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第12回研修会報告

はりま地盤・地震研究会活動報告
第12回研修会記録
1 巡検場所:姫路市飾東町谷内地区。場所詳細は図1、図2のとおり。
2 月  日:2024年(令和6年)5月20日 13:30~ 
3 参加者数:8人
4 内  容:飾東町小原、清住の地質を調査する。
 

今回の見学場所 飾東町小原

STOP1 
電波塔通路。流離構造がよくわかる流紋岩が観察できた(写真1)。今回、流紋岩の研究がご専門の兵庫県立大学宇野康司教授にご同行願い指導いただいた。ここでは会員がかつて勉強してきたことを覆されてしてしまうような話を聞いた。流紋岩に流離構造が見られるのは、流紋岩の溶岩は粘性が高く粘っこいので、玄武岩溶岩のようにさらさら溶岩が噴出するのではなく、ドロッとゆっくり流れ出る。そのため、流れた筋模様(流理)が見られる、と学習してきた。しかし、粘性の高い物質を使っての模擬実験では縞模様は再現されない。また、溶岩ドームのような地形が盛り上がった構造は極めて粘性の高い溶岩では形成されにくく、それよりやや粘性の低い溶岩で形成されやすいとのことである。世界中の流紋岩の研究者はそれに気づきはじめており、何年かしたら教科書の記載は変わってしまうのではないかと思った。
 定説と言われていることでも、本当にそうだろうか疑ってみることの大切さを教えていただいたと思う。この疑問を持ちそれを解決していくことが科学の本質であり、科学の進歩に繋がっていると実感した。その他ご指導いただいたことはあまりにも専門的になるのでここでは省略する。

写真1


STOP2
採石場跡。採石場が稼働していた頃は岩石が露出しており岩石の観察がよくできたが、現在は樹木が生い茂っている。そうした中で1か所だけ観察できる場所がある。そこではみごとな地層の凝灰質頁岩(以前は、層灰岩と呼ばれていた)が観察できる。さらに凝灰質頁岩に貫入してきたヒン岩の岩脈が観察できる。以前観察できたヒン岩の岩脈の写真も記載しておく(写真2)。凝灰質頁岩のうぐいす色の地層は湖底に堆積した火山灰で、黒い地層は同じく湖底に堆積した泥である。火山噴火が起こると湖底に火山灰が堆積し、火山噴火が落ち着いたら湖の周辺から泥が流入し堆積したものであろう。
地層は普通、水平に堆積するが、写真3のように地層が褶曲した岩石も多数あった。これは地層がなんらかの力を受けてグニャリと褶曲したものである。写真4のように地層の上面に蓮痕化石(ripple mark)・断層・層内褶曲の観察できる採石があった。
以前はここに単に大きな湖があったとだけ考えられていたが、現在ではこの湖は火山噴火でできたカルデラ湖ではないかと考えられている。これを実証するためにはさらに広範囲の調査が必要である。
採石場で70mほどの高さに見られる露頭では球顆流紋岩と凝灰質頁岩の不整合面が観察できる(写真5)。ただし、現在は樹木のためたどりつけない。ここの球顆流紋岩には地元の人が「卵石」と呼ぶ実際に卵くらいの大きさの大きな球顆が入っている(写真6・7)。球顆を割ると上品な淡い水色のオパールが入っている。このオパールは残念ながら遊色を発しておらず、指輪には使われない。他にオパールと同じ化学組成であるメノウ・水晶が入っている。



  
STOP3
 清住の破イズの南東角。花崗斑岩(かこうはんがん)が観察できる。石英の結晶も入っているが、それよりもきれいなオレンジ色の大きな結晶の長石がたくさん入っており、典型的は花崗斑岩である。姫路市では書写山に花崗斑岩の大きな岩脈がある。

 
STOP4
 清住に行く道路沿いの崖。流紋岩質凝灰岩が観察できる。この岩石は姫路市内で最も広く分布している。


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