比」を問うタイプ
→次段落の「しかし」以降との対比関係から、傍線部CDの答えと関連させて答えさせる時もある
傍線部Cー「理由」を問うタイプ
→段落冒頭に「しかし」があり、明らかに傍線部ABの内容に反論している箇所に傍線部Cがある。このことから、ここまでの内容に反論するだけの理由が必ずあります。それを問うパターン。
ー「対比」を問うタイプ
→段落冒頭に「しかし」があり、明らかに傍線部ABの内容に反論している箇所に傍線部Cがある。このことから、「対比」を問い、むしろABの答えと関連させて解答させるパターン。
傍線部Dー「理由」を問うタイプ
→段落冒頭に「したがって」があり、直前段落の内容を「理由」として答えさせるパターンただし結論段落でもあり、ここまでの傍線部ABCの対比関係を含めた全ての内容を問う時もある。

右のように、設問タイプと本文中の設問箇所の確認で問われている内容とやるべき解答作業が本文を読む前から【類推】できます。なぜなら、現代文は本文文章内容は多岐にわたりますが、設問の「問い方」とそれに基づく「解き方」は決まっているからです。だから、この「問い」と「解き」のパターンを覚えると本文を読む前から本文の文章内容が「読み取れる」のです。今までの「冒頭から本文を精読し理解していく」こと一辺倒のやり方とは一線を画しています。
 確かに本文精読はとても大切です。本文を丁寧に読み、理解し、細部にもこだわりつつ解答していくことは大変意義深く練習になります。しかし、個々人に習熟度に格差が生じてしまいます。問題なく習得できる人はもちろん素晴らしいのですが、そうではない、いくら「本文を丁寧に読み、理解し、細部にもこだわりつつ解答していくこと」を繰り返しても、肝心の「得点力」に結びつかない場合が残念ながらあります。また、自分の「読み」が本当に正しいのか、解答に結びつく正しい「読み」をしているのか確信が持ちづらく、客観的ではありません。こんな不安な状態で僕は受験生の皆さんを試験場に送り出したくはありません。
 そこで、ここまで解説してきた「問い」と「解き」のパターンを覚え、本文内容を設問目線から見ていくことを提唱しているのです。パターンが明確なので、自分が正しい本文理解に基づき、正しい解答作業をしていることが、その作業中に実感できるからです。

(2)本文「読み」の新定義を「解き」につなげる
実例①で示した「問い」と「解き」のパターンから、実際に「解く」ための作業にもパターンがあります。

レッスン1―傍線や空欄を含んだ一文をSVOCに分け、いくつかの語句に分ける。さらに分けたSVOCにスラッシュ【/】をつけ、文の構成要素として区別する。プラス・マイナスが取れるときには、プラスの部分に をつけ、マイナスの部分に をつける。 

これは設問箇所の文字通り「論理分析」です。設問の箇所を含んだ一文の文構造を英語のように分解し、主述関係(SV)修飾被修飾関係(OV/S=C/O=O)などに分けて「何がどうした」「何をどうした」「何が何だ」「何を何に何した」などのように単純な論理に変換してしまいます。現代文はとかく回りくどく説明しがちなので、英語並みに合理化単純化します。この時点で語学学部系(上智 独協)などは、選択肢がこの単純化した論理と一致するしないで選べてしまう場合が多いです。さらにその論理が対立を含む場合、プラスマイナスが取れる場合に赤線と青線を付けて区別します。

レッスン2―傍線や空欄を含んだ一文中に含まれている指示語に二重傍線を引き、その指し示す元の語句に置き換える。
レッスン3―傍線や空欄を含んだ一文中に主語や目的語が含まれていない時には、その
主語や目的語を補う。
レッスン4―重要接続語【つまり・すなわち・要するに・したがって・だから・なぜなら
・しかし・けれども・ところが】を傍線や空欄の周辺から把握し、次のよ
うなチェックをする。

▽ 逆接・対比マークをつける・前文と反対=『しかし・だが・けれども・実は・一方・それに対して・それに反して』など 
△ 順接・要約・条件句マーク=
①『順接・だから・したがって・それゆえ』など
②『並列・添加・また・しかも・さらに・そのうえ』など
③『理由・なぜなら~から・それというのも~ため』など
④『要約・つまり・すなわち・要するに・言い換えれば・いわば』など
⑤『条件句・~場合・~時・~ならば・~として』など 

レッスン1のあとに「論理化」された設問箇所周辺にレッスン2~4によって実例①でも示したように客観的に解答根拠箇所を「スキャン」して読みます。漠然と読むのではなく、探すべき論理を頭において、赤線と青線を付けつつ、また接続詞指示語を把握しつつ、あくまで「探し」ます。設問箇所の分析があるから、キーワードやキーロジックが明確化されており、「探す」ことができます。逆にただ本文を読むことだけ、だと、設問にリンクした「読み」が出来ず、「どこまで読めばいいのかわからないまま」、いつしか読み終わってしまい、無駄になります。

今回の【類推】してから【読む】【解く】ことは、単なる「文字追い」の段階を脱し、論理的に【読解する】うえでとても大切な考え方です。
今回の【国語読解の新定義】に興味を持っていただけたなら、次回はより細分化した設問タイプに基づく具体的な【解答作業】の説明をしたいと考えています。
よろしくお願いします。皆さん一緒に頑張りましょう。

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