君との軌跡(プロローグ)
君の楽しそうな声も
真面目な横顔も
忘れたって構わない
ただずっと傍に居させてくれるだけでいい
何も話せなくてもいい
君さえいてくれれば
でも
奇跡は二度も起こらない
それは
真冬に咲いた一輪の花のような
儚い奇跡だった
君との出会いが
君との日常が
俺に全てを与えてくれた
こんな俺にも誇れるものがあるんだって
自信を持っていいんだって
生きていいんだって
でも
君に出会ったせいで
切なくて胸を締め付けることも増えた
今は明日が来るのが怖くなって
顔を見るのも躊躇うようになって
それでも
君に贈りたい
「幸せになってね」って
「ずっと愛してる」って
君に全てを打ち明けても
きっと信じてくれるんだろう
でも、受けていれてはくれないかな
隣で心地良さそうに寝息を立てて寝ている
寝顔を見つめる
幾つになっても変わらないその寝顔に
一瞬頬が緩む
でも、それと同時にまた胸が締め付けられる
「·······言える訳ねえよ」
いっその事嫌われてしまえば
どんなに楽だろうか
それで君とこの世界を生きられるなら
俺はそれを望む
『ずっと一緒にいようね?約束だよ』
数年前に君に言われた言葉を思い出す
当時愛情表現が苦手だった君からの
短くて、それでも充分すぎるくらい伝わる愛の告白
二人で夕焼けの中で帰った時に不意に言われた一言
今でも鮮明に覚えている
でも
「ひかるごめんな、守れそうにないや」
奇跡が起きて、真冬に花が咲いても
散るのはあっという間だから
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?