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東京地裁令和5年4月17日判決について思うこと

商事法務No.2340に載っていた東京地裁令和5年4月17日判決を読んでいるのですが、「本件承諾を得られたか否かに関し、正確かつ適切な情報提供をする義務を負っていたと認めるのが相当」としており、M&Aの相手方からの情報の真実性・正確性に関して独自の調査・検証を行うことがアドバイザー(仲介者)としての義務の履行として求めれている旨を前提とした判決であり先例として実務上大きな価値のある判決ではないかなと思いました。

個人的には、この判決を受けて思う点は2点あり、一つは、よくM&A仲介業者とのアドバイザリー契約や仲介契約(「AD契約」)に、「[M&A仲介]は、候補先その他の第三者から提供を受けた情報の真実性、正確性、妥当性、網羅性について独自の調査・検証を行っていないことから、それらの情報の真実性、正確性、妥当性、網羅性について何れも保証するものではない。」という免責的な規定が入っていることがありますが、こちらの免責規定が入っている場合、M&Aの相手方からの情報の真実性・正確性に関して独自の調査・検証を行うことがアドバイザー(仲介者)としての義務から外れるのかどうなのか?免責規定の有無にかかわらず、本判決によって認められたM&Aの相手方からの情報の真実性・正確性に関して独自の調査・検証を行う義務は存在するのかであり、もう一つは、M&Aの買い手又は売り手(対象会社)のみを代理するいわゆるフィナンシャルアドバイザー(FA)の場合とM&A仲介業者の場合で、M&Aの相手方からの情報の真実性・正確性に関して独自の調査・検証を行う義務の程度が異なるのかです。M&A仲介業者の場合、M&Aの売り手であろうと買い手であろうと、M&A仲介業者のAD契約の相手方であり、情報の提供を直接受けることが可能な立場でありますが、FAの場合、例えば買い手のFAであれば、売り手はAD契約の相手方ではないため、情報の提供に関しては一定程度制限を受けつつ提供されるものであると考えられ、相手方からの情報の真実性・正確性に関して独自の調査・検証を行う義務の程度は自ずから違いがあり、FAに比べてM&A仲介業者はより高度な義務が課されていると考えられるのではないかという疑問があります。
これら2つの疑問に関しては、今後議論がなされるM&A業界に一定のコンセンサスが生まれることを期待したいです。

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