株式会社キリン堂ホールディングスのMBOについて

同じベインキャピタルが関与している株式会社ニチイ学館(「ニチイ学館」)のMBOと比較すると、今回は公開買付者の親会社の株式を創業家に渡すため、対象会社と公開買付者の合併にあたり、いわゆる三角合併を用いるところが特徴的。

ニチイ学館のMBOでは、ベインキャピタルの保有する株式会社BCJ-43(「BCJ-43」)が保有する株式会社BCJ-44(「BCJ-44」)が公開買付者としてニチイ学館を公開買付等により買収し、創業家はBCJ-44に再出資することによってニチイ学館の経営に関与する形を取っております。なお、開示情報では、BCJ-44とニチイ学館に関しては合併が行われる予定の有無については特に記載がありません。

これに対して、株式会社キリン堂ホールディングス(「キリン堂HD」)のMBOでは、ベインキャピタルの保有する株式会社BCJ-47(「BCJ-47」)が保有する株式会社BCJ-48(「BCJ-48」)が公開買付者としてキリン堂HDを公開買付等により買収しますが、創業家の一部はキリン堂HDの株式を保有したまま、BCJ-48とキリン堂HDは三角合併し、キリン堂HDの株式を保有した創業家の一部は、合併対価として取得したBCJ-47の株式を保有することなります。BCJ-47は、ニチイ学館のスキームで言えば、創業家が一部株式を保有するBCJ-44ではなく、その親会社であるBCJ-43に該当するEntityです。

どうしてこのようなスキームの差があるのかは明確に記載はないものの、一つの理由は、ニチイ学館では、買収ローンの借り手はBCJ-44=公開買付者ですが、キリン堂HDでは買収ローンも少し複雑で、BCJ-48=公開買付者が買収ローンの借り手であるのに加えて、BCJ-47=親会社もBCJ-48に出資するにあたり、一部の金銭を株式会社ソリューションデザインが無限責任組合員となっているメザニン・ソリューション4号投資事業有限責任組合(「メザニン・ソリューション」)からの融資で賄う形になっているためではないかと考えられます。BCJ-48に創業家が少数株主として存在する場合、BCJ-47がBCJ-48から剰余金配当で金銭を吸い上げるようなケースだと、メザニン・ソリューションへの返済より先に、(ベインキャピタルではなく)創業家だけが配当を受けることになってしまうため、BCJ-48の株主として創業家が残るのではなく、メザニン・ソリューションへの返済後、ベインキャピタルと創業家が配当を受ける形とするために本件のようなスキームを採用したのではないかという印象を持っています。

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