移動通信システムの発展とトラフィックの増大

※5年前くらいの情報です。

携帯端末の普及によって移動通信システムの利用が拡大しており,現行のシステムでは急増するトラフィックに 対応できないという問題が生じている.そのため,より多くの情報量を扱うことのできる新しい移動通信システム の導入が急がれている.NTT ドコモでは年平均 1.8 倍の成長率と仮定した場合,2022 年には 2010 年の 1100 倍を 超えるトラフィックになるとの予想を出している.日本においては 2013 年度に初めて移動系のブロードバン ドサービス加入者が固定系を上回っており,移動通信によるトラフィックも 2014 年 6 月から 2015 年 6 月の 1 年 間で 1.41 倍に増えている.今後も新たなサービスが出現することによって移動通信システムで扱われる情報量 が爆発的に増大することが考えられる.
移動通信システムはこれまで約 10 年ごとに新しい世代へと進化を遂げてきた.現在日本では LTE(Long Term Evolution) の普及が進んでいるとともに,4G である LTE-A が導入され始めている.また,ここ数年では第 5 世代 移動通信システム (5th Generation; 5G) の実現に向けた議論が国内外で行われている.LTE の導入が 2010 年であっ たため,5G の実用化は 2020 年だと考えられている.2020 年は日本においてオリンピックやパラリンピックが開 催される年でもあり,移動通信サービスを世界に発信できる機会でもあることから 5G の実現に力を入れて取り組 まれている.
通信速度は携帯電話が使用され始めた 1980 年から 2010 年までの 30 年間で約 10000 倍に高速化している. 移動通信システムの推移を表に示す.に示した各世代における通信速度は世代が上がるにつれて増 加している.2015 年から使用され始めた LTE-A では低速時に 100 Mbps,高速時に 1 Gbps の通信速度が実現でき ると期待されている.これは光ファイバによる通信と同等の速さである.また,新しい移動通信規格では従来ま での周波数に加えて新たな周波数が利用されている.LTE では 800MHz 帯,LTE-A では 3.5 GHz 帯が新たに追加された.

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トラフィックの増加は周波数が逼迫している状況を生み出している.シャノンの定理によれば通信路容量はC=B×log_2(1+S/N)の式を満たすと言われている.ここで,C は通信路容量,B は通信路の帯域幅,S は信号の総電力,N は雑音の総電力である.式から,通信路容量は雑音の多さの影響を受け,使用する周波数の帯域幅に比例することが分かる.そのため,より多くの情報量を扱うための 1 つの手段として使用する周波数の帯域幅を広げるというアプローチが取られる.移動通信規 格では広い周波数帯域を利用するために逼迫している従来の周波数を避け,より高い周波数を利用する傾向があ る.例えば,総務省が開催した電波政策ビジョン懇談会や,総務省の発表している周波数再編のための方針,「周波数再編アクションプラン」 では 5G に対しては従来の周波数より高い,6 GHz 以上の周波数を割り当てる方針が決定されている.

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