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嘘がチャラになる祈り

この話にでてくる正社員くんとは、以来わりといろんな話(プライベートな)ができるようになった。



週末、金曜日のこと。



わたしは毎日、2階にある自販機で炭酸水を買ってきてはデスクで飲んでいる。



あと、ペットボトルの水。こっちはケース買いしてるので持参することのほうが多い。




この日も安定の炭酸水を買って戻ると、正社員くん



「わたあいさん、それ好きなんですか」と、僕はムリですという顔で聞いてきたので



「うん、好き好き〜」と2回告げた。



これは2倍好きというわけではなく、単なるわたしの「トーク癖」みたいなもんなのだが、



「ありがとありがとう〜」とか「ちゃうねんちゃうねん」とか「そうなんそうなん」とか



正社員くんがあまりに怪訝そうなので、ここはひとつ!話を膨らませたいという無意識なる欲求のために、はっきりとした口調で2回。




「なにがいいんですか?おいしいの?」



ほらきた、思ってるとおりの返し。



「ちゃうねん。これ無味無臭やねん。単なるノドコシ。シュワシュワ〜やねん」



なんやこの、ちびっこに話すみたいなの。



いかん。話が終わりそうや…



とっさに



「これ、自販機いくたびに売り切れでさ。イラーっとするから総務に言うてん、2列を3列にしてくれって」



この会社では、炭酸水がやたら売り切れる現象が起こっていた。



同じように「シュワシュワ〜」をひそかに楽しむ同じ感覚の人がたくさんいることは喜びつつ、



やっぱ「シュワシュワ〜」はそのときすぐ!今ここで!感じたいゆえ、売り切れは困る。



というわけで、総務のひとに直談判したのは、派遣社員のわたしです。



こうゆうとこがおばちゃんやねん、と知ってるので大丈夫。



おかげさまで、売り切れるということがなくなり気分よくシュワシュワやっています。



「ぼく、コーラは好きなんですけどね〜」



こんなん聞いたらほおってはおけぬ。



やれ糖分がなんたら、虫歯がなんたら。



おせっかいおばはんの独演会スタート。



週末のフレックスタイム制でほとんど帰っていなかったけど、さすがにこれ以上わたしのトークを展開するのは気がひけたので



「やっぱ水でしょ」と、落としどころをさぐり始めた。



たしかにわたしは、美容と老化防止、カラダの水分保持のため、水を飲みはじめた昨年あたりから、お茶を飲むことがめちゃ減った。



とはいえ、1日2リットルの水を飲んでるかって飲んでないけども。



話をおわらすため、「そうなん、せやからわたしは毎日、味が無いのよ」と、雑なまとめに入ったけど



実は…



毎朝「健康茶」なるものを、やかんで沸かして飲んでいる。



残ったぶんは、冷蔵庫で冷やし帰ったらグビグビ飲む。



え?嘘やん!お茶飲んでますやん!



と、小さな自分がツッコんできた。



違うの。健康のためなの。世にいうサプリ的な。水分には含まれません。



自分に必死にイイワケする。





正社員くんが、どうかコーラ2リットルより、せめてお茶にしてくれますように〜



祈りをこめたからって、嘘がチャラになると思うなよ。



おわり。