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モノローグ「茄子が降る」 第3稿

 男、茄子を持って詰め寄っている

だから、何で脚本通りじゃいけないの。
何で野菜が降るの。
何でその場で食べなきゃいけないの。
脚本に野菜の「や」の字もないのにだよ。

当たり前だろ。
命に係わるんだから。
身の危険を感じるの。
南瓜に。
よりにもよって、なんであんなでかいの仕入れてくるの。
あれ当たったら死ぬよ。
頭にあたったらジャック・オー・ランタンだよ

外だよ。足場組んでビニールシートかぶせただけのテント。
突風が入って軌道が変わるかもしれないだろ。
風ぐらいじゃ大丈夫?
風が吹くぐらいじゃびくともしないから、
かえって危ないだろ。

俺は虎が通ったか主人公に聞き続けてるし。
主人公は肉食い続けてるし。
お前は最後にトーチ持って踊るし。
充分不条理だろ、この芝居。

何でそこにさらに野菜を降らせる必要があるの。
南瓜も玉葱も人参だって降らせるのはダメでしょ。
脚本に一行も書いてないでしょ。
特にこの茄子!食べるんだよ!生で!

何を表してるの。
何の見立てなんだよ。
何のメタファーなんだよ。

俺の歯を心配して。
生人参でも、
生玉葱でも、
生南瓜でもなくて食べるのは生茄子でいいよって言ってくれたけど。

そうじゃないんだって、
茄子を食べることなの、
ナスゥゥゥゥゥウゥゥゥゥッ

お前と腐れ縁だから、
この話に乗っかったよ、
この歳で。

公園の敷地借りて、
イントレ組んでテントにして、
公演するって聞いたら、
昔の血が騒ぐじゃない。

脚本、これやるって渡されて、
嫌な予感はしたよ、
お前の大好きな不条理てんこ盛りでさ。

で、茄子だよ。
俺はね。普通にサラリーマンになって、
普通に結婚して、
普通の暮らしをしてるの、
意味もなく降ってきた茄子食って、
死にたくないの。

普通って何?って、
だから、そういう議論したいんじゃないの。
茄子には毒があるんだよ。
ソラニンっていう。
下痢、おう吐、腹痛、頭痛、めまい、死に至る場合もあるんだ。
みんな平気で食ってるって?

それは、花粉症と同じでみんな限界値に達していないんだよ。
俺は自分でわかるんだよ。
もう限界値が近いから。
食ったらやばいって。

なんだよ、その目は、
疑ってるのか。
俺のこと信じてないのか。

 間

正直に言うよ。
ダメなんだよ。茄子が。
あの皮が口に残る感じとスカスカした食感。
苦味と渋み、味が気持ち悪いだろ。
色が毒々しくて危ないだろ。
茄子を外してくれよ。
茄子が抜けると彩が寂しいかもしれないけど。
いいじゃないかまだ人参と玉葱と南瓜が残るんだから。

 間

え、ほんと、いいの、食べなくて。
じゃあ、落ちてきても茄子は食わなくていいんだな。
約束だぞ。
茄子は食わないからな。
そうだよ。命にかかわるんだから。

降るのは全然かまわない。全部茄子でもいいぞ。

でも、ほんとよく許可したよね。公園が。
仮設の小屋建てて、
野菜降らせて。
火のついたトーチ持って踊って。

え、最後はトーチで肉と野菜を刺して主人公に渡す?
フードフェスで許可を取った?

バーベキューの見立てかよ!!

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