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レアアース・希土類元素のリサイクル抽出スタートアップ10社(国内3社・海外7社)

針の穴のようなニッチキーワードでスタートアップ探索とキュレーションを行うHarry's Search。今回のテーマは「レアアース・希土類元素のリサイクル抽出」です。

概況

レアアース・レアメタルのリサイクル技術が注目されています。その背景にあるのが天然資源の枯渇リスクとレアメタル・レアアースの安定供給の確保です。現在必要な資源を自国で生産できる国は限られており、レアメタル・レアアースの大半を中国からの輸入に頼っている国が多く日本もその一つです。また電気自動車(EV)のように電力源にネオジム磁石を用いるモーターやハイテク機器の需要は今後大きく増加する見込みで供給量の安定化も課題です。この2点も踏まえ、近年の情勢を鑑みても中国からの輸入依存から脱却したい国・企業は多くサーキュラーなリサイクルループを構築したい要望が高まっておりリサイクル技術の注目度は高まる一方であると言えるでしょう。日本でも早稲田大学と日産による共同開発や、三菱マテリアルなどがこの分野に取り組んでいます。

この記事ではレアアースのみに焦点を絞ったレアアース回収・抽出・リサイクル技術を持つ企業を10社ハイライトします。今回は社数も多くないため様々な方式の企業をまとめて掲載させて頂いています。本記事ではレアアースのスカンジウム[Sc]、イットリウム[Y]、ランタン[La]、セリウム[Ce]、プラセオジム[Pr]、ネオジム[Nd]、プロメチウム[Pm]、サマリウム[Sm]、ユウロピウム[Eu]、ガドリニウム[Gd]、テルビウム[Tb]、ジスプロシウム[Dy]、ホルミウム[Ho]、エルビウム[Er]、ツリウム[Tm]、イッテルビウム[Yb]、ルテチウム[Lu]の17元素を対象としています。また別記事にてレアメタルなども取り上げる予定ですのでぜひそちらもご覧ください。

最終更新日:2022年11月17日
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それでは、レアアース・希土類元素のリサイクル抽出技術を持つスタートアップ全10社(国内3社・海外7社)を見ていきましょう。

スタートアップリスト

01. HyProMag

英バーミンガム大学磁性材料グループ(MMG)で開発された水素ベースプロセス技術HPMSを用いてHDDなどの電気製品からNdFeB合金粉末を回収。

企業:HyProMag(Birmingham, UK)
創業:2018
資金調達:シード(総額€2.6M)
投資家:Mkango、Innovate UK、Maginito など

Hydrogen Processing of Magnet Scrap(HPMS)と呼ばれる常温・常圧で水素に暴露する特許取得済みのプロセス技術と圧力多孔質ドラム装置を用いて水素を吸収させることにより使用済み廃棄物中のNdFeb磁石が体積膨張で約30-40分でバラバラになり、消磁され、抽出を容易にする。現在あるパイロットプラントではバッチごとに最大400kgのNdFeb粉末を高純度で分離可能で新しい磁性材料に再利用可能なため当レアアースのリサイクルサプライチェーンを構築することが可能。イギリス政府主導のRaREプロジェクトにもBentley社らと参加しておりレアアースリサイクルのサプライチェーン実証を実施。創業者はバーミンガム大学MMG元所長であり水素分解法の創始者のRex Harris教授。


02. エマルションフローテクノロジーズ

新規溶媒抽出技術エマルションフローを用いてレアメタル・レアアースを高純度で抽出する日本原子力研究開発機構発スタートアップ。

企業:エマルションフローテクノロジーズ(茨城, 日本)
創業:2021
資金調達:シリーズA(総額7億円)
投資家:リアルテックファンド、本田技研工業、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、KDDI Green Partners Fund、岡三キャピタルパートナーズ など

使用済み核燃料に含まれる元素を高度分離する研究から生まれた新規溶媒抽出エマルションフローは互いに混じり合わない液相間における物質の分配を利用することで目的成分のみを選択的に抽出する溶媒抽出法の一つ。「送液」のみの1工程で溶媒抽出が可能な新規技術で、従来法と比較し10倍の生産性で99.99%以上の高純度でレアメタルを回収可能。現在この技術を応用した多段エマルションフロー技術も開発しており、従来比100倍の生産性でレアアースの高純度回収を低コストで実現することを目指している。JOGMECとの共同開発契約、NEDO STS採択、三菱マテリアルと共同開発研究推進など多くの主要プレーヤーと協業も進めている。


03. REEcycle

米ヒューストン大学で開発された独自溶剤を用いて廃棄物からレアアース15元素を低温・低圧・高純度に回収可能な特許プロセス技術を開発

企業:REEcycle(Texas, US)
創業:2013
資金調達:Grant(総額$1.2M)
投資家:National Science Foundation、DOE、Texas A&M New Ventures Competition など

従来のアシッドベース溶剤に代え有機金属構造体(MOF)ベースの独自溶剤を開発し鉄とホウ素をレアアースから"分離"させる特許技術を開発。低温・低圧・低消費エネルギーで15種類の元素を使用済み風力タービンや電気自動車などの廃棄物から99.8%の純度で回収可能だが、現在はネオジム・ジスプロシウム・プラセオジム・テルビウムの4つにフォーカス。溶剤投入の前工程として機械研磨によるニッケルメッキ層剥離と効率的に溶剤を反応させるための磁石細破断を行い、フィルター濾過で純度を上げ、回収されたREEをOEMへ販売する事業モデル。溶剤はpH6の微毒性だが中和工程を経ることで再利用可能で環境負荷も低い。


04. REMRETEch

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