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ブルーアーカイブ事件簿『サイコロラン事件』〜炎上の理由、そして先生のすべき反応~


1.騒動の概要

 10月26日から未明にかけて、ブルーアーカイブとその界隈において騒動が起こりました。
 同日開催されたゲーム内イベントにおける報酬の設定に多大なミスがあり、これまでのこのゲームでは考えられない、異常な量のゲーム内リソースを瞬時に獲得できる状態が発生してしまった、という内容です。この件は結局イベントの開催から2時間ほどで緊急メンテナンスが開始され、翌朝にはこれまた異常な規模の補填の配布とプロデューサーからの謝罪文の発表がされるという事態となっています。
 これだけ聞くとままあるソシャゲの炎上なので、このゲームをプレイしていない方々は特別気にかける必要もない話です。ですが、このゲームのプレイヤーにおいても、今回の事態の問題点や不満が表出している理由を把握できていない層がいるようです。    
 ブルーアーカイブのようなソーシャルゲームにおいては、ある程度のプレイヤー間の分断は起こっても仕方のない部分もありますが、それでも問題点への理解は可能な限り広範にされるべきと思います。そのためこの記事では、一プレイヤーの目線から今回の騒動についての簡単な分析と思うところを記していきます。人によっては気分を害する表現があったり、憶測や想像で語っている点があります。ご留意ください。

2.騒動の前提:ブルーアーカイブのゲーム性

 本題に入る前に、そもそもブルーアーカイブのゲームとしての性質を今一度確認したいと思います。
 ブルーアーカイブというゲームを一言で表すとすれば「育成ゲーム」となろうと思います。限られた入手量の育成用素材アイテムを使ってキャラクターを育成し、ステージやボス、対人戦を攻略し、報酬を獲得する。たった一言ですがこれがこのゲームの全てと言えます。ゲーム内で描かれる物語のクオリティについてはプレイヤーの皆さんならご承知の通りだと思いますが、ゲーム性については残念ながらそのストーリーの足元にも及ばないレベルの代物と言えます。それでも育成素材のやりくりという要素は、このゲームにおいて数少ないシステム面での面白さを見出すことのできるポイントです。このやりくりを少しでも楽にするために、そして対人戦で少しでも上を目指し、報酬の獲得を安泰のものとするために、一定以上のプレイヤーが課金をしてまで育成リソースの確保をし続けてきました。

3.騒動の問題点① 格差の大変動

 このゲームの性質を踏まえたところで、今回の運営のミスの何が問題となるのでしょうか。答えを簡潔に言うと、「膨大な差が生まれる、もしくは縮まる」という問題が発生しています。

 今回の報酬設定ミスにより、一部のプレイヤーは相当額の課金でも手に入らないレベルのリソースを極めて低コストで獲得できてしまいました。このゲームが完全ソロプレイであれば、「得したプレイヤー」が生まれるだけになるので、このミスは一向に問題になりません。しかし先に確認した通り、このゲームには対人要素があります。対人要素のあるゲームにおいて得したプレイヤーが生まれると、そのプレイヤーに蹴りだされて「損したプレイヤー」が生まれることになります。キャラクターを育成する対人ゲームにおいて、一部のプレイヤーだけが大量のアイテムを入手してしまうという事態は、多大かつまず埋まらないプレイヤー間格差を生み出してしまうことになったわけです。

 設定ミスの間に荒稼ぎしたプレイヤーがいて、自分はそうではなかったというだけでも大きなストレスなのですが、それまで課金してリソースを確保していたプレイヤーからすれば更に大きな不満が生まれることとなります。労せずしてかなりの課金額に相当するアイテムを手に入れたプレイヤーが現れ、場合によってはそのプレイヤーに対人戦で負けてしまい得ることに対して、平静を保てと言われてもどだい無理な話です。何よりも、せっかく課金までしてつけた他プレイヤーとの差を一瞬で埋められたとなれば、これまでの課金の意味がなくなってしまいます。本件の問題点、そして不満を持たれた原因の大半がこの格差の変動にあり、運営も事の重大さを理解していたがために物々しい謝罪文や大量の補填アイテムの配布を行ったのだろうと思います。ですが問題点はこれだけではありません。

4.騒動の問題点② 運営の対応、それに伴うプレイヤー間の分断

 ここまで何度か記述していますが、ミスが発覚し修正した後、運営は全プレイヤーにアイテムの配布を行いました。この対応自体にも少なからず問題があるのですが、その問題については後述するとして、この対応によって浮き彫りになったのはプレイヤーの本件に対する認識の違いでした。

 上述した通り、対人戦上位を目指しているプレイヤーは課金してまでアイテムを手に入れてきました。ですが実はこういったプレイスタイルをとっている層はマイノリティです。大半が対人戦はほどほどに流すか人によっては一切無視し、課金してアイテムを集めるというような行為も当然行っていません。そういったいわゆる「ライトユーザー」には格差が存在しないか認識されないため、今回の騒動について「数時間の緊急メンテナンスで大量の補填アイテムが得られた」程度にしか考えないケースが発生します。

 無論ライトユーザーの存在やこうした今回の騒動への認識自体には一切問題はありません。ですがこういったプレイヤーのうちの一部が、今回の件で不満を表明しているプレイヤーを見つけると問題が起こります。「何故まだ文句を言うんだ、こんなに沢山アイテムもくれたのに」と考え、不満を表明するプレイヤーを攻撃し始めてしまうのです。
 この件によって生まれた格差や縮んだ格差はそうそう元に戻らないため、実態としては半永久的に終わらない騒動となる可能性すらあります。ですが格差を認識していない彼らにとって、この騒動はアイテムの配布によって無事に終わったものであり、それでも尚不満を表明しているプレイヤーは、彼らにとって住処を荒らす悪となってしまうのです。運営対プレイヤーではなく、プレイヤー対プレイヤー。ゲーム内であればともかく、ゲーム外では本来あり得ない対立構造が生まれてしまうことは、この件の第二の問題と言えます。

5.どうすべきか:運営編

 ここまで示した通り、大きな2本の傷跡を残すこととなった今回の騒動ですが、問題を解決するために運営はどうすればよいのでしょう。これを考えるために、ミスが発覚した後の運営が取ることのできた対応について紐解いてみます。 

・運営ができた行動① アイテム補填
 既に何度も述べている、今回実際に運営が行った対応です。設定ミスにより獲得できた大量のアイテムのうち、最も致命的な格差となりうる部分を全プレイヤーが完全に埋めあわせられるように配布し、その他のアイテムについても相当の数を配布するという形が取られました。この方法はミス状況下で荒稼ぎしたプレイヤーが丸儲けという状態は変わらず、格差の是正や課金のメリットが軽薄化したことの解決はできていません。ただ騒動の問題点②の項で述べた通り、マジョリティのプレイヤーにとっては良い対応となっています。実質的にはトカゲの尻尾切りの形でヘビーユーザーを犠牲にしてしまっているうえ、上述したようなプレイヤー間の分断が起こってしまいますが、考えうる中ではベターな対応と言うしかなさそうです。

・運営ができた行動② ロールバック・個別対応
 ゲームの全状況をイベント開催前に戻し、改めて報酬の設定を修正して再開するというものです。おそらく、考えうる選択肢で唯一プレイヤーにとって完全に平等な対応です。格差の変動は消え去り、分断もおそらく大きくは起こりません。本来この方法をとるべきですが、運営の負担が膨大なものとなることは素人の私でも簡単に想像がつきます。同様に荒稼ぎしたプレイヤーのアイテムを修正したり、逆に荒稼ぎしなかったプレイヤーのみをターゲットに補填を行うといったような個別対応的な方法も運営の負担が大きいので、やはり取られない選択肢でしょう。実際にそうした対応を取ったとして、どれほどの時間がかかるか想像もつきません。メンテナンスや対応が長期化することは、プレイヤーにとっても運営にとってもデメリットになるものと思います。

・運営ができた行動③ イベント続行
 一部ではイベント報酬が減らされたことに対する不満もあるようです。その方々からすれば報酬の設定をそのままで続行すべきということになります。一見これもプレイヤーにとって平等な選択肢に見えますが、課金の意味を喪失させる点でやはり多大な問題があります。具体的に例示しますが、クレジットやレポートが無限に等しい数手に入るとするならば、それまで各コンテンツを必死でこなしてこれらのアイテムを確保してきたプレイヤーにとっては大損です。また、異常な設定でイベントを続行してしまうことは、このゲームの数少ないゲーム性であるリソースのやりくりの一部を消滅させることに他なりません。ゲーム性云々は置いておくとしても、特別依頼を行うプレイヤーはまず消滅してしまいます。そのため直前に記した②の対応同様、当初の誤った報酬体系での続行は、運営目線とプレイヤー目線とを合わせると損する存在が多くなる選択肢と言えます。

 思いつく範囲での対応の分岐を羅列してみましたが、全てに何らかの問題があります。結局ミスを発生させた時点でどうしようもなかったとしか言いようがありません。プロデューサーの謝罪文にもある通り、今後気を付ける以外の道は運営には無いように感じられます。

6.どうすべきか:プレイヤー編

 ミスをしたのは運営なのにプレイヤーがすべきことがあるのか、と見出しを見て疑問に思う方もいるかもしれません。個人的に、今回の騒動においてプレイヤーがすべきと考えていることが一つだけあります。
 それは「騒動に対する不満に対して不満を言わない」ことです。ここまでに書いてきた通り、今回の件で生まれた不満は補填があれば完全に消えるような性質のものではありません。余りにも執拗であったり、口汚い罵倒や罵詈雑言にあたるものは窘められるべきですが、不満が残って然るべき顛末であった以上は、不満を封殺することに正当性はありません。悪いのは運営であり、(法律上の概念としての)悪意でイベントを周回したプレイヤーはともかく、ほぼ全てのプレイヤーに非はありません。多くのプレイヤーがこの思考を持ってさえいれば、きっと前半に述べたようなプレイヤー間の分断が大きくなることはないと思います。

7.終わりに

 とりとめなく今回の騒動について考えたことや思うことを書いてみました。お見苦しい文章で本当に申し訳ありません。
 Twitter上ではブルーアーカイブのプロデューサーやスタッフと、韓国の清渓川を絡めたジョーク・ミームが流行しています。よくスタッフが清渓川のピラニアの餌食になっている印象ですが、今回の件で清渓川に沈んだのは運営スタッフではありません。課金を行っていたヘビーユーザーを筆頭にしたプレイヤー達です。どうすべきかの項でも述べた通り、この騒動の顛末は一部のユーザーの不満が度外視され、多数派のプレイヤーは喜び、運営は自ら起こしたミスの後始末のために一晩残業をしただけというものです。こうした結果に終わった中で、運営をこれ以上執拗に責める意味もないと考えてはいますが、過剰に持ち上げたりジョークとして風化させようとする風潮も個人的には快く思えません。何度も言いますが、この騒動で起こった変動は永らく元に戻ることはありません。今後もずっと火種として燻り続けて然るべきものと思います。
 イベント自体はヘッダーのユウカが言うように、運営もきっと大いに注力をしていたのだろうと感じられます。おそらくかなりの単純なミスのために、このイベントにケチがついてしまったことは本当に残念でなりません。


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