桃太郎

焦げた魚の皮

焦げた魚の皮

人物

桃太郎(30)

サル
キジ

○ジャングル奥地
 桃太郎(30)と犬・サル・キジは火を囲んで魚を焼いている

桃太郎「もう10年か‥」
キジ「犬とサルもすっかり仲良しね」
サル「10年も一緒にいればな。慣れだよ慣れ」
犬「まぁオレは仲がいいつもりはないけどね」
サル「なにを〜?こいつゥ〜!」

 じゃれ合う犬とサル

キジ「ふふふ‥やめなさいあんたたち。魚焦げちゃうわよ」
犬「キジの姉さんにはかなわないってか?あっはっは!」

 犬・サル・キジが笑っている
 桃太郎が枝で火をつついている

キジ「どうしたの?桃太郎。ぼーっとして」
桃太郎「もうさ‥辞めようと思って」

 犬とサルも桃太郎の方を向く

犬「なにを?」
桃太郎「鬼退治」
 
 火が風を受けて勢いを増す

犬「マジでいってんの?」
桃太郎「うん」
犬「ふざけんなよ!オメーが言い出したんだろうが!オレ、お前のこと信じてついて来たのに結局諦めんのかよ!」

 桃太郎に殴りかかる犬
 サルがそれを止めに入る

サル「もういいだろ!10年やって来たじゃねーか!それだけ探し回っても鬼ヶ島なかったんだから、もう潮時だよ!」
キジ「そうね‥犬の気持ちもわかるけど、若い頃みたいに体力もないし‥」
犬「ちくしょー!」

 犬はその場でグルグルと回っている

桃太郎「本当は‥知ってたんだ‥鬼ヶ島の場所」
犬・サル・キジ「え?」
桃太郎「村を出るときはテンション上がってたし、みんなも期待してたからさ、やる気満々だったんだけど、1人になったら急に不安になっちゃって、それで、島とは反対方向に歩き出しちゃってさ‥」

 犬・サル・キジが桃太郎を見ている

桃太郎「それからお前たちに出会って一緒に過ごしてると、なんかすげー楽しくなっちゃって、もうこのままでいっかなって思ってたら10年も経っちまった」

 魚が焦げている
 サルがそれを見て

サル「もうこれ食べれないかな」
犬「キャイイイン!オレも本当は怖くて怖くて‥」
キジ「帰らない?桃太郎の村に」
サル「そうだな。ここにいる意味もないしな」

 桃太郎が泣きながらニコッと笑う

桃太郎「ごめんな!みんな」
サル「いいって」
キジ「さあ行きましょう」
犬「ワン!」
桃太郎「違うんだ!帰り道がわからないんだ!」

 犬・サル・キジが桃太郎をボッコボコにする

 <終>

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