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モノローグ「茄子が降る」 第2稿

 男、茄子を持って現れる

だからなんで茄子なの。
何で茄子が降るの。
何で茄子をその場で食べなきゃいけないの。

充分不条理でしょ。
この芝居。
虎が家の前を通ったかどうか聞き続けるんだから。

そこにさらに茄子を降らせる必要が何であるの。
南瓜も玉葱も人参も降らせるのはダメでしょ。
脚本に一行も書いてないでしょ。

何のメタファーなんだよ。
何の見立てなんだよ。
何を表してるの。

俺の歯を心配して。
生人参でも。
生玉葱でも。
生南瓜でもなくて
生茄子でいいよって言ってくれたけど。

そうじゃないんだって。
何で降らせるの。
何で食べるの。
何でナスゥゥゥゥゥウゥゥゥゥッ!!

お前と腐れ縁だから。
話に乗っかったよ。
この歳で。

でも、公園の敷地借りて、
イントレ組んでテントにするって聞いたら、
昔の血が騒ぐじゃない。

脚本、これやるって渡されて、
嫌な予感はしたよ。確かに。
お前の大好きな不条理てんこ盛りでさ。

で、茄子だよ。茄子。
俺はね。普通にサラリーマンになって。
普通に結婚して。
普通の暮らしをしてるの。
意味もなく降ってきた茄子食って。
死にたくないの。

普通って何?って。
だから、そういう議論したいんじゃないの。

茄子には毒があるんだよ。
ソラニンっていう。
だから危険なんだよ。

みんな平気で食ってるって?
そ、それはあれだよ。
花粉症と同じでみんな限界値に達していないんだよ。
俺は自分でわかるんだよ。
もう限界値が近いから。
食ったらやばいって。

なんだよ、その目は。
疑ってるのか。
俺のこと信じてないのか。

 間

正直に言うよ。
茄子がダメなんだよ。
あの皮の口に残る感じとスカスカした食感。
苦味と渋み。
茄子を外してくれよ。
茄子が抜けると彩が寂しいかもしれないけど。
いいじゃないかまだ人参と玉葱と南瓜が残るんだから。

 間

え、ほんと、いいの、食べなくて。
じゃあ、落ちてきても茄子は食わなくていいんだな。
約束だぞ。
茄子は食わないからな。
そうだよね。命にかかわるもんね。

降るのは全然かまわない。
代わりに人参食ってやるから。

でも、ほんとよく許可したよね公園が。
仮設の小屋建てて。
野菜降らせて。
火燃やして。

だって、お前、俺の出番の後で、トーチ持って踊るじゃない。
脚本にないのに。
だって火を燃やすんだよ。
しかも踊るんだよ、タヒチのダンスみたいに。

バーベキューで許可を取った?

ふざけんじゃないよ。
バーベキューの見立てかよ。

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