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2023-07 月記

ハンチバック

芥川賞を受賞された、市川沙央さんによる『ハンチバック』を読みました。

本の1ページ目の最初の数行ならば、ネタバレにはならないだろうということで書くのですが、この小説、第一文が「<head>」とHTMLのタグで始まって、第二文目からはハプバの話に入るから、その時点で衝撃的な作品です。私は後述の理由で電子書籍として買って読んだのですが、最初アプリのバグかと思いました。

この本は、作者である市川さんご自身が重度障害者ということで、障害当事者文学と言われており(そして、そのように当事者性を強調されることを市川さんもokを出しているそうです)、ちょっと重い内容なのかな、とは思っていました。

実際、いくつも自分の知らない障害者の方の世界が描画されていましたが、割と笑いどころもあったし、書きぶりも面白いし、物語の構成としても面白いしで、とても楽しめました。

そして、障害に関する用語や知識が増えたのと同じくらい、(知りたくもなかった)風俗の俗語の知識も増えました。どうして。私はその手の話があまり好きではないので、ちょっと「うっ」となる箇所もありましたが、読了から数日経って改めて考えてみると、障害者の方達に対して私が持つ偏見の類を打ち破るという点で、そういった話題設定はある意味で本質的なのかな、という気もしています。

この内容で、より正確には、こんな内容で、思わず笑ってしまうの、連日の暑さにやられてとうとう自分の感受性もぶっ壊れてしまったのかと疑ったのですが、どうやら多くの人が「ユーモア」と感じているようです。良かった……。

筆者の市川さんがそもそも非常に面白い方で、会見の動画も拝見しましたが、この質疑の流れで「笑わせたりするのが好きなんですか?」という質問に対し、「真面目にやってます」と回答されていらっしゃるものだから、流石に無理がある。絶対ウケ狙いでしょう(笑)


ところで、この作品が訴えることの一つに、「読書バリアフリー」があります。首都圏ナビの記事などでも取り上げられています。

―私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、――
5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。

『ハンチバック』

このフレーズがある、ということをネットの記事等で既に知っていたということもあり、そして私はまぁまぁ電子書籍が好きなので、今回はそれで読みました。

読書バリアフリーに関して言えば、「愛のテープ」に関する話も私は全く知らず、いろいろな無知を実感しました。個人的には、作中の大学生たちを指して出てきた表現である、「前回も前々回も同じ説明を受けていたのに、学生たちは間違える。障害者を見たことがないらしい。」というフレーズが刺さりました。自分自身、まさにそうやって、紙と言葉の上っ面だけで、障害者をとりまく法の流れだけを知ったかぶるような勉強をしていた、そして、しているからです。反省しなければなりません。

読書バリアフリーというものが、この先の日本においてまず間違いなく進んでいくと思うのですが(というか、そうでなければ芥川賞というその「権威」は嘘でしょう)、その推移を共に見守れたらなと思います。

面白い作品でした。

期末

今月は期末試験があったので、『生物リズムと力学系』と『情報幾何学の基礎』の二冊を読んでいました。

『生物リズムと力学系』は、「生体情報論」という授業における参考書ですが、授業内容に「生体」の要素も「情報」の要素もないから、この授業は「論」だという冗談があったくらいですが、この本を読むと、なるほどそういうことかと分かります。尤も、冷静になって思い返せば授業でも触れていた箇所も多く、微分方程式の印象が強すぎただけな気がします。

情報幾何の方は、よく分からないなぁと思いながら試験を受けたら、ほとんど何も答案を書けませんでした。残念。

その他

今月は『狼と香辛料』シリーズをかなり読んでいました。個人的には第一巻がとても印象的で、話のまとまりの良さに感心していました。面白かったです。

あとは、Springerセールが今月あったので、英語の本を買ったのですが、未だ殆ど手付かずです。夏休み中に読まないと……。

競プロ

ICPC

結果こそ悔いは残りますが、チームメイトには非常に感謝しています。
本当にありがとう。

ICPCは七夕にあったので、もう一ヶ月前の事らしいです。光陰矢の如し。

AtCoderではまず出ない構文解析を沢山練習して、Matrix CalculatorやASCII Expressionをやりましたが、いい思い出になりました。

ICFPC

APIの方は、jsonファイルの形式が間違っているらしいという噂を聞きました。なるほど。スコアの方は、sqrt(X)^2という値をXと書いてしまった為に起こったらしいです。そもそも問題文に誤りがあったり、他の判定が誤差を含みがちで怪しかったりで、全然正解にたどり着けませんでした。

尤も、cv2をC++でも整備して以下のビジュアライザを作れた時点で、だいぶ満足していました。本末転倒感はありますが。

問題のビジュアライズ結果 まぁまぁ綺麗じゃないですか?

その他

あとは、yukicoderの群論コンテストが今月はありました。
バーンサイドの補題とか何年ぶりに使うんだと思っていたら、コンテスト終了後のTLで当たり前のように流されていて、彼我の実力差を思い知らされます。
対称群の外部自己同型群が6の時に例外というのは初めて知りました。
面白かったです。

p進数さんのコンテストは、任意modが解けない、となって詰まって終わりましたが、巡回畳み込みをすればよかったらしいです。なるほど。

ところで、ICPCの為に引退したはずのアルゴに復帰したのですが、レートの単調減少が止まりません。やばい!
流石に落ちるところまで落ち切ったと信じたいですが、黄色に戻るのをどうにか目指そうと思います。

(P.S.)7/30のAGCで無事に単調減少が止まりました。よかった~~

最後に

最近、犬の散歩をする際に、家族が買ってくれたミストスプレーをよく使っています。ボタンを押すと霧が出てきて涼しくしてくれる商品です。

これが結構楽しくて、馬鹿みたいに腕に霧を吹きつけて遊んでいるのですが、良く晴れた日の午後だと、西日に晒されてアッと言う間に蒸発していきます。

この酷暑の下に水分が6割の人間が放り出されて、どうして干からびないのか、その霧の乾きっぷりを見ていると割と本気で疑問に思えてきますが、よくよく考えると、そうして干からびた結果が熱中症なのかも知れません。

暑い日が続いていますが、この文章を読んで下さっている方も、健康には気を付けてお過ごしください。

以上です。

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