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初恋が幼馴染で、今恋が先輩で。

とある公園に、小さな影2つ。



『ねぇ』



「んぁ」



『もうお別れしちゃうの、やだな』



「しょーがねーだろ」



『せめて連絡先だけでも...』



「だから、俺携帯持ってねぇよ」



『むぅ...』



「大丈夫だって、俺がお前のこと忘れるわけないじゃん」



『......この前なまえ忘れてたくせに』



「.......寂しくなるな」



『あ、話逸らした』



「うっさい...ん!」



『なにこれ』



「「冥土の土産」ってやつ」



『死ぬの?』



「馬鹿か」



『うわ、顔赤い...照れてるじゃん』



「うっせぇ...」



『でも、嬉しいな』



女の子が、貰ったペンダントを大事そうに抱え込む



「ちなみに、おそろいな」



『そうなの?』



「ああ、こうやって重ねると...」



『あ、そこはハートじゃないんだ』



「ば、馬鹿かてめえ!?」



『ふふ、でも、ありがと』



「.....そんじゃな」



『うん...』



男の子が背を向けて、その場を後にしようとすると



『待って!』



少年の足が、ピタリと止まる



「なんだよ」



『これから先、もうずっと会えないのかな』



「んー、まぁ手段がないしなぁ...」



『だよね...』



少女がガクりと肩を落とす



「あ、でもあれだ!げーのーじん!俳優とか、アイドルとか!そしたらおれでも見つけられるよ」



『む、むりだよぉ...』



「おれ、おまえなら行ける気がする」



『わ、私が?』



「おう、だって、ーーーすっげぇ美人だからな」



『ふぇ...』



「おれがほしょーするよ」



『ほんと?』



「おう!」



『うれしいなぁ...』



「ま、おれも頑張るから、ーーーも頑張って!」



『わかった...私、変わる』



『変わって、もっと色んなこと経験して綺麗になって、それでまた君のことを探すから』



「それってどうい...」


 


刹那




2つの影が重なった






“その時は...君も私を見つけてね”








懐かしい夢を見た

君は私の事、覚えてくれてるのかな


私は今もずっと、ずーっと覚えてるよ


さ: ふんふんふふ〜ん♪


鼻歌を歌いながらペンダントを眺めていると
『遠藤さん、出番です』と声が聞こえてくる



さ: はーい



今日も、私は君を探してる



さ: ○君...会いたいな








○: おーれーの!さくちゃん!超絶可愛い!さくちゃん!

?: うるさい!!


怒号とともに脇腹をつつかれた


○: 痛ァ!?...って、ひかるさんが『乃木の配信ライブ見よ〜』って言ったんじゃないすか!

ひ: にしても声出しすぎ...耳が取れるよ

○: すんません

カラオケで声を出しちゃだめなの!?

ひ: 限度ってもんがあるでしょ

○: なんで心の声聞こえてんだ?

ひ: 人の気も知らないで...


何やらぶつぶつ隣の先輩が言ってるが、これ以上怒らせたら何されるか分からないので渋々ペンライトを机の上に置いた

ひ: あ...かっきー可愛い

○: ひかるさんも負けてないと思っすけどね

ひ: そ、そういうのいいから...!


本音なんだけどなぁ


ひ: 全くもう...


少しひかるさんの顔が赤くなっている気がした

熱かな?


○: (いや待てよ...もしかしたら2人きりのこの空間にどきどきして…まさか俺の事…!?)




なんて思うバカはここにはいません

大学のマドンナがただ同じ趣味の後輩を連れてってるだけ

全く、俺じゃなきゃ勘違いしちゃうZ



なんて1人で考えていると、ひかるさんがオレに話しかけてくる

ひ: 私から勧めといてなんだけどさ、どうして○○君はさくちゃんが好きなの?


不思議そうな表情で見つめて来る


○: んー、なんですかね。なんかほっとけないって言うか目で追ってるって言うか


ひ: リアコじゃん


○: うん、そうだ。俺はさくちゃんに恋してる結婚した痛ァ!?


次は耳を引っ張られる


ひ: いい年こいてまだそんなこと言うの、同じヲタとして悲しい

○: ちょ、近い…!


かく言うオレも現実は分かってる

さくちゃんと結婚なんか出来るわけない

なんならオレは


ひ: ふんっ


○: ひかるさんにリアコなんだけどなぁ…


ひ: ん、なんか言った?


○: いーや、何も。


まさかオレが高嶺の花子さんタイプの人間を好きになろうとは

まあ無理なのは誰よりも自覚してるから言わないけどね



でも、どうしてだろう

今、オレは森田ひかるさんっていう好きな人がいるのに


【アイドル】遠藤さくらを見過ごせないのは

大画面のプロジェクター越しに笑顔で歌って踊る彼女の姿を見つめる


○: .......っ

頭の奥が、少しズキっとした



そういえば、初恋はいつだったっけ…


〜To Be Continued〜

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