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気温が上昇するのはなぜ?

世界経済や地域情勢など、幅広いテーマについて討議されるG7サミット(先進7カ国首脳会議)が5月19-21日、広島で開催されます。その中でも重要なテーマのひとつが気候変動です。

昨年ドイツで行われたG7サミットでの合意「2035年までの完全または大部分の脱炭素化」が、より具体的な方法や数値を持つ目標へと前進するかどうかに注目が集まっています。

日本でも猛暑や豪雨、大雨による災害などが頻繁に起きるようになり、気候変動の影響が感じられるようになってきました。気候変動が世界的に大きな問題であり、解決に向けた努力が必要であると感じている人は多いでしょう。

気候変動の歴史

気候変動問題を世界が初めて認識したのは今から44年前の1979年、ジュネーブで行われた世界気候会議(FWCC)においてでした。

第1回のFWCCでは、人間の活動が気候に大きく影響しており、放置することは極めて危険として、気候や気象だけでなく、エネルギーや食糧、水資源、土地利用、農業、林業、漁業、海洋資源、保険、経済、社会の分野から専門家が約350名参加したとのことです。

以来、さまざまな場所でたくさんの声が上げ続けられてきましたが、世界の平均気温は上がり続け、2010〜2019年には1.06℃上昇しました。

気候変動のこれから

世界中の人、特に先進国に住む人がこれまでと同様の生活を続けた場合、人間が生存できないレベルにまで地球環境が変化する、取り返しのつかない閾値が数十年後に近づいていると言われており、暗澹とした気持ちになります。ときには見て見ぬふりをしたり、それほど大きな問題ではないと自分に思いこませて現実逃避したくなったりもします。

けれど、見て見ないふりをしても現実逃避しても問題が解決することはありません。向き合わないまま時間が過ぎれば、問題がもっと大きくなるだけであることもわかっています。

気候変動は地球に住んでいる誰もが逃れられないテーマです。問題を解決に向かわせるためには、ひとり一人が問題の存在を認識し、理解を深め、行動を起こすことが、やはりどうしても求められているのです。

個人レベルで何をするか

ただ、個人レベルで具体的に何ができるのかという問いに対しては曖昧なままだという人も、多いのではないでしょうか。

このマガジンは、気候問題についての基本的な知識を確認し、個人レベルで何ができるのかを探っていくとともに、筆者自身を含めできるだけ多くの人が気候変動問題の解決に向けた小さな行動を起こし、継続するきっかけにしていきたいと思っています。どうぞ、おつきあいください。

なぜ気温が上昇するのか

さて第1回目の今回は、そもそもなぜ気温が上昇するのか、気候変動の理由についてです。

人間の生産活動によって大気に含まれる二酸化炭素やメタンの割合が増すことで、地球の気温が上がります。これは二酸化炭素やメタンが気温の上昇を促す性質を持っているからです。このことから、二酸化炭素やメタンは温室効果ガスと呼ばれます。

気候変動の大きな理由は、大気に含まれる温室効果ガスの濃度が増したことです。気候変動問題は、二酸化炭素やメタンの排出を減らし、削減・吸収を促すことで解決に向かうと考えられています。

このように理屈はそれほど複雑ではありませんが、解決するのは簡単ではありません。なぜでしょうか。

それは、産業革命以降の現代社会が二酸化炭素を排出する石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料をエネルギー源として成立しており、あらゆる産業と密接で複雑な関わりがあることがひとつです。

フードシステムも気候変動の大きな要因のひとつ

温室効果ガスは田畑や牧畜用地などの農地からも排出されます。人間の食糧を生産するための活動全体から排出される温室効果ガスは、温室効果ガス排出量全体の30%。つまり人間の食にまつわる過程が気候変動を約1/3の割合で後押ししていることを意味します。

80億に達した人口を養うための農地は地球の陸地表面積の4割を占めており、また、増加する食肉の生産によっても二酸化炭素が増えています。中でも牛肉を生産するために使われている土地の面積は突出しており、家畜全体を育てるために要する面積は、ブラジルの面積の4倍近い約3700万平方メートルに及びます。

さらに二酸化炭素を吸収する機能を備えた森林が農地に変換されることによって、大気中の二酸化炭素が増える負のスパイラルが見られます。農地が二酸化炭素を発生させる理由は土の中の微生物の呼吸と、植物の根の新陳代謝です。微生物の呼吸により発生する二酸化炭素は土壌から発生する二酸化炭素の7割を占めると考えられており、気温が上昇するに従ってさらに増加すると想定されています。

そこで第2回目以降では、農地や土壌、森林と二酸化炭素の関係を見ていきたいと思います。

文:森野みどり

参考:
IPCC 第6次評価報告書の概要 -第1作業部会(自然科学的根拠)|環境省
世界気候会議と世界気候計画|日本気象学会
気候変動と環境危機 いま私たちにできること |河出書房新社
地球温暖化で土壌から排出される二酸化炭素の量がどれほど増えるのか|国立環境研究所


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