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サウンドガーデン インタビュー

2012年11月13日にリリースされたサウンドガーデンの再結成アルバム『キング・アニマル』について、メンバーのクリス・コーネルとベン・シェパードが語ってくれたインタビューを、以下に再掲します。



再結成サウンドガーデン、16年ぶりの新作『キング・アニマル』で堂々たる帰還! 完璧な復活アルバムが出来上がった背景を探る。


 ニルヴァーナやパール・ジャムと並ぶシアトル・グランジの代表格として90年代のオルタナティヴ・ムーヴメントを担ったサウンドガーデン。1997年に解散するも3年前に再結集し、以降は精力的にライヴ活動を展開、ベスト盤のリリースや、今夏の大ヒット映画『アベンジャーズ』で主題歌を担当するなどの話題も提供しつつ、いよいよ新作『キング・アニマル』を完成させた。
 このバンドは、クリス・コーネル、キム・セイル、ベン・シェパード、マット・キャメロンというメンバー全員がソングライティングに関わる体制をとっており、そこが強みとなる一方、複雑な創作プロセスには、トータルなコントロールが難しい側面を含む様子もうかがえた。しかし最新アルバムでは、解散後の個別の活動を通じて各自がさらに成長し、サウンドガーデンという存在との距離感をリセットするのに充分な年月を経たことにより、4人のコンビネーションが過去最高レベルで引き出せていると感じられる。このバンドならではのパワフルさと独自のグルーヴに溢れたハード・ロックを軸に、以前よりも多様な要素が付け加えられているが、過剰・散漫になることなく、これぞまさしくサウンドガーデン!という強固な完成度を示しているのは見事と言うほかない。
 かつて、ひたすら暗い内容を歌っていたクリスが、本作の最終曲"ローイング"では、同じように「人生はつらい」と歌いながら、「それでも生きてさえいれば負けることはない」と続けるくだりは、現在の彼らが辿り着いた境地を象徴的しているようにも思える。
 往年のサウンドガーデンを知らない若いリスナーが初めて聴くにあたってチョイスするのにも相応しい作品になっているので、ぜひ多くの人に『キング・アニマル』をチェックしてもらいたい。


---待望の再結成アルバム『キング・アニマル』、素晴らしい作品だと思います。当初は2011年のうちにリリースを予定されていたものが、こうして今までかかったわけですが、やはりサウンドガーデンとして久々のレコーディング作業で、それなりの困難があったということなのでしょうか? 

クリス・コーネル:ロボットの腕を付けるのに手間取ってさ(笑)。いや、確かにレコーディングのプロセスには、けっこう時間がかかってしまったね。もしかしたらリリース時期について、うっかり早めに言いすぎたかもしれない。

ベン・シェパード:実際、ここ2年間はやることがたくさんあったからね。まずライヴをすることが決まったんだけど、その時点でツアーを優先すべきか、先にアルバム制作を終わらせるべきなのかを決めないといけなかった。急いでアルバムを完成させた方がいいのかどうか?って何度も話し合ったよ。でも、こうして再結成してまた演奏するよって発表したんだから、もう世界中のオーディエンスがサウンドガーデンのライヴを待っているわけで、それなのに俺たちが姿を現さなかったから、みんな「アホか? どこにいるんだよ」とか言うだろうしさ(笑)。だから、とにかく、ひとまずはプレイしに行った方がいい、という結論になったんだ。実際そうしてよかったと思うよ。特に新しい曲はないまま、昔のマテリアルを演奏して、それはそれでうまくいったし、ニュー・アルバムが出たら、それからまたじっくりツアーすればいいわけだしね。

クリス:ほかにも、僕たちが使っている2つのスタジオが両方とも空いてなかったりとか、複雑な事態が起こったりしていたんだ。だから、もしかしてファンには「レコーディングがうまくいってないんじゃないか」とか、そういう誤解を抱かせてしまったかもしれないけど、決してそういうわけじゃなかったんだよ。

---なるほど。逆に、どんどん創作意欲が沸いてきて、夢中になってるうちにいつのまにか時間が経ってしまっていたというような面はなかったですか?

ベン:そうだね、もっともっと!って感じで曲を作っていったし、なんかキリが無いんじゃないか?と思えたほどでさ。

クリス:僕が最後に作って、歌った曲なんて、もうアルバム全体のミキシングが半分くらい終わっていた頃になって書いたんだよ。

---では、そうやって完成したアルバムに「キング・アニマル」というタイトルをつけた理由は何ですか?

ベン:キング・アニマルの意味かい? まあ、ネットで無料の音楽ばっかり聴いてる野郎どもは、このレコードをチェックしとけよ、ってとこかな……。なんつって実際には「サウンドガーデンの誇り」みたいなニュアンスで、キムがアイディアを出したんだよ。あれはきっと、先に出来上がっていたアートワークからインスピレーションを受けて、つけたんじゃないかな。

クリス:そう、タイトルのアイディアは他にも幾つかあったんだけど、アルバム・タイトルを決める前に、アートワークがすでに完成していてね。そんなことって初めてだったな。みんなが気に入りそうなタイトルを事前にあれこれ考えてはいたんだけど、どれもビジュアルに合わなくて。で、キムがそれに合うイメージで新たに考えたんだ。タイトルとアートワーク、それに各曲のタイトル、パッケージなどは偶然にそうなったというものではなくて、ちゃんと全体を考えてあるんだよ。

---わかりました。さて、もともとサウンドガーデンはメンバー4人ともソングライターで、しかも共作が多く、今回も手元の資料を見ると、例えば3曲目「バイ・クルーケッド・ステップス」のクレジットは「Music & Lyrics by Cornell/Music by Shepherd/Lyrics by Thayil/Written by Cameron」などと複雑なものになっています。

ベン:その通りだね。

---十数年の空白期間を経て、そうした共同作業の在り方にも何か変化がありましたか?

クリス:曲の作り方自体はまったく同じだけどね。一時的にだけだったかもしれないけど、ベンがキムの歌詞を使ったりもしたし。あと、キムがマットの曲に歌詞を付けたりとか。今のところ、僕が作った曲の歌詞は書いてないかな。そのコンビネーションだけまだ実現してない。ベンもマットの曲の歌詞は書いてないと思う。

ベン:ウェルウォーター・コンスピラシーかヘイターではやったと思うけど。

クリス:ともかく、全体のプロセスは似たようなものだよ。誰かのアイディアから始まって、そこに他の連中が音楽的に何かを足していくっていう。

ベン:マットって、まだ歌詞を書いたことなかったっけ?

クリス:いや、「フレッシュ・テンドラルズ」で書いてるよ。

ベン:あ、あの歌詞はあいつが書いたの?

クリス:歌詞の中に、マットが作ったオリジナル・デモから採用した部分があるんだ。初期段階のものだから、まだちゃんとした言葉になってないような部分も多かったんだけど、彼の考えたラインも使ったよ。

ベン:あの曲、マットが書いた曲の中でも特に好きなんだよね。時々マットに連絡して、今でも大好きな曲なんだって言ってるよ。

---印象的なエンディング曲「ローイング」は、ベンの作曲、クリスの作詞ですが、歌詞の内容と曲のムードが完璧に一致していますね。この曲は具体的にどんな創作プロセスを経て完成していったのですか?

ベン:まあ、その曲に関しては、クリスが気を遣って俺の名前をクレジットしてくれたようなもんで。実際には、自分はジャムってただけで、最終的にはクリスがアレンジをまとめてくれたんだ。彼って、そういう優しい男なんだよ!

クリス:リハーサルの合間に出来た曲なんだ。バンドみんなで喋ってる時、ベンが隅の方で何かを弾いているのが耳にとまってね。すごくカッコいいディセンディング・ベース・ラインで……

ベン:センテンスだね。

クリス:そう、センテンスを作っていたんだ。リハーサルは録音してあったから、記録したCD-Rの中に入っていることはわかっていた。そいつを家に持ち帰って、その部分を見つけてループさせて、そこにドラム・ビートをつけて曲にしていったんだよ。そんな風に作業を進めるのは、サウンドガーデンではあの曲が初めてだったと思う。そのおかげで、とてもユニークなサウンドになったよね。

ベン:そうだね。俺もそうやって出来てきたものを聴いて「調子が出てきたぞ」と思ったよ。その時期には、まだ他の曲はしっくり来てない感じもあったんだけど、クリスがそれを持って来た時はとても納得できた。この曲がシングルになるべきだとさえ思ったよ。いったん解散してから15年を経て、再結成したサウンドガーデンの最初の曲がこれなら、こいつは凄いことになると思わせてくれたんだよね。

---なるほど。「ブラック・サタデイ」「ワース・ドリームズ」などは、デモ音源をボーナス・トラックとして入れるそうですね。まだ現時点では聴けていないのですが、それらのデモは、最終的な完成ヴァージョンと比べると、大きな化学変化を感じられるのでしょうか?

クリス:うん。曲が完成していくまでには、みんなのコミュニケーションがあるからね。バンド全員で、その曲の精神が何かを理解し、インスピレーションを受けることで、サウンドガーデンの作品になっていくわけ。どんな曲でも僕らの相性の良さを通じて、特定の個人のためではなく、メンバー全員のために作られるんだ。誰がどういう嗜好を持ったうえで、どんなふうにプレイしているかを相互によく分かっているからこそ、確実に素晴らしいサウンドガーデンの曲になると確信できていたし、実際にプロセスはかなりスムーズだったよ。ある地点から別のレベルに移行していくんだよね。例えば、ギターでハメを外したジャム・セッション・パートがあったんだけど、それがまったく違うものに変わっていったりとかさ。

ベン:ああ、あのパートね。最初あれにはサックスでも入っているのかと思ったよ。みんな「なんだこれ?」って反応だった。

クリス:そう、サックスをオーバーダブして犬が吠えているような感じに聴こえてたよね。たぶん後から聴いたマットは、未だに犬が吠えている音だと思い込んでるはずさ(笑)。

---本当ですか?(笑)

ベン:もちろん冗談だよ!(笑)

クリス:昔の曲でも、例えば「バーデン・イン・マイ・ハンド」なんか好例だけど、曲を作ったもののベース・ラインが何にも思いつかなくて、どうプレイしていいかわからなかったから、とりあえずシンプルな音を弾いただけの状態でみんなに聴かせたんだ。すると、ベンがそれに合わせてベースをプレイしてくれて、まったく違うものが出来上がった。まさに別世界のものって感じで、自分にはとうてい考えつかないようなラインでさ。それで曲全体がうまくいって、違うものに生まれ変わり、いっそう面白い楽曲になったんだよ。もちろん、聴いてもらえれば、すぐ分かることだと思うけどね。

ベン:だから、デモ・ヴァージョンは楽しんで聴いてもらえるんじゃないかな。

クリス:そう、デモを聴いて、もう一度アルバムの完成ヴァージョンを聴けば、そこにどのような変化があったか分かる。キムも言ってたけど、ファンに創造の過程を見てもらうることができるんだ。それについては、別に悪い気はしないよ。数年前のビートルズのリイシューで、彼らのデモ音源が聴けた時も、その楽曲の進化の過程を耳にすることができて非常に興味深かったしね。

ベン:まさに音楽の学校だよな。

クリス:そうなんだ、僕にとっては凄いことだった。それに、今作の楽曲のデモを聴いてもらうことで、僕らがこのアルバムに足したものは何かが分かると思うよ。

ベン:付け加えられた何か、がね。

---それも楽しみです。バンドの活動休止中にも、メンバーはそれぞれ様々な音楽活動を積み重ねてきたわけですが、その間の経験が新たに『キング・アニマル』へ反映されたりはしましたか? 例えば10曲目「ハーフウェイ・ゼア」などは、クリスのソロ作品に通じるような印象も受けました。ニュー・アルバムの制作中に「お、これは昔のサウンドガーデンでは無かった感覚だな」と思ったりしましたか?

クリス:僕自身は「ハーフウェイ・ゼア」って「ブラック・ホール・サン」のような感じだと思ってたんだけど。確かにデモを録った時点では、これがサウンドガーデンの曲になるか、バンドに合うかどうか判断はついてなかったね。

ベン:あの曲を聴かせてもらった時の、俺のリアクションを知りたい?

クリス:どんなだよ?

ベン:聴いた瞬間「なんてこった、最高じゃん!」って叫んだよ。クリスのヴォーカル・ハーモニーを聴いて、ぶっ飛んでしまったね。ハーモニーについてさらに理解を深めて、成長したんだってことがすぐ分かった。なんか「ほら聴いてみろよ!」って言われてるみたいな感じだったよ(笑)。

クリス:それは褒め過ぎじゃないか(笑)。時には、自分の書いた曲が他のメンバーに通じるだろうか? 果たして、それがサウンドガーデンになるのか、ある境界線を越えてしまうんじゃないのかとか悩むこともなくはないけれど、大概はバンドとしてプレイすれば、それはサウンドガーデンの音になるんだよね。まずはその曲をみんなに聴かせなかったら、バンドとしてうまくやれるかどうかもわからないわけだし。僕自身は、特にバンドの境界線を広げていこうと意識してるようなことはないつもりだけど、これまで守ってきたものを大切にしすぎるあまり、自分たちがやっていることをただ繰り返す状態になってしまうのは嫌だからね。そういう状態に陥ってるバンドが多いだけにさ。

ベン:さっきの質問にも関連してくるんだけど、曲作りのプロセスにおけるサウンドガーデンの秘密の武器は、メンバー全員が心を開いて、お互いの技術を尊重し、完成させたいものを達成するまで励まし合うところだと思う。だから、その過程で「バンドとしての体裁を気にしすぎることなく、やりたいようにやってみようぜ」と進めていくことができるってわけ。レコーディングに限らず、ライヴに関しても同じことが言えるよ。昔、俺が「インセサント・メース」というファースト・アルバムの曲をまだそんなに練習できてなかった時の話なんだけどーーちょうどガンズ・アンド・ローゼズとのツアーを終えたばかりだったかな、そのすぐ後の単独公演で、会場は満員だった。「みんな、サウンドガーデンがやってきたぜ、何を聴きたい?」ってオーディエンスに訊いたら、「インセサント・メース!」ってリクエストされたんで、キムが「それはダメだ」って止めようとしたんだけど、「いいよ!」って答えてしまって、それからクリスの顔を見たら「いいさ、やってみよう」と言われたんだ。その時、「パーフェクト! 俺はこのバンドが好きだ、入ってよかった」って心の底から実感したよ。「やってみればいいさ!」っていうアティテュードで、それで恥をかくことを恐れたりはしないんだ。

---なるほど。さて、歌詞についてなんですが、90年代と、2010年もすぎた現在とでは、詞に表れてくる感覚も違ってきていると自身でも感じていたりしますか? 当時と現在とで社会観、人生観、生きる上での信条などで表現者としての変化を自覚しているところがもしあれば、教えてください。

クリス:とにかく今は色んなことについて歌詞が書けるようになったね。様々な場所でたくさんの経験を積んだし、もっと言えば、経験だけにとらわれず、新しい出来事から過去のことまで、年代を超えたテーマで書くことができるんだ。だから、何をチャネリングするかという問題になってくる。いずれにせよ自分の場合、言葉は音楽から引き出されてくるんだよ。その曲自体が、そこで歌うべき内容を教えてくれるとでもいうか。

ベン:彼女に優しくしろ!とか(笑)。いや、つまり、曲そのものに耳を傾けるのが、まずは重要ってこと。その時に、世の中にあるものよりもむしろね。

クリス:その音楽が何を言っているかを聞き取るようにしないといけないってことさ。僕からしたら、もう全てがそこにあるんだよ。歌詞やメロディは、どんなものであれ、最初から曲の中にもう存在している。ちょっとチルアウトすれば、そいつを曲が教えてくれるんだ。初めから、こういう考えにしっかりと思い至ってなかったのは愚かだったな。別に新しい音楽スタイルを作り出したわけじゃなくて、そこに気づくまでの十分な自覚が不足してたような気がする。(歌詞を書く作業は)アルバム制作も終わりの時期に差し掛かってて、楽曲もかなり多く出来ていたこともあって、ただ自然にそれをこなしていったっていう感じだった。

---では、現在、世間で起きていることとかはあまり気にしないようにしているんですね。

クリス:今はそうだと思う。そして、それはいいことなんじゃないかな。以前のように、あれこれテーマを探したりしなくてもいい感じになったね。

---わかりました。さて、マットは現在パール・ジャムのメンバーでもありますし、彼らのドキュメンタリー映画 「PJ20」にもクリスは重要な証言者として登場しています。ここにきて2つのバンドの関係性は、いっそう緊密になってきているような気がするのですが、近年のパール・ジャムとの交流からはどんな刺激を得ていますか?

クリス:ストーン・ゴッサードとジェフ・アメンが別のプロジェクトをやっていた頃から、彼らと同じシーンを共有していた時期はあったと思う。同じ町に住んでいたしね。例えば、テンプル・オブ・ザ・ドッグのようなプロジェクトを通じて、お互いにインスピレーションを与え合っていたよ。でも2012年の今、曲を作るにあたってパール・ジャムからインスピレーションを得ようなんてことは全くない。音楽的にもお互いにかけ離れているし、まったく世界が違うわけだから、どう関連しているかも分からないな。

ベン:まあ、彼らとテンプル・オブ・ザ・ドッグをやらなかったとしても、みんな同じ美術のクラスにいると俺は思うよ。ただ、彼らの絵を見て「あ、俺たちもそれを描こう!」なんてことはない。どちらかというと「じゃあ、それは描かないようにしよう」って考えるはずさ。彼らは彼らのこと、俺たちは俺たちのことをやる。俺たちは、自分が得意としているものをやることでインスパイアされるし、彼らはまた彼らが得意としているものをやって、そこから彼ら自身がインスパイアされるんだよ。


---わかりました。ところで、『ダウン・オン・ジ・アップサイド』が16曲66分、『スーパーアンノウン』が15曲70分の長尺作品だったのに対し、本作は13曲52分にまで絞り込まれていますし、映画『アヴェンジャーズ』の主題歌として先行で公開された「リヴ・トゥ・ライズ」が未収録という事実も興味深く感じました。仕上がった各曲を1枚のアルバムとしてまとめあげるにあたって、どんなことを特に意識しましたか?

クリス:アルバムの長さについては、特に深くは考えてなかったな。「リヴ・トゥ・ライズ」を入れなかったのも、単にアルバムに入れるために作った曲ではなかったからさ。

ベン:そう、あれは映画のために作った曲だ。あと権利関係のこともあって「サントラだけに入ってればいいよ」ってことになったんだ。

クリス:映画に曲提供の依頼が来た時、僕たちはまさに新作の曲を作っている最中だったから、最初は、その中から何か提供できるようなものはあるだろうかとも考えたけど、やっぱりアルバム用に作った曲は、それだけのためにとっておきたいと思ったんだ。

ベン:『キング・アニマル』の曲はこっち、それ以外のものはそっちって感じでね。

クリス:うん、「リヴ・トゥ・ライズ」はそっち側だった。あと、厳密に言えば52分はコンパクトなアルバムではないんじゃないかな。けっこう長いと思うよ。

---まあ、前2作に比べたらタイトな印象を受けた、という話です。

クリス:もちろん、以前のアルバムから見たら短いけど。

ベン:アナログ・レコードにする場合は、より収まりがいいかもね。

クリス:でも、たまたまそうなっただけなんだ。「ブラッド・オン・ザ・ヴァリー・フロア」が仕上げられなければ、もっと短くなっていたかもしれないよ。

ベン:俺の意見が通っていたら「アトリション」は入ってなかったかも(笑)。とか言って、実は15分ある長い曲を作ろうと企んでいたんだけど(笑)。

---(笑)。さて、アルバム・リリース後は、さらに本格的なツアー活動を期待しています。今度こそ日本にも来てほしいと、この国のファンは切望しているので、来日公演の可能性も含め、今後のサウンドガーデンとしての計画を教えてください。

ベン:今のところはプロモーションにかかりきりなんだ。

クリス:そう。アルバム・リリースに向けてのプロモーションだね。

ベン:そして、今月末にリハーサルをやって。

クリス:で、クリスマス休暇も予定しているから、ツアーの話が本格化するのはもう少し先かな。

ベン:でも、マジで日本には行きたいよ。一般的には、オーストラリアをツアーした後に日本に行くバンドが多いと思うんだけど、俺たちはその逆に、日本から初めて地球のそっち側をツアーすることになるんじゃないかな。まあ、いつそれができるかは現時点ではまったく見当もついてないけど。

クリス:まだ調整できてないんだ。

ベン:そういえば少し前、沖縄に台風が上陸したそうだけど、どうなったの? 去年、俺たちがアルバムを作っている時期には大震災があったし、一緒に仕事をしているジョシュの親戚が日本に大勢いるんで、みんな心配してたんだ。もちろん今も、原発事故について、日本の人々を心配してるよ。事故現場で、決死の覚悟で作業を続けている勇敢な英雄たちのこともね。アメリカのマスコミじゃ、もう殆ど報道されてないんだ。世界中の人が気にしているっていうのにね。日本がどのくらい復興したのか知りたいし、なんとかまた行きたいと思うよ。前回そっちに行ったのは、もう94年のことだし! いや、何とかして来日公演のブッキングをするべきだね。熱心なファンがいてくれるのも分かってるんだから。


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