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短歌入れれます(2020.02~全首評)②

きたざきゆかこさん

初句二句含めて作中主体の心の内の発話として解釈しました。自己肯定感の低い相手を驚かせてみたいという主体の様子が浮かびました。予感や未来への想像というのは、読者側に解釈の余地がある分、余韻を持った歌として整えやすい一面があると思うのですが、結句の投げかけは投げかけ以上の広がりを持たないように感じました。というのも、関係性を描く際であれば、その関係性をどう感じ、そしてどう行為するかといった、主体がなんらかのアクションを選択することで一首としての広がりが出てくると思うからです。この一首に「予感」を楽しむ主体像をイメージすることはできるのですが、読者にまかせず、投げかけのその先を描いてほしいなあと思いました。

神野優菜さん

上の句と下の句で若干の飛躍があるのですが、韻律の斡旋により、接続のなめらかな一首だと思いました。接続が滑らかである分、結句の現在形が歌をこの思案の時点にぐっと押しとどめてしまうような感じがあって、もう少し時間的な余韻を持たせほうが、歌にとってはいいのかなあと個人的に思いました。ただ、そうすると歌の持っている主体の切実さは薄れてしまうので、上の句と下の句のどちらに読みの重心をおくかによって方向性に影響してくるのかなと思います。

ほうるさん

上の句で言及された失敗(きれいにならなかったこと)が、相手に結句の行為をさせたのかなと思いました。ちなみにこの行為を修飾する形容詞から、行為を比喩的に読みました。上と下で因果関係(AだからBになる)が結ばれている一首ですが、具体的な状況はイメージできませんでした(たぶん作者には具体的な状況のイメージと論理展開があると思うのですが)。ただ、状況はイメージできないものの、上下それぞれに描かれた映像は浮かぶようになっていて、また各々出てくる語や表現の近さからなんとなく解釈するうえでの関連性を感じるものもあり、トーンのまとまりで雰囲気を作り出している一首だと思います。

ぬこちゃんさん

初句の副詞の影響で、シリアスな語句が出てくる上の句にあまり切迫感はないように思いました。だからこそ、下の句で「健康に気を使ってそれなりに延命していく」景につながるのかなと思います。固有名がありますが、語源にあたる語と名前が近しいのでそれがなにかわからなくても伝わるかなとは思います。結句の助詞との兼ね合いから、三句目の接続助詞は逆説でとりましたが、上の句の直喩までの表現と下の句で言ってることが重複しているようにも見えるので、読む人によってはなぜ逆説の接続助詞がチョイスされているか、疑問に思う場合もあるかなと思います。

次回は2/25に更新します。よろしくお願いいたします。

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