ロコモーション


環七わたれぬ赤信号
いきりよぎる水平鉄車唸りのへりに
アシタチ、傾ぎ、ぼー立ちの
一名のクチうすびらき
「タチアオイ、揺らしてる風」ト
洩らしているが
タチアオイもアシタチも
みずからの名を知らないだろう
みずからの名を知らないスペキエスの
地上に伸ばすほそい翳りが
滲みながら
唖の青空を手招いている

数歩、つまさきのへりから
滑落してしまえば
それっ切り
赤の
なみだとなった(わたくし)が
熱せられた地肌にそっと
目玉を零す、日も
あるだろう
生焼けの、可能事の、半とうめいの、
ものいわぬ視野が在野を抉れば
執行人なき



ト乱立し
タチアオイ揺れ
その他揺れず

環七わたらぬ赤信号
草木に、ラグり。なおも
こまねくビルディングの直立につぐ直立の
橋なき交差点はゼクられて
蒼い夢の土手が、セる。
オーイ・オーイ
思念ばかりが
対岸に投げ、カける。

「ユニファーの消息が知りたい。
  唯、ほんとうのこととして、
  アシをいつ、どこに、差し宛てればいい」
――あんたにその資格はねえよ。
     資質があっても、格がねえ。

慎ましく、痛烈に黙って、物を乞いな






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