晴れ、天満宮のクロッキー

よく冷えた神社。エールを握り汗ばむので
うれしかった、天気予報信者は
傘を杖にしてしゃがみ、猫に触った
背中がとても、炭酸の三毛猫だった
十二年前の異臭騒ぎでは
下半身が裸にされ、乱暴されていた。首にはストッキング
それが参道はずれに見える、旧汲み取りトイレ脇だった
お社ではなくて、ちいさく地蔵がいた。赤頭巾

かざぐるまたくさんの売店のくずかごには
空缶を棄てた
店々の奥からもっともっと
いっぱいのエールが、あるいは呼び込みがこまったので
くずかごにそらした
そらにもそらしたから
おばちゃんのしゃがれ声が、ほとんど宇宙ゴミだった
アイスのぶんだけ琴線に触れました
C調で、さいごの百円はお賽銭じゃなくなった
かざぐるまがいっさんに戦いで。甘くて冷たい蜜柑のだった

肺呼吸できるみたい
おびただしい鯉の座礁が、乱反射したので頭痛を訴え
振り返るといちじるしく鳩だった
それが太宰府天満宮なのです
なのですよ、ヴァネッサ
ふと思ったがヘンリーすらいないのだった
お賽銭に志願したのは5円玉と英世先生で
先生はすでに死んでるから駄目だ
2礼2拍1礼しながら、手を洗うのを忘れていた
そんなことを思いだし
ねがいごとを忘れること
とにもかくにも生きていた
鯉のエサも鳩のエサも、どうやら同じものだった

ベンチには大道芸人が出現しており
ご老人がいっぱい出現して梅ヶ枝餅を食っており
生命の危険のうえに、ヴァネッサも見あたらず
どちらにしろ現世利益は微妙だった
なんちゃってフルート独奏
わーすーれーがーたきーふーるーさーとー
リタルダンドで息が切れた
混線した校内放送
それが大道芸でしょうか
ヨーロッパやカンボジアや戦中派のみなさん
ご臨終のまねです
拍手

クスノキが数百年、仰天したまま静かで
静かすぎて、どうしようもないまま
もうどうしようもないまま、きれいすぎて
ビールほしい、ヴァネッサも
こんな光景の正午を見ていたらいいのに
となりでは乳母車のあかんぼが
こちらをゆびさしてあぱぽあと笑っていた
真剣な目であぱぽあと応えると
表情、マイナス1度の
うまく伝わらなかったようだ
なにも伝えたいことがなかった
だからだ。だけれど
若夫婦はこちらに微笑んで、かたむいた

稲荷の向こうのひんやりとする奥の院には
歩かなかった。いつも吸い込まれたままになるので
あるはずのお狐のこまかな立像たち
しばらく心に残るだろう、今日は見なかったくらがりが
そして、50円の大吉はひどく似合わなかった
とくに出産は安心できるらしかった
ラマーズ法で
くらくらしながら歩いていると
うらての山の稜線がぎらりとして
姿のない神様だった
いや、やっぱりそういう言い方やめとこうと思った

いつからか傘がない。鳩のテリトリーを侵略しながら
しあわせのカテゴリーを消していった
さよならクスノキ、ヴァネッサはいつかきっと訪れる
とにかく、出産は安心できるらしいのだった
あぱぽあ神様
しろい砂としろい砂と真っしろな石と
かえり道、太鼓橋
身投げには浅い池で、鯉の不審な蒸発があり
そこいらじゅうこうら干しするスッポンだった


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