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モノローグ「山のあなた」 第二稿

『山のあなた』

作:harlequin moom

 冬の朝、ベットに父親が寝ている。母親がそばにいる。

父さん、聞こえる?
息はしているみたいだよ、痰は吸引した?
息は静かだから痰は大丈夫かも、酸素濃度あげとこうか
ストーブつけよ、母さんも暖かくして

今日も雪かな、もう一日いるよ
仕事は大丈夫だよ
ああ、体
厄年は来年だよ
よく育ったねって
いい大人に言うセリフじゃないよ
小さい頃の手術の後は消えてないけどね

息、静かだね、肩で息してないもんね

 布団をめくる

チアノーゼ出てる、マッサージしないと
馬油ちょうだい
下から上ね、わかってるよ

 マッサージを始める

・・・冷たい足だ
ストーブもっと強くして
(顔のほうに向かって)父さん、聞こえる?
(父親に向かって)苦しくない?
聞こえてるさ

眉毛もなくなっちゃって
押し売り追い返したって
(笑いながら)スキンヘッドで眉毛もなくて、こんな顔見たら逃げ出すよね
まだその時は動けたんだ

 マッサージを続ける

伯母さんたちに連絡したよ
びっくりしてたよ
知らせてなかったんだ
遠慮するにもほどがあるよ

学費出してくれた話は何度も聞いたよ
地元に残らなかったからって気にしてないさ

ん、いや、来られないとは言ってた
やっぱりって
言ってみなければわからないじゃないか

 マッサージ続けている

色がもどっってきたよ、もう少しつづけよう
息が深くなったようだよ
これなら大丈夫
足にも赤みが

馬油、もっとちょうだい
手もマッサージしておこうか

でかい手だよね
この前知ってる?
何かしてほしいことはないかって聞いたら
(お金のサイン)これだった
こんな状態で何に使うんだっていうの

不義理でもしたの
ん、伯母さんたちにさ
さあねって
知らないんだ

何か馬鹿やったのかもね
結婚式で父親に泣かれた新郎っていうのも珍しいよね
みんな笑ってたよ
高校の時は、部活で遅くなるとバス停で待ってたりしてさ
あの感覚は何なんだろうね
小さい時は何かっていうと肩車でごまかしてさ

 マッサージの手を止める

ずっと咳してたじゃないか
でっかい病院行けって言ったのに
気が付いたら脳転移だって

違う?
違うって病院行ってたの?
ん、伯母さんたちの話
もう迷惑かけられないってどういうこと
金借りてたって
え、なんで
俺?
俺の手術の金?

返せなくなったから?
あわせる顔がないって
今も返してたの?

 父親の顔をのぞき込む

父さん
父さん、これ(指でお金のサイン)
これだから(指でOKのサイン)

【意識したこと】
※状況説明を早めに出す
※人物の詳細を書いて親近感を出す
※リストで書くことを入れてみる
※2段の驚きを書いてみる

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