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短歌入れれます(2020.02~全首評)④

今日も二首アップです。

野村日魚子さん

主体にとってはよほど楽しくなかったか、興味のわかない場だったのだと思いました。初句の名詞と三句目の名詞の価値の比重が逆転するところに、歌の面白さを読むことができるのかなと思ったのですが、場に対するなじめなさの虚無感が生理的な気持ち悪さを誘発するようにも思いました。結句で使われている限定の語は、解釈の幅を限定させながら主体の心情もピントをしぼりにいく方向へ定められていると思いました。心情に強度を持たせることができる一方で、ややしぼりすぎて、情景としては、それ以上の空間性を持たないようにも思いました。

千仗千紘さん

結句は疑問ではなく反語としてとりました。謙遜あるいは卑下する相手を肯定し、称えるための発話として読みましたが、その状況や事情までは描かれていないので、主体の意識としては相手にこの発話伝えようとすること、もしくはそのような思いがあることに焦点があたっているのだと思います。四句目の主語を修飾する上の句は、かなり言葉を尽くした形になっています。それが主体の思いを強める方向へ極度に働くので、相手についてはあまり見えてこないようにも思いました。個人的には、二者間の関係性の上で成立する内容のように感じたので、そのあたりが描かれるといいのかなと思いました。

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