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自選30首-2

結社誌「かりん」より
ぼろんぼろんこぼしてみたい苛立ちをおさえおさえて乳首の痒み 2018.11
いとおしむふいにこぼれる鼻唄の風に消えゆくその無防備を   2018.12
星光るように怒りは華やいであなたはとてもめんどうなひと   2019.2
風に耳晒して弱音聞きとめる二月冷えゆくふざけてばかりの   2019.5
春滲む社員通用口らへんうまく言われたいばかだねぇ、って   2019.5
目の前に広がる沼のかがやきを否定している 怖いのだろう   2019.10
口笛が吹けないなんてこの勝負すでにもらったものね ふふん  2019.10
何を信じてみたいか選ぶ晩秋に神かと思う自分のことを     2020.1
むきだしの心でくるよ 秋の空 犬それぞれにある走り方    2020.2
感傷は枯葉のごとく吹きだまるひとたび踏めば軽くよい音    2020.3
働きの日々の疲れを身に沈めバスより花を見、花見を終える   2020.6
安全牌奪われてゆく島々をめげないしょげない海底撈月     2020.9
楽になるよ、息吸って吐いて止めてから白雨無心に通り過ぎゆく 2020.11
「まくしたてたる」(「かりん 2020.5」500号記念特集掲載作品)
やめちゃいな気が向かないなら向くまでを窓の結露無視しひとふゆ
勝った奴が強いと言い張る人と食うバターメロンパンあんホイップサンド

短歌連作サークル誌「あみもの」
第十五号「ないものねだり」 2019.3
接続詞えらんで話す日のように電信柱の影長くなる踏む
第十六号「冗談も休み休みイェイ」 2019.4
生きるのがしんどいときはそれとなく冗談も休み休みイェイいぇーい
第十八号「エモい」 2019.6
室外機わたしが通ると回り出すぶおおおんゾウはぱおおおん
第三十一号「氷菓」 2020.7
水ようかん残り一個を食べられてまあいいけれどあなたは破門
第三十八号「犬を放つ」 2021.2
全力で犬を放つの! ついてきて!ほんとは心やさしい犬よ!

長子ネプリ「優先」(2019.1)
This is ふるさと。納税されて元気になる。そしてわれらはすこぶる元気

誕生日ネプリ「ある街のわたくし」(2019.6)
無理言って私の身体に宿せどもとめどなくやはり病む肺魚 ごめん
 
えいしょ同人ネットプリント「朝の冗談」(2020.5)
ことごとくきみの返事はてきとーでかりっ、さく、もちっ、ふわっ
 
誕生日ネプリ「ある街でわたくし」(2020.6)
週末の話がとんとん逸れたさきポストアポカリプスなる恐竜
バッティングセンターにいく約束をしたことがない 蝉もしずかで

えいしょ同人『えいしょ2020』(2020.11)
「忘れることがむずかしい」
0円の漫画ばかりを読んでいる 晴れても外に行けない一日
桂浜水族館の人が人気 魚じゃなくて?  魚じゃなくて
感情はときおりあふれ潮風にかかと落としをかましたくなる
志賀島、遠くのあれって指の先に言っていいんかめちゃめちゃカモメ
洗いざらい打ち明けることを誠実と思って長い 長いってだけ

2018.10~2021.3に発表された歌から選びました。

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