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2015年の 希望ヶ丘

2015年1月に書いていた関西シクロクロス 希望ヶ丘のレポートが出てきたので再録しておこう。

希望ヶ丘のコースは好きだ。
好きなのと速いのは違うのだが。

2年前(※2013年のこと)、自分は出ないけど見にきて
駐車場からベビーカーを押してきて初めて見た光景が
オッチーさんがC2で2位に入って歓喜のゴール直後。
それから彼はクロスにおいては俺のちょっとしたヒーローである。
その後はトイレの前で観戦。
会場内をうろつくことすら知らなかったあの頃、ずーっとそこで見ていた。
表っ側で急な上り下りをたやすくこなし、
裏っ側でステップを華麗に飛び越える選手たち。
知っていた自転車レースとは全く違う世界。
まさに異次元。
その扉を俺も開いてみたいと思った。

次の年は走った。
うん、走った。
小さなギャップも乗って行けず、自転車を降りて走った。
当然トイレの前の上り下りも自転車を押して走った。
まったくもって前の年に見た選手たちのようではなかった。
ほんというとシングルトラックもジープロードも
スピードの出る下りは怖いから全部走りたかったくらい。
当然そんな俺に異次元の扉は開くことはなく、
相変わらずトイレの前後をスムーズにこなす上位カテゴリーの選手たちの走りを見ていた。

今年。
俺はトイレの扉の向こう側を見るためだけにやってきた。
上って、下る。
ここを文字通り乗り切るために、トレーニングもした。
正月からちょっとした土手の斜面で8の字を描いているヒゲのおっさん。それが俺。
吠える犬。不思議な目で見る飼い主。
しかも、俺はトイレをイメージしながら回っているんだぜ。

朝イチ試走に出て、コースディレクターに感謝した。
上り下りが2つ連続に増えていた。
わかってるじゃないか。
異次元への扉は倍になったのだ。

レースの結果はたいしたことなかった。
ぱっとしない順位だ。
が、トイレの前の上り下りはすべてスムーズに乗っていけた。

レースは結果がすべてではない。
好きなコースを走れて、しかもトイレの扉も開けたのだ。
たぶんまだまだ扉の向こう側の世界は広いし、いくつも扉があるのだろう。
そこを進んで行ける喜びもまた、レースの楽しみである。

そんなことを考えていると、小山を走りまわっていた息子が
急に寄ってきて、うんこに行きたいと言う。
そういえば2年前はまだベビーカーだったな。
トイレは全部和式だった。
慣れない彼は、扉を開け放したまましゃがみこんだ。
トイレの扉の向こう側には、大きなうんこがとぐろを巻いていた。

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